「4技能」の日本の現状と今後の目標
2020年度から実施されていく次期学習指導要領。小・中学校では2018年度から先行実施が可能となっています。セミナーで向後秀明教授は、前職(文部科学省初等中等教育局教育課程課・国際教育課教科調査官)で学習指導要領の改訂に深く携わられたご経験をふまえ、「日本の英語教育改革への期待と指導者に求められること」についてお話くださいました。
文部科学省では「英語教育の在り方に関する有識者会議」での提言を受け、日本人の英語力について「今後10年間で世界標準、さらに、アジアのトップクラスを目指す」ことを目標に掲げています。英語力を測る際に指標となるのは、CEFR(※)という世界で導入されている言語能力の指標。文部科学省は、生徒が目指す英語力の具体的なゴールとして「高校の必履修科目(多くの高校生は1年次に履修)終了時点でCEFRのA2レベル、卒業段階でB1レベル」と示しています。
向後教授はまず、文部科学省が実施した平成27年度の高校3年生の「英語力調査(4技能テスト)」の結果を共有。「読む」、「聞く」はCEFRのA1(初級レベル)の上位にボリュームゾーンがあり、「書く」は8割強がA1、「話す」は約9割がA1という状況でした。また平成28年度の中学3年生の結果については、「書く」がA1上位に50%以上の生徒が入っているものの15%にあたる約15万人が0点、「話す」は約7割の生徒がA1下位です。総括すると、「国が中3の目標として設定したレベルに3年遅れで高校3年生がようやく到達しつつある」というのが日本の生徒の現状だということです。
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文部科学省HPより
こういった状況を踏まえながらも、向後教授からは「今後、中学生に対する全国学力・学習状況調査や高校生に対する大学入試の英語では、4技能テストが導入されます。学校で4技能がバランス良く総合的に指導され、評価も4技能評価になれば、日本の生徒の英語力は必ず上がっていきます。他の国にできて日本にだけできないということはありません」といった力強いお言葉がありました。
※CEFR
CEFR(「ヨーロッパ言語共通参照枠」)は、欧州評議会(Council of Europe)によって2001年に「ヨーロッパの言語教育の向上のために基盤を作ること」を目標に正式に公開された言語レベルの枠組みです。あらゆる言語を6つの段階(A1・A2・B1・B2・C1・C2)に分け、それぞれのレベルに言語機能に基づいた『Can Do Statements』によって、その言語を用いて「具体的に何ができるか」を示しています。CEFRは語学シラバスやカリキュラムの手引きの作成、学習指導教材の編集、外国語運用能力の評価のために、透明性が高く分かりやすい包括的な基盤を提供しています。