Unlocking the potential within you ―― 学び続ける人のそばに

記事検索
Vol.056 2014.10.06

小児医療と絵本

KUMONの読み聞かせに関する
科学的な研究成果
専門誌小児歯科臨床
紹介されました
外部研究者(脳科学者・心理学者)と
KUMONとの共同研究、「歌と読み聞かせ」を科学する

「絵本の読み聞かせはとても大切」。これは、どなたも同じ思いでしょう。でも、なぜ大切なのか…、どんな効果があるのだろう…、という具体的なことになると明確に答えられる方は多くないかもしれません。今回は「小児医療と絵本」にまつわる話題です。

目次

    日本外来小児学会シンポジウム“小児医療の向こうに「絵本の力」を見つけよう”

    2013年8月30日~9月1日、福岡市で第23回日本外来小児科学会年次集会が開かれました。小児医療におもちゃや絵本を活用する取り組みは以前からあり、この学会でも「小児医療の向こうに“絵本の力”を見つけよう」と題したシンポジウムが催されました。そのなかで、会場からのショートプレゼンテーションという形で、KUMONの歌と読み聞かせの実践や外部との共同研究についてご紹介しました(発表者:公文教育研究会・佐々木丈夫)。この機会をいただいたのは、このシンポジウムを企画された小児歯科医の濱野先生(福岡市)が、KUMONの読み聞かせに関する共同研究を知り、ぜひ話をしてほしいという依頼をしてこられたからです。

    ※上記「共同研究」の概要は、下記の発表再録をご参照ください。

    そして、今年5月、『小児歯科臨床』(2014年5月号)という専門誌で、同シンポジウムでのシンポジストおよびショートプレゼンテーションの発表内容すべてが全21ページの特別企画で紹介されました。各発表のタイトルだけですがページを追って列記してみると…。

    第23回日本外来小児学会シンポジウム“小児医療の向こうに「絵本の力」を見つけよう”
    ◯子どもの歯科医療における絵本力を考える
    ◯子どもとサイン「新しい視覚言語としての空間アプローチ」
    ◯絵本の力・場の力~小児科外来での読みあいから~
    ◯絵本と小児科医
    ◯「歌と読み聞かせ」を科学する ⇒ KUMONの発表(下段に全文再録)
    ◯子どもの歯医者がつくった「絵本と図鑑の図書館」
    ◯「絵本の力」を再認識-『ノンタンがんばるもん』
    ◯大いなる期待 -絵本力と小児医療-

    発表のタイトルを見ていくだけでも、小児医療の最前線で絵本の読み聞かせが大切にされている、医療の一部としてとらえられていることがわかります。ちなみに、発表者は小児科医や歯科医の先生方はもちろん、アートデザイナー、大学教授、読書アドバイザー、絵本編集者、そしてKUMONなど多分野のスペシャリストで構成され、学際的かつ実践的なシンポジウムでした。

    ≪発表再録≫


    『読み聞かせは心の脳に届く』
    (泰羅雅登著/くもん出版)

    第23回日本外来小児学会シンポジウム“小児医療の向こうに「絵本の力」を見つけよう”
    会場からのショートプレゼンテーションとして発表

    「歌と読み聞かせ」を科学する

    公文教育研究会 佐々木丈夫

    「歌いかけ・読み聞かせ」共同研究

    子どもたちに対する「歌いかけ」や「読み聞かせ」は古くから世界中で行われてきましたが、意外にもその科学的な研究はほとんど行われてきませんでした。一方、私たち公文教育研究会では、学習のための基礎づくりとして、家庭での歌いかけ・読み聞かせとそれに続く読書が大きな意味を持つことを経験的に見出し、30年以上にわたってその実践を強く推奨してまいりました。

    「読み聞かせ・歌いかけ」~ 脳科学からのアプローチ ~

    まずは読み聞かせをしてもらっているときの子どもの脳はどのように活動しているのか、東京医科歯科大学・泰羅雅登教授に調べていただくことにしました。

    以前の共同研究により、大人では音読をしているときや音読を聞いているときに前頭前野が活発に活動していることが分かっていました。同じく、子どもでも読み聞かせをしてもらっているときに、前頭前野が活発に活動するのではと考え、最初に近赤外計測により読み聞かせを聞いているときの子どもの脳の状態を調べたのです。その結果、子どもの前頭前野はほとんど活動していないことが見出されました。

    そこで次に機能的MRIを使い、母親が読み聞かせをしているときの子どもの脳活動を調べました。その結果、やはり前頭前野は活動していませんでしたが、側頭葉の言語に関わる領域の活動とともに、情動に関係する大脳辺縁系が活動することを発見したのです。

    泰羅先生はこの部分(大脳辺縁系)を分かりやすく伝えるために「心の脳」という表現をされています。読み聞かせによって活動するこの「心の脳」は喜怒哀楽を感じるだけでなく、わが身をたくましく生かしていく役割があります。心の脳を育むことは健全な人間に育てることにつながりますが、それには子どものころの読み聞かせがとても役立つことがわかりました。後に行った研究により、歌いかけについても同じ効果が確認できました。

    一方、わが子を読み聞かせをしているときと単に音読をしているときの母親の脳活動を比べると、読み聞かせをしているときは前頭前野のうち、人とのコミュニケーションにかかわる部分がより活動していることがわかりました。これらの結果から、母親が子どもの気持ちに強く訴えかけるように読み聞かせをするために、子どもの情動に関係した脳が活発に活動するのではないかと考えています。

    ☆ご紹介しています「共同研究」の詳しい内容につきましては、右記の書籍をご参照ください。
    『読み聞かせは心の脳に届く』(泰羅雅登著/くもん出版)

      この記事を知人に薦める可能性は、
      どれくらいありますか?

      12345678910

      点数

      【任意】

      その点数の理由を教えていただけませんか?


      このアンケートは匿名で行われます。このアンケートにより個人情報を取得することはありません。

      関連記事

      バックナンバー

      © 2001 Kumon Institute of Education Co., Ltd. All Rights Reserved.