スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2016/03/25更新

Vol.030

劇団目覚時計 代表 稲垣美穂子さん  後編

心に響く“ことば”の力
感動共有することで
子どもの心豊かに育つ

稲垣 美穂子 (いながき みほこ)

東京都生まれ。日本女子大学文学部在学中に、日活映画『孤独の人』皇太子の恋人役でデビュー。日活で活躍後、俳優座養成所に13期生として入所、本格的女優を目指す。俳優座養成所卒業後は、フリーで映画、舞台、テレビに出演して活躍。1977年に劇団目覚時計を立ち上げ、オリジナルのファミリーミュージカルを全国各地で公演する。1986年には劇作家の内村直也氏を中心に、東急・五島昇氏、元副総理・後藤田正晴氏、ソニー創業者・井深大氏らとともに「青少年の心を育てる会」を設立。演劇を“家族のふれあいの場”と位置づけて活動を続けている。

大学時代に女優として映画デビューし、その後は自ら劇団を旗揚げして、プロデューサーとしても精力的に活動されている稲垣美穂子さん。演劇を通して子どもたちが抱える問題に向き合い、旗揚げ以来40年、親子のきずなや友情などをテーマに各地で公演を続けています。信念と行動力を持ち合わせた稲垣さんは、あのマンガ家で絵本作家のやなせたかしさんをして、「かぼそい身体に宿った強い精神で砂漠に花を咲かせるような仕事を続けていかれるだろう」と言わしめたほど。その情熱の源や演劇活動を長く続けられてきた背景をうかがいました。

よろこばせることが自分のよろこび
それがパワーの源

女優 稲垣美穂子
被災地にて“やなせたかし作品”の読み聞かせ

演劇を観るというのは、いわば他人の人生を見るということ。客観的に見るということで、たとえば「あの人はこんなこと言っていたけど、本当はこうかもしれないな」と思いやることができるようになっていきます。そうしたことを積み重ねていけば、人間同士のつながりが薄くなってきている今の時代も、少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

親孝行をテーマにしたミュージカルでは、親孝行とはどういうことかわからない子でも、ミュージカルの中で表現すると、効果的に伝わるようです。他の人のやっていることや言葉は、素直に受け止められるんですね。そうでないとお説教になってしまいますから。親子で来て、自由に観て自由に考えて、帰りに「親孝行ってほかにどんなことがある?」とか話しながら帰る。それで親子の会話が増えればいいなと思います。

劇場は素直になれる場でもあります。あるとき、見るからに不良っぽい男子高校生が、上演後に「涙って感動する時にも出るんですね」と言ったのです。「そんなこと、初めて知ったの?」という驚きとともに、演劇によって素直な気持ちになれたんだなと、手ごたえも感じました。

時代は変わっていきますが、何が一番お客さまの心に響くかを考えると、それはやはりことばなのです。そのことばに音楽を加えると、より響きます。わたしたちはそこをはずさないでやっていこうと決めたのですが、そんな折に、マンガ家であり絵本作家のやなせたかしさんに出会い、やなせ先生の作品をミュージカルとして上演するようになりました。東日本大震災後には、陸前高田市の奇跡の一本松をテーマにしたミュージカル「松の木の歌4部作」を各地で公演したり、先生の詩を朗読して、地域のFM局の方にレクチャーしたりすることもありました。

どこからそんなエネルギーが出てくるかって?自然とエネルギーが出てきちゃうんです。「やらなきゃいけないな、うん、やりたい、やろう!」と思うんです。うーん、使命感っていうより「自分がやりたいな」と思うんです。これを伝えたい、そうしたらみんなが元気になるなって。やなせ先生は「よろこばせることがよろこび」と、表現してくださいましたが、そのとおりかもしれません。

思いで雰囲気を拡げるのが役者の仕事。劇場という空間で燃焼して自分の言うことをしっかり伝える。その役者が出したエネルギーに共感すると、劇場はその色に染まります。それは役者たちへのたったひとつのごほうびでもあるんです。

稲垣さんから子育て世代へのメッセージとは?

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