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Vol.406 2021.07.27

児童発達支援・放課後等デイサービスでの

公文式学習(後編)

子どもの“できた”が自信を育み
職員のステップアップにも
互いが磨き合う理念が実現

児童発達支援、放課後等デイサービスでの公文式導入は2014年から始まり、現在、全国で約100の施設と協働しています。今回ご紹介するのは、療育プログラムとして公文式を導入している児童発達支援・放課後等デイサービス「(株)ラピティ べりい・べりいー・little/ べりい・べりいー・モア」(北海道札幌市)。否定語を使わずに、子どもたちの“できた”を増やし、成功体験を積み上げていくなかで自立を養うサポートをしている施設の皆さんに、公文式学習をどのように子どもたちの療育に活用しているのかをうかがいました。前編では、施設の代表と児童発達支援の職員から、後編では、放課後等デイサービスの職員、公文式導入をサポートする公文教育研究会の社員からのお話をお伝えします。

目次

「いや!」から「好き!」へ。保護者も驚く子どもたちの成長

放課後等デイサービス公文担当者の藤枝さん放課後等デイサービス公文担当者の藤枝さん

小中学生対象の放課後等デイサービス「モア」の職員であり、公文を担当する藤枝広起さんにお話をうかがいました。「モア」では、子どもたちの苦手なことをサポートし、さまざまな活動を通して一人ひとりが「できた」と感じられる子どもたちの成功体験を積み重ねていくことで、自立、集団行動、学習と生きていく力を身に付けることを目指しています。

準備段階から課題がいろいろとあったそうですが、そうしたハードルを乗り越えてでも公文式を導入することにした決め手は何だったのでしょうか。

「公文式は、モアの方針でもある“できた”という達成感や成功体験を積み上げられる学習法だと思っていましたので、社会の中で自立していく土台作りに必要なものと考え、導入を決めました。公文式学習がスタートする3カ月前から従来のプログラムを変更し、導入に備えました」

「モア」では、国語と算数・数学の2教科を導入しています。選定理由は、保護者からの要望が多かったことと、実際に学校で子どもたちが困っていて、しっかりとした基礎学習の必要性が考えられたからでした。そこで“集中できる環境づくり”を最優先事項とし、もともと運動部屋として使用していた2階の部屋を公文式学習の部屋にしました。1階の遊び場から離れた2階に公文式学習専用の部屋を設けたことで、子どもたちは「ここは特別な空間」と認識し、階段を上がる時点で気持ちが切り替えられているのだそうです。そのため、部屋に入った時には集中して学習に取り組む気持ちの準備ができているのです。

さらに、たとえば誰かが近くにいると集中力が散漫になる子どもには、机を壁に向けて集中しやすい空間をつくったり、相性が良い子ども同士を隣にしたりと、座席の配置も一人ひとりの特性に配慮して行われています。

導入して1年半が経過し、藤枝さんは子ども一人ひとりに合った“スモール・ステップ”で進んでいく公文式学習の成果をひしひしと感じているそうです。

「以前は音読や話す・伝えるということが苦手だった子どもが、今では大きな声で公文のプリントを読めるようになったり、たす1の計算も苦手だった子どもが、かけ算の教材に取り組むようになるなど、日々子どもたちの成長を感じています。『できた!』と言ってプリントを持ってくる子どもたちの表情は大きな自信に満ち溢れています。とりわけ印象に残っているのは、始めた当初は『いやだ!』と言っていた子どもが、のちに自分から『公文、好き!』と言ってくれるようになったのです。その子の担当職員が『公文が好きってことは、勉強が好きってことだよ』と言ったときに、その子が本当に嬉しそうな顔をして『そっかぁ、ぼく勉強が好きなんだ!』と言ったのです。そのやりとりを見た時に、私たち職員の励みにもなりましたし、あらためて公文式を導入して良かったなと思いました」

また、保護者からは「学校の発表会では大きな声でセリフが言えたんです」「うまく発音できる言葉が増えて自宅でたくさん話すようになり、私に自分の気持ちを伝えてくれるようになりました」など、うれしい声を聞くことも多いそうです。

付箋でほめ言葉を―“見える化”でモチベーションアップに

オンライン取材を受ける藤枝さんオンライン取材を受ける藤枝さん

さらに公文式の導入は職員の成長につながっていると、藤枝さんは感じています。

「私も含めて、職員の学習面での子どもたちとのかかわり方が大きく変わったと感じています。公文式学習の様子から子どもたちの小さな成長に気づくことができるようになり、これまで以上に子どもたち一人ひとりに寄り添い、心に響くほめ方ができるようになっています」

工夫の一つは、目標やほめ言葉を記した付箋を机に貼るというもの。藤枝さんによれば、耳よりも視覚から情報を得る力に優れている子どもたちが多く、声かけだけでなく、ほめ言葉を付箋で“見える化”することで、子どもたちのモチベーションアップにつなげているそうです。

「療育で学習は大事な要素の一つだと考えています。基礎学力の向上はもちろんですが、子どもたちが今できることを繰り返しやっていくことで子どもたちの学習意欲につながり、“できた”という達成感や喜びは自己肯定感を高めていってくれます。それが子どもたちの可能性を広げ、社会で自立して生きていく力の土台になっていくのではないかと思っています。子どもたちがこのモアでの経験を、未来に生かしてくれたらうれしいですね。いずれ教材のレベルが上がるにつれて、難しさを感じることもあると思いますが、一緒に乗り越えて子どもたちがさらに輝けるようにサポートしていきたいと思っています」

公文がアプローチしているパートナーとの協働とは?

信頼関係を築くことが施設との協働の一歩に

子どもたちの自立支援をより効果的に実践するために、施設との協働を重視するKUMONでは、どのようなアプローチをしているのでしょうか。

公文教育研究会法人サポート部によると、全国で公文式を導入している施設や学校は約300カ所。そのうち2014年から導入を開始した児童発達支援、放課後等デイサービスでは、約100施設で公文式が導入されています。

法人サポート部は、導入事業のビジョンとして「公文の理念に共感するパートナー人材と共に、学習者の能力・学力の向上と自立支援を実現することで、社会全体に貢献する」ことを活動目的にしています。導入先は、共に公文式で子どもたちを伸ばしていく大切な“パートナー”として、導入先の療育方針や環境・人員等を十分考慮して、あくまで導入先の「療育の一環」として公文を活用いただく方法を常に考えながら対応しています。

「公文式を押し付けるのではなく、われわれKUMONの社員が知恵を絞りながら施設の状況にあわせた方法で最大限に公文式を活用していただくことが大切。まずは揺るぎない信頼関係を築くこと、それが協働の第一歩だと思っています」

公文式を導入するうえでは、根幹の部分はしっかりと説明し実践を促しますが、どのように活用していくかは、あくまでも施設が主体。サポート役のKUMONの社員は見守りながら施設の良い部分を引き出すことが最も大事な役割ととらえています。

施設との信頼関係を築く中で大切にしていることとは?

“話しやすさ”から築いていった施設との信頼関係

法人サポート部 新井法人サポート部 新井

「モア」を担当していた法人サポート部の担当者は、実際にどのように施設の皆さんと信頼関係を築いていったのでしょうか。

「最初はモアの職員の皆さんも一様に不安な顔をされていましたので、とにかく焦らせないようにしようと心がけ、“一緒にがんばっていきましょう”ということを伝えました。そのうえで、たびたび施設を訪問したり、電話をしたりして現況をうかがうようにしたのですが、とにかく私に対して職員の皆さんが“話しやすい”“何でも聞きやすい”という印象をもっていただけるようにしたいなと思いながら接していました」

そんななかで、モアの職員に尊敬の念を抱いたと言います。

「子どもたちに拒否反応が出ないように導入前の準備を一緒にやっていきましょう、と言ったところ、職員の皆さんでしっかりと考えてくださいました。それこそ運動部屋を公文式学習の部屋にしたのは、本当にすばらしいなと。導入前から『ここが公文の部屋』と子どもたちをうまく導いてくれたので、スムーズにスタートできました。そして皆さん、療育のプロです。ほめるポイントを見つけるのも、ほめる言葉の選択も本当にうまい。そのため最初のテストが終わった時に子どもたちに笑顔が溢れていました。子どもにとっても、職員の皆さんにとっても、これから公文式学習をやっていこう、という自信が生まれたような気がします」

そしてモアを担当して改めて感じたのは公文式が大事にしている“ちょうど”の重要性でした。

「教材のレベルや進め方においても、子どもたちそれぞれの“ちょうど”が大事なのですが、藤枝さんが一番大事にしているのが“心のちょうど”なんです。たとえば学校で何かあったり、疲れていたり、友だち同士お互いのコミュニケーションがうまくいかないことがあるとテンションが下がり、学習に対する“心のちょうど”はなくなってしまいます。そんな時には学習の時間になっても、すぐに2階の公文の部屋に連れて行かず、まずは1階で子どもを職員がしっかりケアされ、落ち着かせてから「公文の勉強できる?」と聞いて、「できる」となってから2階に上げるようにしています。藤枝さんは、学習を終えて部屋を出る時には子どもたちが笑顔になるように、ということを心がけていて、そのために“心のちょうど”を本当に大事にしています。療育の素晴らしさを感じるとともに、その一環として公文式学習を取り入れていただいていることに感謝したいと思いました」

今後もKUMONはさまざまな施設と協働し、療育プログラムの一つとして公文式を最大限に活かして子どもたちの自立支援をより効果的に実践していただけるよう努めてまいります。

関連リンク 株式会社ラピティ “つながる”療育支援―児童発達支援、放課後等デイサービス、自立訓練・就労移行支援施設での公文式 |KUMON now! 療育のなかのKUMON-放課後等デイサービスでの取り組み|KUMON now! 

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