前回、公文式では日々100点を積み重ねながら学習を進めていくと述べました。
自分自身の力で100点に仕上げていくことで、さらに上の内容に挑戦しようとする意欲が育まれるからです。
ところで、「なぜ公文式では100点を取ってもまた同じところを学習(復習)させるのですか」という質問を受けることがあります。一口に100点といっても、必死にがんばって時間をかけて取った100点もあれば、余裕をもって短時間でサッサッとできた100点もあります。その段階だけに限れば同じ100点に見えるかもしれませんが、学習はさらに高いところへ高いところへと進むことを考えて、必要な力をつけることが大切です。
では、どういう状態なら先へ進めて、どういう状態の場合に復習すればいいのでしょうか。一般に、家庭や学校ではそれを見極める適切な基準がありません。そのために、子どもに無理をさせたり、あるいは必要のない、くり返し学習をさせて無駄足を踏ませていることも少なくないのです。公文式では、そのような無理や無駄をしないように、学力の程度と定着度をチェックする基準を設けています。それが「標準完成時間」です。
ある段階の教材を仕上げる時間を、たとえば2分~4分と設定しています。この場合、その段階の問題の内容と量から見て、その時間内で教材1枚の問題を解き終えることが、次の教材に安心して進める力がついたと言える目安にしているのです。
同じ100点でも、くり返し練習するうちに時間は必ず短縮してきます。学習のスピードが速まるということは、その段階までの学力としての知的技術を自分のものとして身につけてきたということを意味します。その技術をすばやく正確に駆使することによって、ラクにできるようになるので、ていねいに解いていても、結果として時間が短くてすむようになるのです。
標準完成時間はx分~y分と幅を持たせてあり、「x分以下なら先へ進める」、「y分以上なら復習する」、「その間の場合は、その子どもの状態を総合的に判断して指導者が決定する」ことにしています。ただし、この完成時間はあくまで大原則としての「標準」で、完成時間そのものを守ることが目的ではありません。ですから、場合によってはx分以下でも復習することも、y分以上であっても進ませることもあります。それは、目標に向かっていかにスムーズに進んでいけるか、その道をいかに意欲を持って進ませていくかということを大切にしているからです。この点においても、公文式は個人別指導を徹底しています。
*このコラムは、1999年の広報誌『文』に掲載した記事の引用です。
関連リンク 誕生ストーリー 公文 公(くもん とおる)物語