公文式の「教材」「指導者」を見直すことからスタート
幼児ドリル改訂のプロジェクトを立ち上げたのは3年前の2011年のこと。実は、10年前に表紙のみの改訂は行っていましたが、その際には表紙だけで内容を変える必要はないと判断していました。しかし、子どもたちを取り巻く社会環境の変化、ICT(情報通信技術)を含む家庭学習の手段の増加などから、くもん出版のドリルとしての存在価値を見直すことにしました。
改訂のプロジェクトの活動は、お客様から感想を送っていただく愛読者ハガキを見直したり、公文式指導者へのインタビューなどから、あらためて公文式学習の成果を生み出す要素を分析することからはじまりました。
公文式学習は「教材」と「指導者」、そして「子どもたち」から成り立っています。公文式の「教材」には子どもの学習状況を詳細にモニターし、随時改訂を行っていくしくみがあります。しかし、くもん出版のドリルは、そこまでモニターが徹底できていただろうか、好評であることに甘え、リアルな子どもの変化を見ることから離れてはいなかっただろうかという視点で、その内容を見つめ直してみました。そして学習ステップ・内容・作業量などを徹底的に見直し、子どもたちがもっと楽しく学べるように、ラインナップの統合や改廃を行うなどして、シリーズの冊数も49冊から39冊に再構成しました。
ドリルにおける「指導者」の役割
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また、市販のドリルには「指導者」が存在しません。その子にとってちょうどいい教材を与えたり、なぜそこを学習するのかを説明するといった「教室での指導者の役割」は、ご家族、多くはお母さまやお父さまに担っていただくことになります。
そこで、ドリルを学ぶ子どもたちに大人がどのように学習をさせたらよいか、どのような声かけをしてあげたらよいかといった「学習アドバイス」を、これまでより格段に充実させ、ドリルの随所に見やすく配置しました。また、表紙には「このドリルを学習する前に身につけておきたい内容」→「このドリルで学習する内容」→「次に取り組むのにおすすめのドリル」がひと目でわかるよう、ステップ内容を記載しました。裏表紙には、どんなドリルを選んだらよいかを難易度順・年齢順に明示したツリーチャートも載せました。
また、これまで前半4色フルカラー・後半2色刷りというドリルが多かったのですが、「2色刷りのところから学習意欲が下がります」という愛読者ハガキのご意見から、すべてのドリルを全ページ・フルカラーに変更しました。
この改訂プロジェクトにかかわったドリルの担当編集者は言います。「今回、いちから壊して作り直そうと思ったが、やればやるほど、以前のドリルがいかに優れていたかを痛感した。しかし、壊そうとしたプロセスがあったからこそ、その価値を再確認することができた」と。
ドリルを通して“子どもたちの可能性”を体感してもらいたい
プロジェクト活動を進めていくなかで、くもん出版のドリルをご購入いただく理由として「KUMONのものだから(よいものだろう)」というKUMON全体のブランドに対する信頼があることがわかりました。
「“KUMONっていいよね”と言っていただける方を増やすことがイコール、ドリルを通して子どもたちの可能性を感じていただくこと」、そして、そのことがKUMON全体のブランド力をさらに高めていくはずと気づいたメンバーは、その仮説をもって書店の店頭で「ドリルの体験会」という場を設定しました。実際にお子さんにドリルを解いてもらい、できたところをほめ、それを保護者の方々に伝え共有したり、ご家庭で楽しく学習をすすめることができるようにちょっとしたアドバイスをしたところ、予想していなかった結果として、その店舗での月間売り上げが前年同月の倍に伸びました。
「うちの子にはまだこれはできないのでは?」と言うお母さまが「うちの子、こんなこともできるんですね!」と驚き喜んで帰っていかれる様子を見ながら、くもん出版の価値創造の原点は、子どもをきちんと見てそこから学ぶということであり、そして、それをくもん出版の社員全員が感じていかなければいけないのだと再確認したのでした。
これらの学びから、くもん出版では、2014年10月下旬から2015年3月にかけて、全社員が「くもん◯つけ隊」として書店に出向き、のべ100回の「幼児ドリル体験会」を行います。社員みずからが子どもたちにドリルを手渡し、保護者の方にKUMONを伝え、親しみや共感を高めることで、地域にKUMONファンを増やしていくことをめざしています。
※2015年度以降も「幼児ドリル体験会」は継続して実施していく予定です。
これからも、くもん出版は、子どもたちの成長と未来に役立つ商品づくりを通して、社会に貢献していきたいと考えています。