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Vol.005 2014.01.17

ロボットクリエイター 高橋智隆さん

<後編>

 “1人1台ロボットと暮らす”を
挑戦試みを積み重ねて
具現化する

ロボットクリエイター

高橋智隆 (たかはし ともたか)

1975年生まれ。昨年、世界で初めてコミュニケーションロボット『キロボ』(トヨタ自動車・電通との共同開発)が宇宙に到達。ロボカップ世界大会5年連続優勝。米TIME誌「2004年の発明」、ポピュラーサイエンス誌「未来を変える33人」に選定。『エボルタ』によるグランドキャニオン登頂、ル・マン24時間走行等に成功しギネス世界記録認定。現在、(株)ロボ・ガレージ代表取締役、東京大学先端研特任准教授、福山大学/大阪電気通信大学客員教授、ヒューマンキッズサイエンスロボット教室顧問。

デザインや構造、プログラム、部品の加工まで、ロボット開発にまつわるすべてを束ねる「ロボットクリエイター」の高橋さん。京都大学工学部を卒業し、株式会社ロボ・ガレージを創設。ロボットが人間のパートナーとなり得る未来に向け、より身近で親しみやすいモデルを発表し続ける彼の描く将来と、その礎となる幼少期についてお話をうかがいました。

目次

    選択肢にぶつかったらユニークな方へ向かう

    ロボットクリエイター 高橋智隆さん

    幼稚園の頃に鉄腕アトムの漫画を読んで、ロボットを作る科学者になりたいと思っていました。でもその後興味は移り変わり、釣りやスキー、自動車など、その時々で色々なものに熱中していました。附属高校から立命館大学の文系学部に進学し卒業が近づいてきたときに、やはり物を作る仕事がしたいと考えるようになりました。たまたま第一志望だった会社の採用試験に落ちてしまったこともあり、1年間勉強して京大の工学部に入り直しました。その時に、自分自身にとっての物作りへの興味の原点でもあるロボットの道に進むことにしたのです。そして、卒業と同時に自分で会社を興し、10年が経ちました。このように、2度大学に行ったり、起業したりと、人とは違う人生になってしまいました。

    目の前に選択肢がある場合、たいていの人は無難な道に進みたがります。たとえば車を買うとき、壊れなさそうな皆が乗っている車種を選びがちです。でももし、同じ値段の中古のアメリカ車と迷っていると友達に相談すれば、相手はこのリスキーな中古アメ車を勧めてくるでしょう。他人事だからと無責任に面白そうな方を推してくるのです。もちろんそんな変な車を買えば苦労も多いかもしれないけど、故障を直すために部品を海外から取り寄せたり、自分で修理したり、同じ車に乗る人たちと情報交換をしたりと、いろんな経験をすることができる。ということで、何か迷った時には、悪友目線でユニークな選択肢を選ぶようにしてみてはいかがでしょうか。きっと色々と面白い出来事が起きるはずです。

    子どものころから人一倍強かったコダワリとは?

    子どものころから人一倍強かったコダワリ

    ロボットクリエイター 高橋智隆さん

    ロボットの開発はかなり根気を要します。細かい部品を長時間作っていると、私も人並みに飽きたり嫌になったりします。それでも続けているのは、その苦労が、誰も見たことが無いロボットとして形になっていくからでしょう。

    昔からコダワリが強い性分で、例えば今でも買い物をする時は真剣に調べて、妥協できないのでいちいち疲れます。気に入る物が無くて家の中が空っぽだったというスティーブ・ジョブズ氏よりはかなりマシだとは思いますが。子どもの頃、絵を描くのに、まず地平線を描いて空と陸を分けたりするのですが、私はそのスタートである直線が少し歪んでしまうだけで、何回も描き直しをするのです。しまいには泣いて怒りだす。一方、弟はいい加減に描いて、下手くそながらも楽しくお絵描き。対極的な兄弟でしたね。

    幼稚園から小学校の低学年のころはブロックで遊んでいました。大人の感覚で、ケバケバしい超合金等の玩具を買ってもらえず、オシャレなレゴブロックを買い与えられていました。画用紙を切り貼りしてロボットやロケットなんかも作っていましたね。また、両親が所有していた鉄腕アトムの漫画本を読んで、ロボットを作る科学者になりたいと思っていました。

    子どもたちに大切にしてほしいこととは?

    子どもたちは、今できることを大切にしてほしい

    ロボットクリエイター 高橋智隆さん

    子どもの性格や能力はさまざまだと思います。ロボット教室やイベントで子どもたちに教えると、すごいスピードで仕上げる子がいれば、説明書どおり丁寧に部品を並べていくおっとりした子もいる。かといって、ちゃちゃっと完成させる子のほうが、要領がよくて賢いのかな?と思いきや、そういう子のロボットはちゃんと動かない。一方、ゆっくり地道に組み立てていた子の作品は一発で動く。子どもの能力はひとつの尺度では測れないし、他人と比較できるものでもないと強く感じました。

    公文のプリントは1枚終えたら次に進める積み重ねで、それぞれのペースに合わせられる、というのがどの子にも向いているのでしょう。実際、あまり勉強が好きではなかった私にとって、積み上がった紙を見て「こんなにやったんだ!」という実感がモチベーションになりました。大きなことを成し遂げる喜びは、子どものころにはなかなか実感しにくいでしょうから、続けていくなかで小さな成功体験を積み重ねるのがよいと思うのです。

    自分の子ども時代や、ロボット教室等で教えた経験から、親が子どもの一時期や一面だけを見て、その出来不出来を一喜一憂してはいけないと考えています。少子化のせいか、どうしても我が子に注意が行き過ぎて、それが子育てにも悪影響を及ぼしているように思います。時々私も、ロボットの専門家になるための英才教育なんかについて相談を受けたりもしますが、子どもは子どもらしく、楽しく遊ぶのが一番大切でしょう。虫カゴを片手に野原を駆け回るなんて、子どものときじゃないとできません。その年代ごとの遊びや学びを大切にする。それはきっと、その時しかできないのですから。

    関連リンク
    ROBO GARAGE | ロボ・ガレージ

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