なぜKUMONが学校を?
1962年、公文教育研究会創立から4年、創始者公文公は将来の展望を「当会今後の事業一覧」という形で発表しました。10項目からなる一覧の4つ目に位置する「私立学校設立(まず私立中学校設立)」。当時の公文は全国の教室数150、生徒数3,000人という小さな組織でした。それから約30年余の1993年4月、学校設立の夢は、公文国際学園中等部の開校という形で現実のものとなりました。その後、高等部を1996年に開校し、中高一貫の共学校となり、現在に至っています。
学校法人公文学園は、公文国際学園の他にも、のびてゆく幼稚園(大阪府高槻市)やスイス公文学園(スイス・レザン)を擁していますが、公文公はなぜ学校を創りたかったのでしょう。1993年に公文式教室の指導者向けに書かれた文章の中にその考えの一端が見られます。
「この学園は、一人ひとりの生徒に『ちょうど』の学習を与えていくことで、高い学力をつけ、人格を向上させて、自分自身で自分の課題を見つけ、それを解決していけるような力をつけていく場であります」。
公文公は、学年という枠にとらわれない「個人別」の教育を実現する場として、学校を設立しようと考えたのです。
自分で考え、判断し、行動してほしい
創立から22年。公文国際学園の目指す生徒像について、校長の梶原晃先生に聞いてみました。
「本校には制服も校則もありません。ルールから逸脱した生徒を指導するのではなく、生徒自身に『自分で考え、自分で判断し、自分で行動する』という姿勢を身につけてほしいからです。ルールを作ってしまうと、生徒はできるだけそれを守ろうとするので、失敗することはほとんどありません。生徒には失敗してもそこから伸びていける、そういう大人になってほしいと思っています。
また、『自立と自律を果たした18歳の大人に』を目標に、本校では体験を重視したさまざまな教科外活動を行っています。例えば、高校1年生たちはプロジェクトスタディーズと呼ばれる個人研究をします。生徒は自分が疑問に思ったことをテーマとして設定。それについて自分なりの仮説を立てて、自分なりの研究をして、自分なりの結論を出すことを目指しています。大学に入ってすぐに本格的な研究活動ができるような力をつけておいてやりたいのです」。
多少のことではへこたれない生徒たち
公文国際学園では公文式学習を導入し、学校の授業と両立することで相乗効果をねらっています。中1と中2の毎日20分の朝学習に加え、高校3年生までを対象とする週1回の放課後教室で学習をし、多くの最終教材修了生を輩出しています。梶原校長が、公文式学習の効果について次のように語ってくれました。
「公文式でしっかり学習習慣がついているので、高3になってから慌てて受験勉強を始めることはありません。時間管理能力がすごいんです。優先順位をつけ、きちんと片づけます。公文の高いレベルの教材に進んだ場合でも、毎日5枚継続して学習するのはもうできないけど、1週間30枚ならできる、と見通しを立て、それをやり遂げてきます。
また、公文式の学習を通して、生徒たちは多少のことではへこたれない力をつけています。ミスの訂正をするとき、いきなり消しゴムは使いません。自分のミスをすぐに消さずに、何が間違っていたのか探ろうとします。国語教材の場合、自分の間違った解答と本文を何回も見比べて、答えを書きあげます。教材の進度が高くなると、最初から100点にならないのは当たり前。失敗して当然です。こうして学習を継続してきた生徒は、直せば力がつく、いつかはできるようになるという確信を持つようになっています」。
学園独自の「進路学習」
やればできるという経験を積み重ねた生徒たちは、自分の将来のイメージが非常に具体的です。例えば、ある高校3年生の男子生徒は次のように語ります。
「中学2年生のときに受けた生物の授業で、生命の謎に興味を持つようになりました。大学は自分の興味のある生物や化学の講座が充実しているところを選びました。将来は、生命そのものの研究をして、遺伝病などの病気で苦しむ人を減らせるようになりたいです。薬の開発だけでなく、細胞レベルの研究をしてみたいと考えています」。
公文国際学園では、「進路指導」ではなく「進路学習」を推奨しているそうです。大学名にとらわれず、どの学部のどの学科に行って、自分が何を学びたいのかを考える。そして、研究室ではどの先生がどのような研究をして、どのような成果をあげているのか、調べられるだけ調べる。そうして、学園の生徒は「自分自身で自分の課題を見つけ、それを解決していけるような力」をつけて巣立っていきます。
関連リンク 公文国際学園公式サイト
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