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Vol.078 2024.06.21

学校法人智辯学園理事長
藤田清司さん

<前編>

ひとりの生徒との出会いがつないだ
公文公会長親子との交流と
スポーツコースへの公文式国語導入

学校法人智辯学園理事長

藤田 清司 (ふじた きよし)

和歌山県生まれ。学校法人智辯学園理事長。2000年智辯学園和歌山中学高等学校第二代校長に就任。2009年学校法人智辯学園第三代理事長に就任。現在に至る。主な公職として和歌山県並びに奈良県私立学校審議会委員、和歌山県では審議会会長。また和歌山県私立学校連合会会長も務める。

春夏合わせて4度の甲子園優勝経験のある智辯学園和歌山高等学校は、東京大学や京都大学をはじめとする難関国立大学や医学部受験に高い現役合格率を誇る県内随一の進学校でもあります。スポーツコースの生徒は約30年前から、公文式国語を授業の一環として導入しているという同校。導入を決めた藤田清司理事長に、公文式の効果や、創始者である公文公(くもん とおる)元会長や公文毅(くもん たけし)元社長との交流についてお話しいただきました。

目次

    一流の仕事人、リーダーを育成する智辯学園の教育

    藤田 清司(ふじた きよし)

    智辯学園和歌山中学・高等学校は、「和歌山に私立の進学校をつくりたい」という県からの強い要請を受けて、私の父である藤田照清前理事長が、1978年に開校させた学校です。

    私は2000年に第二代校長に、2009年に第三代理事長に就任しました。設立母体は奈良にある智辯学園中学・高等学校であり、開校当初から「持てる能力の最大開発」、「人や物を大切にする心」、「感謝の心」、「使命感に燃える人間の育成」を目指してきました。中でも大きな柱としているのが、将来、各分野で活躍するリーダーを育成することです。リーダーの育成にはふたつのポイントがあると我々は考えています。

    ひとつは、将来、プロフェッショナルと言われるような人間になるために、持てる能力を最大限開発し、学力を伸ばすこと。たとえば、最難関大学に合格してしっかりと学業に励み、一流の仕事人になるということがあると思います。

    学力向上のために、本校では60分授業を取り入れています。まずは40分で教科書の基礎を理解し、残り20分は発展的思考力を培う内容に取り組みます。通常より長めの授業時間ですが、本校の生徒たちは中学1年生でも高い集中力を発揮しています。

    もうひとつは、豊かな心を育むことです。人格が備わっていないとリーダーシップは発揮できません。人間にとって一番大切なのは命ですが、その次に大切なのは「心」。この心がしっかりしていないと人間として大きな成長はあり得ないというのが根底にあります。

    本校は進学校であると同時に宗教校ですから、勉強も大事ですが、まずは人の話をしっかりと聞ける素直な人間を育てるという、心の教育に重点を置いています。毎週ある宗教の授業では、僧侶の先生が古今東西の著名な方々の説話などを教材に、心を育む教育をしています。また、月に一度の感謝祭という宗教行事では、父母の恩、衆生の恩、三宝の恩、天地の恩の「四恩」に感謝することを続けています。

    ひとりの生徒との出会いが広げた公文とのご縁

    藤田 清司(ふじた きよし)

    こうした教育方針のもと、開校当初から新入生とその保護者との面接も続けてきました。今から約35年前にその新入生面接にやってきたのが、泊幸秀君(現・東京大学定量生命科学研究所教授)とお母さまの泊惠美子先生(故人)でした。

    入学試験の点数が抜群に高いのに、進学塾には通っていなかったと言う。おまけにエレクトーンの腕前はプロ級で性格も良い。「どんな教育をしたらこんな素晴らしい子になるんだろう」と不思議に思って、本人に「何をしていたの?」と聞いたら、公文式だという回答でした。お母さまが公文の先生だったんですね。

    当時、我が子が小学3年生だったこともあり、私自身がその場で公文式に非常に興味がわきました。通常の面接では私が学校生活などについてお話をするのですが、その日は私からの質問に答える形で泊先生が公文式の良さを語ってくれたことを覚えています。その話から、私の子どもを泊先生の教室で見てもらえないかとなったのが、私と公文式との関わりのスタートでした。

    まもなく泊先生の教室に息子が通い始めると、泊先生が「全国にはこんなすごい公文生がいるから一緒に見に行きましょう」と誘ってくれて、全国進度上位者懇談会を見に行ったこともありました。
    ※当時、全国の進度上位(教科別・学年別)の生徒・保護者、指導者が一堂に会した催し。

    そこで公文の創始者である公文公会長との出会いがありました。1990年頃だったと思います。お話をする中で、会長が、「僕も学校を創りたいと思っているので、ぜひ智辯学園を参考にさせてもらいたい」とおっしゃったことから、親しい交流が始まりました。本校の入学式を見に来ていただいたり、食事をご一緒させていただいたりなどの交流を通して、会長は公文式の良さをしっかりと伝えてくれました。

    特に素晴らしいと思ったのは、会長が長男の毅さん(のちの社長)に算数を教えるために、計算問題をルーズリーフに書いた手作りの教材を与えたという公文式の原点となるエピソードです。公文式の原点は教育の原点でもあると思います。親から子に教育を伝えるという基本が何より大事なことだと、会長は我々にしっかりと教えてくださった。

    そして当時、感心したのは、会長と指導者の先生方との団結力、絆です。先生たちが会長と交流するのを間近で見ながら、公文の教育の素晴らしさはこの団結力にあるんだろうと感じ入ったのを今でも覚えています。

    会長はまた、私に息子の毅社長を紹介してくださいました。「お互い教育に携わる大きな組織の長の息子なのだから仲良くしなさい」ということだったんでしょう。毅社長とは立場の似た者同士で、年に一回は食事会をして互いの悩みを話すなど、親しく交流させていただきました。早くにお亡くなりになられたのは大変残念なことでした。教育者として、組織の長として、もっとこれからの教育のあり方について語りたかったというのが本音です。

    智辯和歌山のスポーツコースで公文式国語を導入したわけ

    ちょうどその頃、野球部員を中心とした本校のスポーツコースの生徒の勉強がうまくいっていないという悩みがありました。スポーツコースの入学者は小学校から中学校にかけてひたむきにスポーツに打ち込んできた子どもたち。高校入学後は、基本的なところから学習指導をする必要がありました。

    藤田 清司(ふじた きよし)

    私は勉強の基本は国語だと考えています。国語の読解力を身につけない限りは、どの教科でも通用しない。どうしたら国語の基礎力を高めていけるかを泊先生に相談し、学校での指導に協力していただけることになったんです。こうしてスポーツコースに公文式国語が導入されました。

    高校生ですが、それぞれの生徒に応じた教材からスタートします。最初は楽にできるところだから、スポーツばかりしてきた生徒たちでもとっつきやすいんですよ。やさしい教材からのスタートでも、がんばれば徐々に進度を上げていくことができる。結果的に公文式を導入して良かった。スポーツコースの生徒の学力が高まっていったのは泊先生のおかげです。

    現在は泊先生から教室を引き継いだ長女の佐藤美佐先生と国語科教員が、本校での公文式学習を担当してくれています。スポーツコースは1学年10人強ですが、その3学年40人あまりが同時に公文の教材を集中して学習する授業風景は圧巻ですよ。一人ひとり、進度も取り組んでいる教材も違うわけですからね。

    スポーツコースの生徒たちの共通の目標は、大学受験に必要な小論文をしっかりと自分の言葉で書けるようになること。そのための読解力を公文式で培います。受験だけでなく、どんな仕事に就くとしても国語力が身についていないと何もできません。将来、自分の考えを言語化できない、文章を書けないということにならないよう、先生方は国語を勉強する意味も生徒にきちんと説明しながら指導してくれています。

    公文式で身につける読解力はコミュニケーション力にもつながっていることが、生徒たちと会話しているとよく分かります。高校1年生のうちは自分の思いや考えを言葉にして伝えることが難しく、生徒から聞こえてくるのは「はい」や「うん」ばかり。ところが、週に1回公文式国語に取り組んでいると、その子たちが見違えるほど積極的に話すようになるんです。

    高校2年生には一人ひとりと個人面談をして、自分の長所と短所を語ってもらいます。自分の言葉で短所をしっかりと答えることができたら、その短所をいかにして出さないようにするかを自分の頭で考えさせています。これは精神的なトレーニングですが意外とできていない子が多い。面談で話し合いながらベストな方法を見つけ、それをどうやって続けていけばよいかということをアドバイスすると、1年後には精神的にすばらしく成長した姿を見せてくれます。

    これは本当にうれしいことです。スポーツコースの生徒たちは部活関係者以外のアドバイスも素直に聞いてくれるので、私も彼らとの会話を楽しんでいます。

    後編を読む

     


     

     

    後編のインタビューから

    -ゴールに向かってコツコツ進むカメであれ
    -生きるための選択肢を作る方法が「学び」の真髄
    -「リーダーシップの輪」というものを和歌山から世界中に広めたい

    後編を読む

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