江戸の「子宝思想」を今に伝える
くもん子ども文化研究史料

KUMONが所蔵する「子ども文化研究史料」を紹介するサイト「くもん子ども浮世絵ミュージアム」が、このたび12年ぶりにリニューアルオープンしました。
この新サイトでは従来の浮世絵作品のデータベース検索に加え、浮世絵以外の教育や子どもにまつわる書籍や工芸品のデータベースも公開。特に書籍類については、立命館アートリサーチ・センターのご協力により、書籍の全ページ画像も閲覧することが可能となり、これまで以上に、様々な分野での活用が期待されます。
子ども向けコンテンツ
「浮世絵ってなぁに」

このたび新設されたのが、子ども向けコンテンツ「浮世絵ってなぁに」です。
最近ではテレビドラマで江戸時代の版元・蔦屋重三郎が取り上げられるなど、社会における浮世絵への注目度はますます高まっています。しかし小中学校の教科書で取り上げられる浮世絵の知識はほんのわずか。ドラマや展覧会などで浮世絵に興味を持った子どもたちが、学校の教科書に掲載されているような断片的な浮世絵の知識を、より広い興味と深い学びにつなげることをコンセプトとして、この「浮世絵ってなぁに」は制作されました。
「その1: 浮世絵の歴史」「その2: 浮世絵ってどうやってできるの?」「その3: 有名な浮世絵師」では、浮世絵に関する基礎的な知識をわかりやすく学ぶことができますので、子どもたちの調べ学習にピッタリです。
また「その4: つくってみよう!遊べる浮世絵」は、江戸時代の子どもたちがペーパークラフトとして遊んでいた浮世絵「おもちゃ絵」を実際に遊ぶコーナー。印刷用の浮世絵画像データと遊び方の解説動画が用意されており、小さなお子さまでも親御さんと一緒に、浮世絵を「体験」することができます。
そして「その5: 藤澤紫先生の浮世絵と遊ぼう」は48本の「くもん浮世絵コレクション」作品の解説記事で、各作品に子ども向けと大人向けの解説が用意されています。執筆されたのは藤澤紫先生(國學院大學教授、国際浮世絵学会常任理事)です。藤澤先生は、『遊べる浮世絵 体験版・江戸文化入門』(東京書籍)や『絵で見て楽しい!はじめての浮世絵』(共著・スバル社)のご執筆や、NHK Eテレ『EDO-LIFE』の監修など、浮世絵の魅力を幅広く伝える活動をされています。
すべては子どもたちの
未来のために

KUMONによる子ども文化研究史料の収集は1986年に始まりました。1980年代前半、日本においては家庭内暴力や校内暴力のニュースが連日報じられるなど、子どもたちを取り巻く環境は危機的な状況にありました。従来の教育や子育てのあり方が大きな転換を迫られる中、これらの問題に取り組むべく、KUMONは1986年に「くもん子ども研究所」(理事長:公文毅、2005年まで活動)を設立。その活動テーマの一つとして取り組んだのが、江戸子ども文化研究活動でした。浮世絵という絵画史料を通して、江戸時代の子どもの生活や子育ての様子などを研究することで、文献史料ではわからなかった近世の子ども観を理解し、現代の子どもにまつわる様々な問題の解決のヒントを見出そうとしたのです。
現在KUMONが所蔵する「子ども文化研究史料」は、「子ども浮世絵」のほかにも寺子屋の教科書とも言える往来物、そして玩具や工芸品など約3200点。なかでも1700点余りにのぼる「くもん子ども浮世絵コレクション」は、世界で唯一無二のコレクションとして知られており、現在も教育や育児、精神科学などさまざまな学問分野における研究素材として活用される一方、書籍や展覧会などを通じ、その収集・研究の成果を広く社会に還元しています。
浮世絵に描かれた生き生きとして可愛らしい子どもたちの様子からは、江戸の社会がいかに子どもを大切にしてきたかがよく伝わってきます。この「くもん浮世絵ミュージアム」が多くの方々にとって、浮世絵を楽しみ、子どもの成長や教育について考えるきっかけとなることを願っています。
関連リンク くもん子ども浮世絵ミュージアム リニューアルオープン|プレスリリース KUMONレポート-子ども文化史料編|KUMON now! 國學院大學文学部哲学科教授 藤澤紫先生|KUMON now! 往来物研究家 小泉吉永先生|KUMON now! くもん子ども浮世絵ミュージアム 立命館大学アート・リサーチセンター