体と頭のリハビリテーションをめざして
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三重県伊勢市の「海野デイサービスセンター」は2003年に開所した通所介護施設です。海野幸江所長は、高齢者が住み慣れた土地で生活を続けていく‟自立”に向けて、ひとりひとりの状態や目標に応じたトレーニングを開所当時から提供してきました。しかし自立するには頭のリハビリテーションも必要だと感じて、方法を模索していたところ、学習療法に出合い、2005年から実践をしています。
ここでは現在、施設利用者約90名のうち、30名ほどの方々が学習しています。一回の学習時間は約20分。学習者二人に職員がひとりで対応し、読み書き・計算教材と磁石すうじ盤を時間計測しながら進めます。学習療法を導入してから、パジャマ姿で来ていた方が着替えてお化粧をするようになった、一日中、テレビを見て過ごしていた方が洗濯物を畳むなど家事を手伝うようになった、といった変化が現れ、さらに、施設の他の利用者に学習を勧めていたというケースも見受けられるようになったそうです。
手伝わないお手伝い
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介護施設の中で学習を支援するのは、研修を受け、「学習療法実践士」の資格を持つ職員です。海野所長は、「学習療法は利用者さんの可能性を広げ、伸ばしていますが、実は、職員の成長にも効果は大きく、観察力とコミュニケーション力が格段に向上しています」と話します。
施設において日報の作成は、利用者の様子や学習状況を職員同士で共有するために欠かせない業務です。海野所長は、書き方がわからないと悩む職員がいると、学習者の発した言葉や話した内容をそっくりそのまま「 」(かぎカッコ)つきで書くように、とアドバイスしています。日報に記述し続けることで、職員の伝える力や観察力も養われ、学習者の一挙手一投足に気を配ることができるようになるといいます。ある学習者が文章を読んでいる時、ふだんよりも口角が下がっていることに気づき、脳梗塞の症状を早期発見できたこともあったそうです。
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朝夕のカンファレンス、月例の検討会でも学習者の変化を活発に意見交換しています。海野所長は日頃から「あきらめない気持ちを持つこと。そして、ほんの少しでいいので、利用者さんができることやできる方法を考えましょう。私たちが利用者さんに手を差し伸べることは容易ですが、あえて手伝わないお手伝いをしましょう」と職員の皆さんに伝えています。そうした積み重ねを経て、「自助具を使えば自力で靴下をはけるのではないか」といった創意工夫も数多く生まれています。「職員は、よりよい介護のため、他の介護施設からも学びたいと意欲的です。大変なこともありますが、それを上回る感動があります」と海野所長は強い眼差しでお話しくださいました。
‟その人らしく生きてもらいたい”という想いを持った介護スタッフの方たちによって、学習療法の現場は輝きを増しています。
関連リンク 「学習療法」は介護現場の光になれるか|KUMON now! 学習療法の起こり|KUMON now! 学習療法センター
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