「夢」「学び」を支えるKUMONの「いま」を伝えます

記事検索
Vol.015 2013.12.10

KUMONの寄附研究活動-長時間のテレビ視聴

長時間のテレビ視聴
小児の脳の発達に与える影響
(東北大学加齢医学研究所)子どもたちの心身の健やかな成長と発達を促すための研究成果から

KUMONは大学・病院・図書館などとの協働で研究活動や子育て支援活動をしていますが、大学を対象とした寄附研究活動もしています。今回は、この11月下旬に発表された最新の研究成果を中心にレポートします。

目次

子どもたちを取り巻く環境の変化が激しい今だからこそ、とても重要な研究

KUMONの寄附研究活動
2013年11月20日、東北大学加齢医学研究所で開かれたプレス向け発表会
発表者は、同研究所の竹内光准教授

今回の研究成果は、東北大学加齢医学研究所・認知機能発達(公文教育研究会)寄附研究部門(代表:川島隆太教授)から先月、11月20日にプレスリリースされたものですが、その前に、KUMONがなぜ寄附研究活動をしているのかをご紹介しておきましょう。

この寄附研究部門では下記のような方針で研究活動をしています。子どもたちを取り巻く環境の変化が激しい今だからこそ、脳の発達に生活習慣や環境がどう影響するのかを見極めるための、こうした研究はとても重要だと考えています。

人間の脳と心の関連を脳機能イメージング装置によって解明しようとする脳科学研究を、教育学や認知心理学と融合することにより、子どもたちの心身の健やかな成長や発達を促し、学習の意欲、論理的思考力、創造性、知的好奇心、探求心などを向上させる生活習慣や環境の提言、新しい具体的な教授・学習システムの研究開発等を行っています。

これまでの主な研究成果は「朝食の質と脳発達の関係(2010)」と「睡眠時間と脳発達の関係(2012)」の2つがあります。これらの結果は文部科学省や厚生労働省のアンケート調査結果などでも指摘されてきたことですが、新たに脳科学的に実証されたことに大きな意味があると考えています。

長時間のテレビ視聴は、子どもたちの高次認知機能領域の発達や言語性知能に悪影響

KUMONの寄附研究活動
TV視聴時間と言語性知能(a)、TV視聴時間と数年後の言語性知能の変化(b)の関連

乳幼児を含む、子どもたちのテレビの長時間視聴の影響は、数多くの心理学的研究や日本小児科学会などからの提言(後述)でよく知られていますが、脳の発達に具体的にどんな影響をおよぼすのかは、科学的には明らかにされていませんでした。

今回、東北大学加齢医学研究所の竹内光准教授・川島隆太教授の研究グループは、子どもたちのテレビの長時間視聴が、脳の高次認知機能領域の発達や言語性知能に悪影響をおよぼしていることを脳科学的に実証しました。この新たな解明により、「日々発達が著しい子どもたちのテレビの長時間視聴にはいっそうの注意が必要」ということを再認識する必要があります。

なお、この研究は緻密かつ大規模なデータによる解析手法を用いて、テレビ視聴が小児の言語機能などにおよぼす影響の神経メカニズムを新たに解明した点などから、従来にない画期的な研究成果として国際的にも注目され、英国神経科学雑誌『Cerebral Cortex』に採択されています。

※研究の詳細は関連リンクからご覧ください。

だからこそ、親子のコミュニケーションをもっと大切に

KUMONの寄附研究活動
初回参加時におけるTV視聴時間と数年後の脳の灰白質量変化の正相関を示した領域

テレビの長時間視聴が子どもたちに与える影響については、十数年以上前から、特に小児科の医師たちから、さまざまな形で指摘されていました。なかでも大きな話題となったのは、2004年に日本小児科学会から発表された「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」と題する提言でした。

※日本小児科医会からも同様の提言が発表されています。関連リンクからご覧ください。

この提言は、小児医療の最前線を担う小児科医たちが「子どもたちが何かおかしい」と感じたことに端を発し、同学会が実施したアンケート調査結果によるものでした。また、「テレビの長時間視聴の影響にほとんどの親が気づいていない」という危機感もあり発せられたそうです。提言の要旨は「長時間視聴は言語発達が遅れる危険性が高まる」「テレビ・ビデオを見るときは親もいっしょに」「見方や見る時間にルールを」といったもので、かなり厳しい内容でした。

考えなくてはいけないのは、この提言から10年間弱という時間のなかでのメディアの発達です。子どもたちの周りにはゲーム機・PC・タブレット・スマホなどなど、テレビ以外にもさまざまなメディアがあふれています。しかし、これらのメディアを子どもたちから完全に遠ざけるのは現実的ではありません。では、どうすれば……。

「今回のわれわれの研究は、テレビを問題にすることが目的ではなく、さまざまな生活習慣や環境が親子のコミュニケーションを妨げたり、子どもたちの脳の発達にどんな影響があるかを、子育て中のみなさんに知ってほしいのです。それを知ることで、テレビを含めたメディアとのつきあい方も見えてくるはずです」と東北大学の川島隆太教授はコメントしています。KUMONでは、乳幼児期には歌と読み聞かせによる親子のコミュニケーションをおすすめしていますが、この「子どもとメディア」についても、外部の研究者や専門家の方々とともに真摯に考えていきたいと思います。

関連リンク 川島隆太研究室(認知機能発達寄附研究部門) 東北大学プレスリリース 日本小児科学会のテレビ視聴に関する提言(日経メディカル) 日本小児科医会 「子どもとメディア」に関する提言

    この記事を知人に薦める可能性は、
    どれくらいありますか?

    12345678910

    点数

    【任意】

    その点数の理由を教えていただけませんか?


    このアンケートは匿名で行われます。このアンケートにより個人情報を取得することはありません。

    関連記事

    バックナンバー

    © 2001 Kumon Institute of Education Co., Ltd. All Rights Reserved.