学習療法と筋トレマシンで頭と体を鍛える

「おはようございます」
朝9時30分、送迎の車から続々と利用者の皆さんが入室してきます。
取材に訪れた日は、男性8人、女性4人が通所。朝の挨拶や体操が終わると、学習療法を行う組と筋トレマシンを行う組に分かれ、交代しながら全員が頭と体のプログラムを行います。利用者の皆さんは、職員の声がけにより、慣れた様子でそれぞれのやるべきことに取り組みます。
施設オープンと同時に学習療法を導入
「元気セミナーやまぼうし」は、コロナ禍の2020年8月にオープン。当初から学習療法を導入しています。導入の経緯について、運営会社であるシルバーサポート株式会社社長の八木さんに聞きました。

「2019年頃、シルバーサポートの5つ目のデイサービスとして、認知症と診断されて初めてデイサービスを利用しようとする方が通える“入門的な”施設の開設を考えていました。何か良いプログラムはないかと、インターネットで『認知症』『学習プログラム』を検索していたところ、KUMONの学習療法を知り、早速メールで問い合わせました」
「想定するご利用者さんのためにも、デイサービスの仕組みをきちんと準備した状態でスタートさせたかったので、学習療法についても職員の配置などを様々シミュレーションして考えました。当初は週5日半日デイを2回転だったので、送迎が2回あり、職員のやりくりが大変でしたが、新施設立ち上げから一緒に考えてくれる2名の職員がいてくれたので、チームで進めることができました」
学習療法導入後の手応え
管理者の金澤さんに、学習療法導入後の手応えについて聞きました。

「通常、デイサービスでは、30分ご利用者さんと職員が向き合う時間というのはなかなか取れないのですが、学習療法は、ご利用者さんにとって、自分だけを見て話を聞いてもらえる時間になっています」
「送迎時などにご家族に家庭での様子をうかがうと、『教材を読むことによって、家でも新聞を読むようになった』『日めくりカレンダーをめくれるようになった』『施設で鉛筆を持って字を書いていることを知り、歯ブラシを持たせてみたら、自分で歯みがきができた』などとうれしい声をいただきます」
「職員にとってもご利用者さんを知ることができる大切な時間になっています。やまぼうしは認知症対応型の施設なのですが、ご利用者さんが長く通っていると、できなくなることが明らかに増えてくるんです。しかし学習療法はできることを認めてほめるので、ご利用者さんのちょっとした変化に気づく力が磨かれてきているように思います」
「やまぼうしではご利用者さん全員に学習していただいています。職員も全員が支援に入っているので、すぐに情報共有ができ、ケア方針やサービスの統一にもつながっています。やまぼうしの施設は元々職員同士の仲が良いので、施設の雰囲気が明るく、自然とご利用者さん同士も仲が良いんです。明るくて安心して過ごせる場を心がけているので、それが伝わって、ご利用者さんも楽しく通ってくださり、お休みも本当に少ないんですよ」
スタッフから見たご利用者の変化
開所当初からのスタッフである勝田さんは、最初、研修で見たビデオのように学習をスムーズに進められるか不安だったそうですが、次第に手ごたえを感じるようになったといいます。学習療法を始めてから感じる、ご利用者の変化を聞きました。

「人と関わるのが苦手という方が、学習療法を始めてからやる気が出てきたり、今まではスタッフと1対1でしか話をしなかった方が、ご利用者さん同士や職員を交えて3人でお話できるようになったりしています。ほかにデイサービスがない日にも学習療法をしたいと宿題を持ち帰って、ご自分で1日のスケジュールに組み込んで毎日学習している方もいらっしゃるんですよ」
勝田さんにご利用者から言われてうれしい言葉、日頃心掛けていることを聞きました。
「KUMONが楽しかったよ、ありがとうと言われると嬉しいですね。笑顔で過ごしてもらえるように、コミュニケーションにつながるような声かけを心がけています。ご利用者さんには、ここで楽しみを知って、ほかのことにもチャレンジしたいと思えるようになってもらえたらいいなと思います」
ご家族に聞く、学習療法と施設のよさ
元気セミナーやまぼうしに4年通う、古田定雄さんのご家族にお話を聞きました。

「やまぼうしさんは施設の出入り口を施錠しておらず、閉鎖的ではなかったところが、お世話になる決め手でした。送迎の際に、その日できたことについて報告をしてくださったり、認知症のことや夫への接し方について教えてもらったりしています。おかげさまで私の夫に対する対応の仕方が変わり、本人の負担も減ってきていると思います。また、家族だけでは連れていけない場所に連れていってくれて、タイムリーに写真も使って報告してくださるのは、とてもありがたいです」
「学習療法の効果であるかどうかは比較ができないので難しいのですが、先日、銀行で書類に署名をしないといけないことがあり、夫は躊躇しながらも1か所書くことができました。学習療法では教材に名前を書いているので、その効果なのではと思います。認知症の診断を受けて6年になりますが、できることの内容は変わっているものの、今も要介護1で維持できているのは、週4~5回通っているデイサービスのおかげだと思っています」
学習療法をご家族への状況説明に
認知症のご利用者に加えて、ご家族へのサポートも手厚く行っている、元気セミナーやまぼうし。管理者の金澤さんは、学習療法をご家族への状況説明にも役立てていると話します。

コミュニケーションも学習療法の一部
「ご家族はご利用者さんの元気な頃の記憶があるので、できないことが増えてくると『なぜできないのか』と今の状況を受け入れられない場合があります。学習療法の様子を見ていただくと、今のご本人の状況を客観的に、かつ前向きな気持ちでご理解いただけるようになります」
「定期的に実施しているご利用者さんの前頭葉機能検査(FAB)と認知機能検査(MMSE)の結果もご家族へフィードバックしています。認知機能検査はどうしても加齢とともに緩やかに下がってしまいますが、前頭葉機能検査はほぼ全員が向上するので、日々の取り組みに確かな手ごたえを感じています」

社会性の向上、思考力・記憶力の向上、
感情コントロールの向上が期待されます。
「地域の方が気軽に立ち寄って、認知症の不安がある方やご家族が交流できる場」「ご家族・地域に信頼され、ここがあってよかったと思ってもらえる施設」を目指す、元気セミナーやまぼうし。
KUMONは年齢を問わず、すべての人の可能性を引き出せるよう、全国の学習療法に携わる方々とともに、これからも取り組んでまいります。
学習療法導入施設一覧はこちら
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認知症対応型通所介護 元気セミナーやまぼうし
■定員12名…月・木(午前・午後の二部制による半日デイ)、火・水・金(一日デイ)
■スタッフ9名
■学習療法導入時期 2020年8月(施設オープンと同時)
■学習療法学習者50名(全員学習、デイサービス利用日、一部宿題持ち帰り)
関連リンク ベトナム人技能実習生が学習療法実践士に|KUMON now! KUMONレポート-学習療法デイサービス編(動画紹介)|KUMON now! 「学習療法」を施設に活かす|KUMON now! 学習療法の起こり(動画紹介)|KUMON now! シルバーサポート株式会社 学習療法センター