公文式は個人別・能力別の学習法ですから、いわゆる一斉授業の形態はとっていません。
公文式では同じ年齢・学年であっても、それぞれがその時点の能力に応じて、それぞれの「ちょうど」の内容を個別に学習するわけですが、一斉授業では、この「ちょうどの学習」を実現することが困難だからです。
ですから、公文式は自習が中心の学習法です。
自習で勉強すると、わからないところやできないところがあれば先に進めません。どこができないかがはっきりすれば、それぞれの必要に応じた十分な練習をして、学力を定着させながら進んでいくことができます。特に「読み、書き、計算」という知的技能の修得では、必要十分な練習を重ねることが不可欠です。一方、一斉授業のような方式で、受け身で教わるだけで十分に練習することもなく先に進んでいくと、いつの間にか「わかっているつもりなのに、やってみたら少しもできない」ということが少なくないのです。
公文式では、スモールステップで緻密に構成された教材によって、子どもが自習できていくように指導します。もちろん、学習状態を見て教えるべきところ、例えば新しい学習課題の導入部分などはていねいに教えます。しかし、公文式は、それ以前の段階の学力を十分に定着させてから次の段階に進むので、教えるのは非常に少なくてすみます。指導者はむしろ教えすぎることによって、子どもの興味の芽をつんでしまうことに気をつけるようにしています。
全ての学びの基盤である「読み、書き、計算」において、自在に使いこなせる知的技術を身につけ、その方法を知っていさえすれば、自分が必要とする新しい領域についても自ら挑戦し、自ら学び、理解を深めていくことが可能になります。「いちいち教えられなくても、自分の力だけで、まだ習っていないところも進んでいける」という体験が自信につながり、「もっと先へ」という意欲や挑戦力が養われます。そこで養われた自信、意欲、挑戦力などが、自立して生きていく源である「自らを恃む力」となっていくものと考えます。
*このコラムは、1999年の広報誌『文』に掲載した記事の引用です。
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