*LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーを指します
公文国際学園での模擬国連
模擬国連とは、参加者一人ひとりが世界各国の大使の立場となり、国連の会議と同じ形式で国際問題を議論するもの。国際政治の仕組みを理解し、国際問題の解決策を考える過程を体験できることから、教育プログラムとしても評価が高く、現在では世界中の大学・高校で取り組まれている活動です。
公文国際学園では、オランダ・ハーグで開催される世界最大規模の「模擬国連」に参加した生徒が「みずからの体験をもっと多くの生徒に体感してほしい」と考え、11年前に校内行事として始まりました。2012年度からは、日程を分けて日本語での実施とは別に、すべてのプログラムを英語のみで実施する模擬国連も開催しています。
LGBTをめぐって熱い議論
模擬国連の開会を宣言する 実行委員長・平野さん |
今年のテーマは「ジェンダー~LGBTコミュニティの保護と社会進出~」。テーマ決めから開催までの準備、当日の運営は、すべて有志生徒たちからなる実行委員会が担います。実行委員長の平野さん(現在高3)は、今年のテーマを選んだ理由を次のように語ってくれました。
「主な理由は2つ。LGBTに関する議論は、アメリカでの同性婚合法化などタイムリーな話題だったということと、宗教や歴史、文化などによって意見が異なり議論が活発になると考えたからです」
実際、議論や交渉は白熱。模擬国連は、自国の立場を表明する会議冒頭の「意見表明演説」からスタートします。その後、決議案を書き上げるために交渉を重ねる「ロビー活動」の時間は、LGBTに寛容な立場、認めない立場など、スタンスが似ている国々がグループを作り、決議案を練っていきます。その間にも、決議案に対する支持者を少しでも増やすため、個別にアプローチをして仲間を増やす働きかけが行われます。そのためには、自国だけでなく他国のスタンスを事前に研究し、どの国に働きかけて交渉を進めるか戦略を考える必要があります。
途中、LGBTに反対の立場の国の代表をした生徒が、議長団の一人に「個人としての意見はまったく反映してはいけないのか?」と疑問を投げかける一幕もあり、個人の感覚や意見を抑え、その国の代表になりきる難しさを感じた参加者もいたようです。
昼食をはさんで午後はいよいよ決議案を採決するセッションが行われます。提出された3つの決議案に対して、それぞれの案を提出した立場からの意見表明や質疑応答などのディベートを経て、いよいよ採決。数時間の議論を経てまとめられた決議案の一部に文言の修正が加えられ、賛成多数で可決される結果となりました。
生徒たちの将来の夢
左から実行委員会の副委員長・荒井さん、 委員長・平野さん、副委員長・勝又さん |
この模擬国連を担当している公文国際学園の志賀先生は、「“国際”を冠している学校として、この模擬国連は教育活動の大きな柱の一つでもあります。英語を使うだけでなく、いろいろな国の視点に立って国際問題について考える貴重な機会となっています」とおっしゃいます。
有志の生徒たちが中心になって作り上げる模擬国連を、先生はどのようにサポートしているのでしょうか?志賀先生は「実行委員会の生徒たちは意欲が高く、基本的には準備段階から生徒たち自身でどんどん進めていきます。学校では、普段の授業も含め、模擬国連以外にもさまざまな行事や活動がありますので、そのあたりとのバランスを意識するようにアドバイスをしてきました」と語ります。
このように主体的に活動する公文国際学園の生徒たち。最後に、実行委員会の3人に、将来の夢について聞いてみました。副委員長の荒井さんは、「今は、景観を通した地域振興に興味があります」とのこと。同じく副委員長の勝又さん「将来はメディアに携わりたいと思っています。ジャーナリズムなどを学んで、さまざまな観点から物事を見られるようになりたい」と語ってくれました。実行委員長の平野さんは、「模擬国連を通して、女性の教育と権利について考えるようになりました。将来はそういった課題に携わるNGOやユニセフなどで仕事をしたい」と考えているそうです。模擬国連の活動を通して、視野が広がり、将来の道も広がっていく。これからの生徒たちの成長が楽しみです。