市民と行政の「協働」が元気な地域を創る
人口約5万8,000人、高齢化率22%(全国平均並み)の大阪狭山市では、2008年4月から「脳の健康教室」(以下、脳健)を開講し、高齢者が元気にイキイキと暮らしていくための活動の一翼を担っています。
大阪狭山市の脳健が地域に受け入れられている大きな要因には、市民と行政の「協働」があげられます。教室運営は市民が担い、市民が企画・立案に集中できる環境づくりは市が担うことで、協働による相乗効果を充分に活かした脳健として運営されています。ボランティア団体・楽らくクラブに参加している市民は脳健の学習サポーターとして、高齢者の学習を支援しています。
また、学習者募集は行政が担当し、広報・市ホームページでの周知や市内各公共施設へのPRチラシの配布をはじめ、46 の地区老人クラブや介護保険関係施設への PRチラシの設置、市主催の介護福祉展「ハートケアフェスタ」での脳健体験コーナーの展開など、広範囲にわたり普及啓発活動を継続して行っています。
脳健は、笑顔づくり、友人づくり、生きがいづくり~学習者の声~
脳健が高齢者にどのような機会として受け入れられているか、学習者の様子を紹介しましょう。
・ご主人を亡くされたAさん<77歳>(ご本人のコメント)
「ここに来るまでは、ずっと家でボンヤリと過ごしていました。うつ状態のようでしたが広報で脳健を知り、申し込みました。ここで声を出すことを思い出し、サポーターさんと話をしたり、学習者の皆さんと話をすることで、会話の楽しさを思い出しました。脳健は私の宝です!」
・外出の機会として参加されたB さん<80歳>(B さんをよく知る方のコメント)
「B さんは、金曜日だけは髪を整え、きれいに髭を剃り、衣服もキチンと着こなします。毎週金曜日に脳健に来るのが1週間の楽しみだそうです。脳健に来ることで地域の一員だということを再確認しています。もはや脳健はB さんの生きがいになっています。」
自分の学習が終わっても仲間が終わるまで待っている方、学習が終わってからもしばらく談話室で話し込んでいる方など、脳健の場で仲間づくりの輪がどんどん広がっています。
サポーターの志:もっともっと先がある、だからもっともっと向上したい
脳健の場を笑顔でいっぱいの場にするには、学習サポーターと高齢者とのコミュニケーションは欠かせません。自分たちのスキルを磨くために、2012年度には、サポーターのほぼ全員が学習療法士※1級認定研修会を受講し、勉強会や認知症サポーター養成講座などにも積極的に参加してこられました。また、現役の介護相談員として活躍されている方もおり、人生経験やノウハウを存分に発揮して、日頃から学習者のその日の状態に合わせ、キメ細かな関わり方をされています。
サポーターのこれからの抱負は、もっともっと多くの高齢者に脳健に来てもらうため、地域の集会所でもできるようにすることだそうです。脳健をひとりでも多くの方に経験していただき、友人をつくり、地域での生活を充実させて欲しいとの熱い思いで日々実践されています。
※「学習療法士」とは
既定の研修(演習含む)を受けられた方に学習療法研究会が認定する呼称。