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Vol.062 2014.11.11

高校でのKUMON-村上学園高等学校

本気しかってくれる、
本気ほめてくれる、
この学校が大好きです」
不登校、学力不振、高校中途退学生徒の再スタートを目指して

公文式を正課の授業として導入してくださる私立高校が年々増えています。今回ご紹介する村上学園高等学校(香川県丸亀市)の公文式導入は昨秋の2013年11月から。まだ1年ほどの学習期間ですが、生徒さんたちの変化と成長は大きいといいます。

目次

    「こんにちは!」の元気な声に迎えられて

    金刀比羅宮(ことひらぐう/こんぴらさん)の参道口として江戸時代からにぎわう、香川県丸亀市。丸亀城を間近に望む一角に村上学園高等学校(以下「村上学園」)はあります。2012年4月に開校したばかりの新しい私立高校です。通信制課程・単位制・普通科の新しいタイプの高校(全日制スタイルの通学型通信制高校・男女共学)で、その教育理念は「社会に出て立派に通用する有為な人材育成」です。

    全校生徒数は71名(2014年9月現在)、その多くが中学時代は不登校や学力不振だったといいます。学校の雰囲気はふつうの高校とはちょっと違うのかなという先入観をもったまま、村上学園の校門をくぐると、だしぬけに男子高校生3人から「こんにちは!」と大きな声であいさつされました。とても大きく元気な声だったので少々面食らうとともに、あさはかな先入観を恥じるばかりでした。

    「みんな可能性を持っている生徒なんです。」


    猪熊先生(副校長)

    副校長の猪熊先生によれば、学校には中学時代に不登校や学力不振だった生徒さんが多いこと、別の高校で不登校になり、この学校に転入してきた生徒さんもいる。そのため、基本的な生活習慣や学習習慣が養われていない生徒さんの割合が高いといいます。それが結果として、学力が低い傾向にある、判断力に乏しい、問題行動傾向といった課題につながっているそうです。

    そして、猪熊先生はこう続けます。「しかし、こうも思うのです。低学力、判断力の乏しさ、問題行動は、すべて彼ら彼女らの責任なのだろうかということです。一人ひとりと面と向かって話すと、みんな豊かな可能性を秘めたいい子たちです。コミュニケーションを心から求めている子たちです。それも、本気になって相手をしてくれる大人たちを必要としているのです。われわれ大人たちが見方を変え、一人ひとりのいいところを見つめるようにしていけば、みな伸びていけるはずです。

    たとえば、学力が低いというのは、不登校で学ぶ機会が極端に少ない、あるいは学ぶことへの自信を失っているだけではないでしょうか。もちろん、不登校の原因もいろいろでしょう。一人ひとりの抱えているものも大きいと思いますが、そのおおもとは、ちょっとしたボタンの掛け違いや、周りの生徒や先生とリズムがうまく合わなかったということも多いと思うのです。ですから、小規模校という強みを活かし、生徒たちとわれわれ教師が近くなるよう、こちらからの言葉かけを密にしています。それに加えて、通信制・単位制という強みを活かし、生徒の可能性を発見し、生徒自身が自分に自信がもてるようなカリキュラムを正課でも課外でも組み入れるようにしています」。

    通学型通信制高校のカリキュラムの自由度を活かした実学教育の実践

    授業を課外まで見学して猪熊副校長の話される意味がよくわかりました。数学、国語、英語といった基幹の教科はもちろん、英検、漢検、硬筆検定、簿記、危険物取扱者資格取得の授業があります。それらの授業をしている高校はけっこうあるかと思いますが、さらに驚くのは、ヨガ、華道、調理、座禅の授業まであること。通学型通信制高校のカリキュラムの自由度を存分に活かした、実学教育の実践を徹底しているのです。

    実際に「乙種第4類危険物取扱者(通称「乙4」)」という社会的需要が高く、就職にも有利な資格を取得する生徒さんも少なくないといいます。来年3月、第一期生が卒業しますが、すでに就職内定者や大学の推薦合格者が誕生しています。

    また、ヨガ、華道、座禅といった授業の講師陣はすべてその道のプロにお願いするため、学校経営的にはけっこうな支出となっているそうです。「けれども」と前置きして、猪熊副校長はこう話します。「やはりプロフェッショナルの講師にお願いすることで、生徒たちの意識も違いますし、プロの視点で生徒のいいところや伸びる芽を見つけてくださるので、それがとてもありがたいです。生徒たちの自信にもつながりますから」。

    ヨガの授業を見学していると、床に寝る動作に移りながら、こちらに大きなピースサインを出す生徒さんが複数名。不登校だった生徒さんが多い学校とは思えない光景でした。

    公文式を正課の授業に導入し、生徒のやる気を育てる


    地藤先生(教務部、公文式学習担当)

    村上学園では、公文式の数学と国語の学習が毎朝50分間、正課の授業として取り入れられています。生徒さんたちが学習する内容は学年準拠ではなく、一人ひとりの学力レベルに合わせています。ふつうの公文式教室とまったく同じように個人別に学習が進められています。公文式の導入は昨年の11月から。「学習習慣の確立と進学・就職など、将来を拓くための基礎学力の養成という目標をかかげ導入しました。生徒の数は少なくても、その学力差は大きいですから、一人ひとりに合わせられる公文式で、まず確固とした学習習慣を身に付けてほしかったのです」(猪熊副校長)

    その効果はほどなく現れてきたといいます。公文式学習担当の地藤先生にうかがいました。「公文をスタートして2~3ヵ月目くらいから、生徒たちが変わってきました。集中して学習する大切さを理解したり、くり返し学習することを嫌がらなくなりました。これはとても大きな進歩です。なるほど、この体験を重ねていけば学力は確実についていくとも思いました」。最近では、数学や国語以外の教科に対しても意欲が高まったり、生徒の保護者から「勉強しなさいって言うことが少なくなりました」といった声も寄せられるようになったそうです。

    不登校からの脱出、そして夢へのチャレンジ


    横井先生(進路指導部)

    生徒さんにインタビューしてみました。スペースの都合でお一人だけしかご紹介できないのが残念です。高校3年生の女子生徒さんです。

    「私は前の高校で不登校となり、村上学園に転入してきました。転入してから2~3ヵ月たっても、朝になると学校に行きたくないと親を困らせました。しかし、心配してくれる友だちや先生方のおかげで、再び登校できるようになりました。もちろん、不登校からの脱出は簡単なことではありませんでしたが、いまでは脱出できたということが大きな自信に変わりました。将来の夢は、特別支援学校で子どもたちに英語を教えることです。村上学園の好きなところは、先生方がやさしいこと、本気でしかってくれて、本気でほめてくれるところです」。

    にこやかに話す彼女は、すでに英検準2級を取得済み。志望大学もしっかり決めて、夢に向かって着実に歩んでいます。インタビューを終えて職員室に戻ると、彼女を良く知る、進路指導部の横井先生がこんな話をしてくださいました。「彼女はうちの学校に来てもなかなか登校できなくて、遠足のような行事にも参加できない子だったんです。それが……。別人のように明るくなってくれました。ほんとうによかったです」。声をつまらせながら話す横井先生の言葉に、生徒さんの変化と成長を真摯に喜ぶ村上学園の先生方の想いがにじみ出ているようでした。


    関連リンク 村上学園高等学校


    null 学力向上、能力開発、学習姿勢や意欲の向上のために。
    学校での公文式 高等学校・高等専修学校等
    一人ひとりに「ちょうどの学習」を提供する公文式は、高等学校等にもとり入れられています。
    詳細をみる

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