OB・OGインタビュー
Catch the Dream - 夢をかなえる力

2021/11/19更新

Vol.083

映画監督
大川史織さん  後編

「楽しい」を真ん中に
やりたいことを全力で続けていれば
出会いを手繰り寄せられる

大川 史織 (おおかわ しおり)

神奈川県生まれ。2006年に第9代高校生平和大使の旅で、アウシュヴィッツ博物館公式ガイド中谷剛さんのツアーに感銘を受ける。2007年、日本統治や被爆の歴史のあるマーシャル諸島で聞いた日本語の歌に心奪われ、2011年慶應義塾大学法学部政治学科卒業後にマーシャルへ移住。ドキュメンタリー映画『タリナイ』(2018年)で初監督、編著書『マーシャル、父の戦場 ――ある日本兵の日記をめぐる歴史実践』(みずき書林)とともに、山本美香記念国際ジャーナリスト賞・奨励賞受賞。そのほかの編著書に『なぜ戦争をえがくのか ――戦争を知らない表現者たちの歴史実践』(みずき書林)。

マーシャル諸島で戦没した父を持つ74歳の「息子」の慰霊の旅に同行したドキュメンタリー映画『タリナイ』は、大林宣彦監督をして「フィロソフィーが映画になっている」と言わしめた秀逸な作品。監督を務めたのは大川史織さんです。映画からは「息子」や島の人々が大川さんに心を開いている様子が見て取れますが、実は大川さんはかつて人見知りがひどかったとか。人間関係が作れるようになったきっかけのひとつは公文式教室だったといいます。なぜマーシャル諸島へ行き映画を制作したのか、出会いに恵まれたこれまでの道のりを振り返りつつ、映像という手段をとり続ける理由などについてうかがいました。

問いや対話を生み出すツールとしての映像

大川史織さん

高3の夏に、高校生平和大使としてスイス・ジュネーブの国連欧州本部を訪問後、アウシュヴィッツ博物館へ行きました。そこで、唯一の日本人公式ガイド中谷剛さんのツアーに感銘を受けました。ホロコーストは過去の出来事と思っていたのですが、中谷さんの話を聞いていると、未来にも起こりうる可能性があるのだと感じました。離れた世界で起きた過去の話ではなく、今私たちが日本で暮らしている日常と地続きなのだと。一見、無関係に見えることを注意深く観察すると、繋がりが見えてきます。歴史は、過去のことではないと思いました。

また、非体験者でありながらポーランド語を学び、現地で生活者となった上で、日本から来た人とのパイプ役を担う中谷さんのような存在が、とても重要だと思いました。

それで「私もつなぐ人になりたい」と、祖父母は知っているけれど、父と母は知らなかったマーシャル諸島を高3の終わりに訪れました。そのときは映画にすることは考えず、親しい人に見せるつもりでカメラを回していました。

慶応大学法学部政治学科へ進学すると、国際社会学が専門でオーストラリアの多文化共生を研究している塩原良和先生のゼミに入りました。それまでは座学で学ぶ授業が多かったのですが、フィールドワークを通して「社会のことを知るのが楽しい」という感覚を取り戻せました。

ゼミ生は、外国にルーツを持つ多国籍の子どもたちが学び合う川崎市の施設に、学習支援という形で通いました。互いを知るツールとして映像作品を一緒に作り、発表する機会もありました。

映画にする以前のことですが、マーシャルの人が日本語の歌を歌う映像を友人に見せると、さまざまな反応が返ってきました。ウクレレの音色や歌の響き、表情を映像は複雑なまま伝えます。マーシャルを伝える上で、視覚と聴覚、双方で日本とのつながりを感じられ、問いや対話を生み出すツールとしても、映像表現は相性がいいと思いました。

大学卒業後、マーシャルに住むことを決めたきっかけとなったのは、塩原先生の課題図書『ラディカル・オーラル・ヒストリー』を読んだことです。歴史のおもしろさを広げてくれたと同時に、オーストラリアの先住民アボリジニについての書籍でしたが、私はマーシャルで出会った人々に重ねながら読んでいました。当時は就職活動の時期でしたが、就活ができなくなるほど衝撃を受けました。「ああ、読めてよかった」という読書体験では終わらせられない…と、大学院に進み、映像でマーシャルとつながりたいと考えました。

一方で、マーシャルについて卒論を書いていると、想像以上に文献資料が少ないことに気づきました。2011年の2月末から、今度はひとりで3週間の旅程でマーシャルへ行き、大学院進学も含め次の計画を練ることにしました。ところが島に滞在しているうちに、「マーシャルで働いて暮らそう」と決意し、家族にメールしました。その翌日、東日本大震災が発生。帰国することができず、滞在を延ばすことに。結果、延長期間に現地で生活する準備を進めることができました。

「私自身の再生の旅」とは

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