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Vol.266 2018.07.24

千葉県白井市で楽しく認知症予防

市民主体だからこそ生まれる効果

「白井脳いきいき教室」は、高齢者の認知症予防や仲間づくりの場として10年以上にわたってNPO法人白井市ボランティア連絡協議会が運営しており、行政との綿密な連携によって行われているモデル事例として注目されています。教室の成果、そして教室に通われている受講者の方々の感想をうかがいました。

目次

川島隆太教授のもと“裏付け”があったからこその安心感

「脳の健康教室」は、東北大学の川島隆太教授をリーダーとする研究者たちと社会福祉法人道海永寿会、公文教育研究会による共同研究の結果により誕生したプログラムを活用して、地域のシニア世代のための「脳の健康づくり」を行う教室です。介護予防事業に力を入れている千葉県白井市では「白井脳いきいき教室」と呼ばれ、認知症予防だけでなく、人を元気にする場となっています。

千葉県白井市で楽しく認知症予防

「白井脳いきいき教室」の運営を担うのは長年、地域福祉活動を行っているNPO法人白井市ボランティア連絡協議会。2006年7月に同協議会の自主事業としてスタートし、2009年から白井市の委託事業となっています。教室を開講した当時のことについて、ボランティア連絡協議会の鶴岡会長はこう振り返ります。
「東北大学の川島先生たちの研究によって、読み書き・計算、コミュニケーションが脳機能の維持・改善に効果があるという裏付けを示せたことが本当に大きかったですね。私たちにとってとても心強かったですし、みなさんにも安心して提供することができました」

教室成功のカギは受講者とサポーターの相互作用

千葉県白井市で楽しく認知症予防

週に1回、白井市保健福祉センターで開催される「白井脳いきいき教室」。受講者は最初に市が考案した介護予防体操「梨トレ体操」を行い、体と心をほぐした後にボランティアの教室サポーター1名と受講者2名が一組になって、読み書き・計算のプリント学習とすうじ盤に取り掛かります。その後はサポーターと受講者の3人で読み書き教材などを題材として楽しくコミュニケーションをするという30分間が基本のプログラム。前後の時間には、懇談コーナーで受講者同士が趣味の作品作りを披露したり、他の活動へお誘いしたりと仲間づくりの場となっています。

学習者が「いきいき」と教室に通われている様子は、見た目の変化にも表れています。最初は自宅にいる時と同じようなラフな服装だった方も、2回目、3回目と通ううちに、どんどんオシャレになっていき、より一層、表情が明るくなっていくのだそうです。

一方、教室サポーターを務めるボランティアスタッフ31名にとっても社会参加の貴重な場となっていると前述の鶴岡会長は語ります。
「この教室でのボランティアをきっかけに、市民大学を受講したり、介護予防推進のグループを立ち上げて、各地で開催されるサロンで講師役をしたりと、ご活躍の場を広げている方が少なくありません。受講者の方々を支援しているだけでなく、私たちも学ぶことが多いんです」

市民が主体の介護予防活動とは?

“人を元気にする源は人”を実証する白井市

千葉県白井市で楽しく認知症予防

「白井脳いきいき教室」について白井市高齢者福祉課の矢野保健師にお話を聞いてみたところ、10年以上の長きにわたって教室が盛況であり続け、効果も生まれている背景には、運営体制があると言います。
「担い手の中心も市民であるということが非常に大きな意味を持っているのではないかと思います。従来のスタイルではどうしても“指導者”と“受講者”という上下関係になりがちですが、同じ市民同士では共に支え合う身近な存在となっています。介護予防活動に携わっていて感じているのは、人を元気にするのは、やはり人なのだということ。そういう点において、白井市の教室ではボランティアさんたちの熱意がご受講者の元気にもつながっていると思います」

千葉県白井市で楽しく認知症予防

また、開講当時より教室サポーターを務める佐藤さんは、受講者の立場から行政との連携の大切さについて答えてくれました。
「白井市からの委託事業という点も高齢者にとって安心感・信頼感につながっていると感じています。市の高齢者福祉課が募集しているからこそ、皆さん安心して応募してこられているのではないでしょうか」
白井市の要介護認定率はおよそ12%(2018年4月現在)。全国平均の18%に比べ低く抑えられています。白井市でも高齢者の人数は増加し続けていますが、今後も介護認定率の上昇に歯止めをかける事業として「白井脳いきいき教室」に期待が寄せられています。

週に一度の教室と宿題が生み出す生活のリズム感

千葉県白井市で楽しく認知症予防

「白井脳いきいき教室」に参加されていた3名の方にも、インタビューをしました。お一人目は、今年5月から通われている福島さん(76)。
―― 教室に通うようになって、いかがですか?
福島さん: 「明日は水曜日だから教室に行く日だな」とか「この時間は宿題をやらなくちゃ」というふうに、生活にリズム感が出てきました。毎朝9時に宿題を終えてから、家事をするというのが日課になりました。
―― 教室のどんなところが気に入っていますか?
福島さん: 1人でもお友だちができればいいなと思っていたのですが、1日目からお友だちができ、教室が終わった後、そのまま一緒にお茶に行きました。先週なんか7人でお茶に行ったんです。サポーターさんとも仲良くさせてもらっていて、白内障の手術の後に教室に来たら、向こうから「良かったねぇ」って来てくれて、ハイタッチで迎えてくれました。
―― ご家族からはどんな言葉をかけられましたか?
福島さん: 娘からは「楽しく通っていて、いいねぇ」と言われています。実は娘に「滑舌が悪くなってきたかな」と言われたことがありまして、宿題のプリントを読む時には、意識して読むようにしているんです。いいリハビリになっているなと思っています。

千葉県白井市で楽しく認知症予防

お二人目は、木村さん(75)。以前から同じ白井市保健福祉センターの体操教室に通われている木村さんは、今年5月から「白井脳いきいき教室」も受講するようになりました。
―― 読み書きや計算の学習はいかがですか?
木村さん: 計算は嫌いではないので、楽しいですね。タイムを計ったりするのも、目標になっていいなと思っています。
―― ご自身に何か変化は感じられていますか?
木村さん: 最近ちょっと忘れっぽくなっていましたが、この教室に通うようになって少し良くなってきたかなと思います。妻からも「楽しそうでいいね」と言われています。

千葉県白井市で楽しく認知症予防

3人目は、今月に90歳になった田中さん。2009年から通われている田中さんは、10年目を迎えました。
―― この教室はどのようにして知ったのでしょうか?
田中さん: 主人を亡くして自宅に閉じこもるような生活をしていた時に、この教室のボランティアをしていた友人が誘ってくれたんです。最初は外に出て人に会うのが嫌で、ためらっていたのですが、せっかく友人が心配して親切にしてくれたのに断るのは悪いなと思って教室に行ってみることにしました。そしたら皆さん、とてもいい方ばかりで。なにより私よりも若いお友だちができたことで、とても楽しい時間を過ごせることが嬉しいですね。
―― 教室に通うようになって、何か変化はありましたか?
田中さん: いきいき教室をきっかけに、ほかのサークルにも行くようになったんです。誘ってくれた友人には、とても感謝しています。

関連リンク「脳の健康教室」はどんな「教室」?|KUMON now!学習療法センター公式サイト

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