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Vol.184 2016.12.06

就労支援としてのKUMON-
S&Jパンドラ(後編)

障害のある人
“自信と誇りに満ちた働き手”

プロデュースしたい

障害者の就労には大きな課題が2つあるといわれています。ひとつは、就職そのもののハードルが高いこと。もうひとつは、せっかく勤めても離職してしまう。つまり定着率の低さです。公文式学習を導入している就労移行支援事業所「S&Jパンドラ」は、就職率はもちろん、定着率の高さでも評価の高い施設。この「S&Jパンドラ」での取り組みについて、2回にわたってお届けしています。

目次

    “努力する人” “がんばる人”だからこそ、周りから必要とされ、手を差しのべてもらえる

    前編では、パンドラの就労支援の取り組みと、その一環として公文式を導入した理由や実際の学習、指導の様子などについて坂口所長やスタッフの方々に語っていただきました。次に、認定NPO法人パンドラの会(パンドラの経営母体)の代表理事、岡部さんのお話を聞いてみましょう。

    就労支援としてのKUMON-S&Jパンドラ 岡部代表理事
    岡部代表理事

    「どの就労移行支援施設にも共通していることだと思うのですが、これから初めて就職するという方もいらっしゃれば、会社をリタイアして再就職をめざす方もいます。リタイアの理由は、周囲の理解不足、仕事や職場の人との相性など、じつにさまざまだと思います。

    しかし、ご本人に課題があるケースも少なくないと感じています。その課題を、ご本人とともに見つけ、所長の坂口をはじめとしたスタッフで解決に向けての支援プログラムを考え、実践していく。そうすると、ご本人が変わるんですね。周囲に対しての見方や考え方も変わります」
     
    さらに、岡部さんはこう続けます。

    「例えばですね、自分では努力しないで、できないのを仕方のないこととあきらめてしまう方もいます。こういう方に、ただ“努力しなさい”“がんばりなさい”と言っても、なかなか状態は変わらないことが多いです。それもそのはずで、人は認められて、ほめられて喜びを感じ、がんばってみようという気持ちが生まれると思うからです。

    これは、仕事も公文も同じですよね。だから、このパンドラでそういう体験をたくさんして、努力できる人、がんばれる人になってほしいのです。努力する人だからこそ、周りから必要とされるし、手を差しのべてもらえると思います。このことは、障害のあるなしは関係ないはずです。そうして、障害者と健常者が同じ立場になったとき、はじめて互いを認め合い、本当に理解しあえるようになるのではないでしょうか」

    パンドラで大切にされていることは、普通に仕事に就くとき、仕事を続けるときのポイントと同じですね。パンドラのスタッフのみなさんは、“障害”というものを、あまり意識しないで話され、利用者さん方に接していらっしゃると感じましたが、その理由は岡部さんのお話を聞いて納得できました。

    公文式を学習する利用者さんの声とは?

    「漢字をたくさん憶えたいので、バスを待つあいだも公文のプリントをしています」

    就労支援としてのKUMON-S&Jパンドラ
    S&Jパンドラ 学習の様子

    「S&Jパンドラ」の「S&J」は「Step and Jump」です。利用者のみなさんが就職へ向け「Step and Jump」し、希望の仕事に就いてほしいというパンドラのスタッフの方々の熱い想いが込められています。

    利用者さんお二人にインタビューしました。お一人目は、事務職が希望というHさん(40代、男性)です。パンドラでは就労支援プログラムの一貫として、パンドラ内の事務的な仕事の一部を利用者さん方に任せていますが、Hさんは、公文式教材の発注と在庫管理を担当しています。

    「公文の学習ですか?はじめのころは計算するのも国語の文を書くのも面倒だなという印象がありました。でも、いまは楽しいです。自分のレベルに合ったところですし、スイスイ解けていくのが嬉しいですね。教材の管理ですか?最初は“任せます”ということだったので、“ハイ”とお受けしました。そんな感じではじめたのですが、実際にやってみるとけっこうたいへんです。でも、やっているうちに、こういうことも自分が希望している事務職の仕事に結びつくだろうなと思えるようになりました。これからもがんばります」

    もうお一人も、事務職希望のKさん(30代、女性)。いつも明るく大きく元気な声でのあいさつで、パンドラのムードメーカー的な方。チャレンジマインドも旺盛です。

    「朝、家を出てバスを待つあいだも、漢字をたくさん憶えたくて公文のプリントをひざの上でしています。パンドラに着いたら、もっと公文をしたくてしょうがなくなります。“できた!”という手応え、それをほめてもらえること、指導してくださるスタッフのみなさんとのコミュニケーション、ぜんぶがとても楽しいです。仕事にも早く就きたいですね」

    定着支援、最新の活動
    デンソープロボノプログラム

    取材を終え、そろそろおいとましようか…というとき、坂口所長がこんなことを話してくださいました。

    「ついこのあいだのことですが、株式会社デンソーさんが公益財団法人(あいちコミュニティ財団)との協働で立ち上げた『デンソープロボノプログラム』という社会貢献活動に応募し、採択されました」

    どのようなプログラムなのか聞いてみると、「デンソーの社員の方たちが、個人がもつ仕事のスキルと経験などを活用し、地域社会が抱える課題解決に取り組むNPOの活動を支援する」というもの。つまり、デンソーの社員の方たちがパンドラの活動を支援し、課題にいっしょに取り組んでくださるということでした。

    「われわれパンドラは小さな組織であり施設です。しかし、それを弱みととるか強みととるかは考え方しだいともいえます。あるいは、弱みを強みに変えるには、どうしたらいいかですね。そう考えると、“地域とのつながり”がその大きなファクターだと考え、デンソープロボノプログラムに応募しました。利用者様にはいつも、自立とは“何でも自分でできるようになること”ではなく、“自分でできることはがんばって自分でやり、できないことは支援を求められること”とお話ししていますので、今回の応募もその範になると思います。

    われわれが感じている具体的な課題としては、就職後に“コミュニケーションの苦手さ”などの特性ゆえに生きづらさを感じている発達障害のある人が、会社や職場で理解してもらえず孤立し、“離職”してしまうリスクが高いという問題です。その解決のために“コミュニケーションを楽しく試し学ぶ”体験学習の場を、地域に開かれた会として定期的に開催し、”発達障害当事者”の方が支援者と共に成長をめざす中で自己肯定感ややる気を感じられる場を目指します。一方で、会社や職場の発達障害に対する理解をすすめるために、企業向けの勉強会・研修を数年後には実施できるよう準備もすすめていく予定です。デンソーさんのお力をお借りし、そんな場を地域に根付かせていきたいと考えています」
     
    デンソーさんとパンドラのコラボ活動、今後の展開が楽しみです。

    「就労移行支援事業所」とは
    就労移行支援事業所は、障害のある方の就職をサポートする通所型の福祉サービス。身体、知的、精神、発達などの障害や難病の方も対象です。提供するサービス内容(支援プログラムなど)は事業所によって異なりますが、仕事に関する知識やスキルアップと就職活動のサポート、就職後も長く働き続けられるよう職場への定着支援も行っています。
    *詳しくは、記事末尾の関連リンク『障害者の就労支援について』(平成27年7月、厚生労働省)をご参照ください。

     関連リンク 就労移行支援事業所 S&Jパンドラ(Facebook) デンソープロボノプログラム(株式会社デンソーホームページ) 『障害者の就労支援について』(平成27年7月、厚生労働省)

    就労支援としてのKUMON-S&Jパンドラ 社会的自立をめざす方々に学ぶ喜び、成長する喜びを。
    就労支援施設
    導入目的は施設によって異なりますが、学力の向上と、態度面や生活面の変化は共通です。
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