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Vol.221 2017.08.08

浮世絵に見る江戸時代の子どもたち

五感を駆使して
身体に滲み込むまでくり返す
「遊び」「学び」『生きる力』に通じる

時代とともに子どもの「遊び」は様相を変えていきますが、江戸時代の子どもにとって「遊び」はどんな意味を持っていたのでしょうか。おそらく当時は自然に囲まれ、子どもたちは木登りや川遊び、魚釣りや虫取りなど自然を相手にさまざまな経験を積みながら、友だちとの遊びを通して人との付き合い方や思いやりの心を育み、時には喧嘩をして仲直りや仲裁の仕方などを体験的に学んでいたものと思われます。また、子どもたちは遊びを伝承し、遊びを通して創造力を発揮し、新しい遊びを生み出していきました。当時の遊びを描いた浮世絵をみるとその豊富さに驚かされます。

目次

「子供遊び尽くし 春 夏 秋」の不思議

この浮世絵は公文教育研究会が所蔵している歌川芳虎が描いた「尽くし絵」という種類の浮世絵です。画題は「子供遊び尽くし 春 夏 秋」。四季折々のさまざまな遊びを右から順に「春」、「夏」、「秋から冬」と図鑑のように絵の描写によって紹介しています。この浮世絵を通して、当時の様子を見てみましょう。

浮世絵
子供遊び尽くし 春 夏 秋 歌川 芳虎 嘉永頃(1848-1854)

この作品には「縄跳び」、「コマ回し」、「鬼ごっこ」、「蛍狩り」などの私たちにとっても馴染み深い遊びや、あまり見たことのない「ちんちんもがもが」、「小弓」、「どうどう巡り」、「子をとろ子とろ」、「ぼんぼん」、「神楽遊び」、「お馬」などの数多くの外遊びが所狭しと描かれています。おや?なぜか右上に寺子屋で学ぶ4人の寺子(生徒)が描かれています。「遊び尽くし」なのに・・・不思議に思いませんか。当時の寺子屋の「学び」が子どもたちにとってどんな意味があったのかが分かれば、その理由が見えてくるかもしれませんね。

寺子屋の学び


番匠往来(大工の教科書)天保2年

江戸時代の寺子屋は、手習(てならい)塾または手習所とも呼ばれ、庶民の子どもたちの「学びの場」として全国的に広がりました。入門の年齢に決まりはありませんが、7歳前後になると地元の寺子屋に入門し、10~11歳頃まで通っていたようです。寺子屋の師匠(先生)は寺子一人ひとりの将来の職業を見据え、能力に応じて個人別に直筆の手本を書いて与え、稽古(指導)をつけていました。

学び方の基本は、師匠の手本通りに「真似る」こと。「学び」という言葉は、「真似び(まねび)」から生まれたとも言われます。特に「書き」の練習においては師匠の手本をしっかり見ながら、手習草子(練習帳)が真っ黒になるまで何度も書いて文字や言葉、そして文章を覚えていきました。右に将来「大工」になるための教科書である「番匠往来」をあげましたが、左のページだけでも同じように書くためには、くり返して書く必然性を感じるのではないでしょうか。


4人の寺子たち

「子供遊び尽くし」の右上に描かれていた4人の寺子たちのうち、手前の寺子は往来物を一人で音読しているようです。これは素読(そどく)という学習法で、師匠に教えられた読み方を何度も真似て読むことで、暗誦(あんしょう)できるまで練習しました。その左には、江戸後期に寺子屋で広がった算盤で計算練習をしている姿も描かれています。

当時の子どもたちは12~13歳頃には、親と同じ仕事に就いたり、奉公に出されたりしますから、子どもたちにとっては寺子屋の数年間の学びすべてが一生涯の『生きる力』そのものだったのでしょう。それだけに、その学びは五感を駆使して身体に滲み込むまでくり返し行われたのではないでしょうか。当時の子どもたちにとって、「遊び」や「学び」はどちらも『生きる力』を身につけるために欠くことのできないものだったのですね。楽しい「遊び」ばかりに偏ることなく、「学び」も忘れてはならないという意味を込めて、「遊び尽くし」でありながらも寺子屋の「学び」が描かれたのかもしれません。

時代とともに子どもの生活も取り巻く環境も変化していきますが、江戸時代の子どもの遊びを描いた浮世絵の中に、今の子どもたちの育て方のヒントがあったのではなでしょうか。

関連リンクKUMONレポート-子ども文化史料編|KUMON now!トピックスくもん子ども浮世絵ミュージアム※WEBサイト「くもん子ども浮世絵ミュージアム」では、KUMONが所蔵する子ども浮世絵約1,800作品の画像を公開しています。日常生活や季節の行事の中で遊ぶ子どもの姿や、子どもをめぐる愛情豊かな場面、甲斐甲斐しく子どもの世話をする母親の姿など、子どもたちが家族や地域の大人たちに大切に育てられ、成長していった様子が生き生きと描かれた作品を自由に閲覧することができます。上記関連リンクからぜひご覧ください。

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