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Vol.076 2015.02.24

大学でのKUMON-麗澤大学

社会貢献できる「経済学士」
として大学巣立つために
経済学に必要な数学力を確実に身につける準備としての公文式学習

「大学で公文式」というと、これまで何回かご紹介した「留学生対象の公文式日本語教材」を思い浮かべる方も少なくないでしょう。しかし、今回ご紹介するのは「大学生が公文式算数・数学教材を学習する」というレポートです。「エッ?」「はい?」とお感じの方は、ぜひお読みください。

目次

    日本の大学進学率は51.5%と過去最高。しかし…

    文部科学省の調査(平成26年度学校基本調査、確定値、過年度卒業者含む)によると、高校卒業者の大学(学部)進学率は51.5%で過去最高となっています。これまでの推移は、1960年度は8.2%、1975年度から1990年度にかけての15年間は25%前後でほぼ横ばい。しかし、1991年度から上昇を続け、2009年度(平成21年度)に初めて50%を超え、現在に至っています。「大学全入時代」「大学のユニバーサル化」といった言葉がさかんに使われるようになったのも、大学進学率が50%に近づこうとしていたころからでした。

    「ずいぶん高くなった」とお感じの方もいらっしゃると思いますが、海外ではどうなのでしょうか。OECD(経済協力開発機構)の2012年調査によれば、加盟34カ国の大学進学率の平均値は62%でした。ちなみに、トップはオーストラリアで96%、これにアイスランドの93%、ポルトガルの89%と続きます。アメリカは74%、韓国は71%、イギリスは63%で平均値とほぼ同じ。一方、イタリアは49%、ドイツは42%と日本より低いのですが、これらの国では、中等教育のあと「手に職をつける」ために職能学校に進む子どもたちが多いのが、その主たる要因のようです。

    総じて言えば、国際的には日本の大学進学率は高くはなく、順位的にも日本は低いほうに位置します。もちろん、各国それぞれの教育事情があり、高等教育や職業教育に対する国の方針、国民の考え方の違いもあるため、大学進学率が高いからよい、低いのはよくないとは一概には言えません。けれども、専門学校などを含む高等教育進学率は、国際的にも上昇傾向にあるといえます。

    さて、話を国内にもどしましょう。「大学全入時代」「大学のユニバーサル化」が言われはじめたころから、国公私立、文系・理系を問わず、多くの大学で共通した問題が顕在化してきました。それは、入学者層の拡大とAO入試に代表される入学者選抜法の多様化などにより、基礎学力が十分に伴わない大学生が増えてきたことです。

    その対応策として、大学でのこれまでの教育と併行して、あるいはその前に、高校までの学習内容の補習や学び直しの教育を試みる大学が増えました。そして、2005年には「日本リメディアル教育学会」が発足し、文字通り「学び直し」の事例研究や社会への提言などの活動を続けています。また、2007年には「大学での自主的な学びに必要な基本的能力や作業などを学生に教え、卒業時の学士としての質を保証」することを目的として「初年次教育学会」も設立されています。

    ※日本リメディアル教育学会、初年次教育学会については、関連リンクからご参照ください。

    「どの学生も、一人前の経済学士として社会に送り出したい」


    経済学部 教授
    同大キャリアセンター副センター長 
    籠 義樹 先生


    経済学部 教授
    副学長補佐 
    佐藤 仁志 先生

    今回ご紹介する麗澤大学は千葉県柏市の南柏駅(東京メトロ千代田線)からバスで5分足らず。上野駅や東京駅からも40~50分でアクセス可能。閑静な住宅街のなかにある森に囲まれた大学、といった趣きです。建学の理念は「知徳一体」「仁愛の精神」。少人数教育が特徴と聞いて校門をくぐりましたが、たしかに学生さんたちと先生方の「距離が近いな」というのが第一印象でした。

    「今回の取材については、大学内では賛否両論ありました。しかし、これからお話しすることはわたしたちの大学だけの問題ではなく、国内の多くの大学に共通する問題のため、少しでも現状を知っていただき、なにより学生たちが“学士”として一人前に育ち社会に巣立ってほしいという思いから、取材をお受けすることにしました」。こう前置きするのは、同大経済学部教授の籠(かご)先生です。まず、公文式を導入するまでの経緯をうかがってみました。

    「わたしも佐藤先生(後出)も、経済学で使う数学の指導担当をしています。経済学では方程式や関数などの数学を使いますから、そのために必要な数学を教えるわけです。レベルや内容からいえば、数Ⅰ・Ⅱ、数A・Bくらいでしょうか。ところが、入学してくる学生たちの基礎学力が年々低下している…といいますか、学力の差が大きくなっていくのを毎年感じていて、高校レベルの補習用教材を自分たちで作っていました。それでも、年によっては、補習用教材にもなかなか取り組めない学生がいて、学力差の大きな開きに正直悩んでいました」(籠先生)。

    経済学部教授の佐藤先生です。「基礎学力がついていないこともですが、もしかすると学力以前の問題かもしれないという学生もいます。学習習慣がついていない、それも自ら学ぶという姿勢での習慣です。大学生には不可欠ですね。そんなことを思いながら、補習用教材を作り直しては学生たちにさせていたのですが、ある日、こう思いました。高校レベルの補習教材は作れるけれど、そのもとになる基礎的な計算力をつける教材も必要なのでは…。でも、それはどう作ってよいのかわからない。困った…。そんなとき、籠先生から、公文式はどうだろう?という提案があったのです」。

    「こういうお話をすると、基礎学力が低い学生を入学させるのはいかがなものか?と首を傾げる方もいらっしゃると思うのですが、大学進学率が50%を超えるというのは、そういう問題も含んでいるということです。仮に入試をきびしくして、そういう子たちが大学に入れなかったとすると、たぶん少なからぬ割合で、高校を卒業した時点で就職しない・できない、将来に希望がもてない子たちがかなり増えると思います。そういう子たちが入学でき、一人前になって社会で活躍できるようにサポートしていくのも、現在の日本の大学の、そして、佐藤先生とわたしの責務だと考えています。公文式の導入は、その実現のための初めの一歩です」。そう話す籠先生は、同大キャリアセンターの副センター長でもあります。大学のキャリアセンターの責任者ならではの、重みのあるコメントだと受けとめました。

    学習をいやいやスタートした学生さんたちも、ちゃんと力がついてくる

    こうして2012年の春、経済学部の新入学生のうち希望者だけを対象に、公文式算数・数学教材を使った基礎的数学力向上講座を試験的に実施しました。12人が5~7月の3ヵ月間、計12回(各回90分)の講座を受講したところ、その学生さんたちは、その後も経済学の講義で使われる数学に対応でき、良好な状態が続いているとのことです。これを受け、翌2013年度には60人、2014年度には56人の学生さんが、同講座を3ヵ月間受講し、ほぼ同様の結果が得られています。

    ただし、2012年度と2013・2014年度の違いがひとつだけあります。それは、2013・2014年度は「自主(希望)受講者」枠のほかに「指定受講者」枠を設けたこと。入学時に実施するテスト(後述)結果により、「この学生には公文式を学習させたほうがよい」と判断される学生を「指定受講者」として、上記の講座を必須としたのです。その内訳は、2013年度は自主:36人・指定:24人、2014年は自主:13人・指定:43人です。

    「希望して公文の教材に取り組む学生(自主受講者)は、自分の数学力を高めたいという明確な目的があるので、確実に伸びていきます。自信もつくようです。興味深いのは指定受講者の学生たち。学習をいやいやスタートするものの、3ヵ月間・計12回の講座が終わるころには、けっこう力がつくのです。なかには、脱落しそうになる学生もいますが、やっているうちに楽しくなるのか、達成感を感じている学生が多いと思います。まだ数としては少ないですが、大学の数学以外の講義で、学ぶ姿勢に違いというか変化がではじめている学生もいますね」(籠先生)。

    籠先生と佐藤先生によれば、自主受講の学生さんも指定受講の学生さんも、方程式や関数の計算のやり方はわかっているそうです。けれども、わかっているから、方程式や関数の計算が速く正確にできるわけではない、とも話します。籠先生の言葉をお借りし、スポーツにたとえるとこうなるでしょうか。たとえば、短距離走で速いタイムを出すには、スタートはこう、歩幅や腕の振りはこうする、筋肉はここを重点的に鍛える…。そういうことが、知識としてわかっていても、実際に練習で鍛えなければ速く走ることはできないわけです。

    「公文の教材の良さは、学習量さえこなしていけば、結果がちゃんとついてくることでしょう。この3年間、学生たちを見ていて、そう感じています。もちろん、“くもん?…やるんですか?”という学生もいます。しかし、入学時に実施する『プレースメントテスト』という経済学を学ぶために必要な数学力を測るテストの結果が、公文の講座の受講前後でどう変化しているかをデータで示すと納得し、“自分もやればできる”という自信にもつながるようですね」(佐藤先生)。

    「がんばれる自分に気がついて、自信がもてるようになりました」


    今回お話をうかがった経済学部の学生さんたち

     今年度(2014年度)、公文式の講座を受講した経済学部の学生さんにお話をうかがいました。経営学科の女子学生さん、経済学科の男子学生さん、そしてタイからの女子留学生(経済学科)さんの3人。みなさん、2014年4月入学の1回生です。

    ※個人情報保護の観点から、学生さんのお名前は匿名とさせていただきます。また、同内容の回答やコメントは集約して記述しています。

    Q1: 将来はどんな仕事に就きたいですか?

    A1:「銀行か金融関係の会社に勤めたいです」

         「企業の経営や会計など、大学で学んだことが活かせる仕事が希望です」

    Q2: 大学生になってから、公文を学習することに抵抗はありませんでしたか?

    A2:「公文は小学生がするイメージが強かったので、正直、エッと思いましたが、やって
           よかったです」

    A2:「公文は小学生がするイメージが強かったので、正直、エッと思いましたが、やってよかったです」

         「自分の数学力は足りないと思っていたので、希望して受講しました」

         「数学がもっとできるようになりたいから受講しました。楽しかったです」

    Q3: 公文を学習して、よかったと思うことは?

    A3:「計算が速く、ミスもすごく減った。経済で使う数学にも公文は役立つと思います」

         「過去につまずいて苦手意識があったところが、ミスなくできるようになって自信が
           つきました。実はその苦手なところが気がかりで、大学の経済の数学でついていけ
           るか不安だったんです」

         「過去につまずいて苦手意識があったところが、ミスなくできるようになって自信がつきました。実はその苦手なところが気がかりで、大学の経済の数学でついていけるか不安だったんです」

         「基礎的な計算が速く正確にできるようになったので、高度な数学もできるんじゃな
           いかという自信みたいなものができました」

         「基礎的な計算が速く正確にできるようになったので、高度な数学もできるんじゃないかという自信みたいなものができました」

         「自分もがんばればできるようになるとわかり、自信がもてるようになりました」

    どうやら学生さんたちは、基礎的な計算や数学を学び直したという以上のものをつかみ取っているようですね。取材の最後に、籠先生がこんなお話を聞かせてくださいました。

    「じつは、公文を導入しようと考えた理由がもうひとつあります。就職の最初の関門のひとつ、適性検査の筆記試験対策です。キャリアセンターで学生の就職サポートもしているのでよくわかるのですが、この対策は避けて通れません。企業からの求人があり学生を受けさせるのですが、その筆記試験で落ちる学生が少なくありません。この学生はこんないいところがあるのに…と悔しい思いになることもたびたびです。ご存じのようにこの筆記試験は、適性(性格)テストと能力テスト(国語と算数に近い数学)を合わせた構成ですから、計算が得意な子には有利です。とはいっても、付け焼刃のというか、ちょっと練習しただけの計算力では歯が立たないようです。うまく表現できませんが“基礎体力のような計算力”が必要なのだと思います。公文なら、そのレベルの計算力も養成できると思ったのです」

    そして、こう続けます。「公文を導入してまだ3年目なので、さきほどの筆記試験への効果は今後の検証課題ととらえていますが、ここ数ヵ月、学生たちを見ていて思うところがあります。それは、公文式学習には、問題に取り組む態度、あるいは学ぶ姿勢を醸成する効果があるのではないかということ。問題や学習課題、新たな学びに、正面から向き合えるようになるのかもしれません。もし、そうなら、それは大学での学びに直結していますから、すごく大切なことだと思います。そんなことも見据えながら、これからも学生たちの学びを力いっぱいサポートしていきたいですね」(籠先生)。


    関連リンク 麗澤大学 日本リメディアル教育学会 初年次教育学会


    社会に出た後にも活用できる力を確実に身につける。
    大学・専門学校等
    「リメディアル教育」からスタートした大学等での公文式は、その領域が拡充しています。
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