「この論文にとって英語教材制作者の方のお話やご意見がとても重要なのです」
2014年6月下旬、高校2年の女子生徒さんからメールが届きました。
※個人情報保護の観点から、個人が特定される情報は除外しています。
はじめまして、私は千葉県在住の私立高校2年生の杉本(仮名、以下同じ)と申します。お忙しいところ、突然のメールで申し訳ありません。いま私は、学校の履修科目のひとつである「個人研究課題」という課題で、高1の10月から1年をかけて論文の作成に取り組んでいます。論文のテーマは「公文式英語教材による先取り学習の有効性~小・中学生を対象とした、英検取得と英語力育成スピードの考察~」というものです。≪中略≫私が、公文の英語をテーマに選んだのは、実際に公文に通っていて教材がとても良いと思ったことと、これからもっと自分の英語力を高めて、将来の仕事に役立てたいという自己啓発のためです。≪以下続きますが後略します≫
このメールには論文の下書き原稿が添付されていましたが、そのレベルの高さに驚きました。下書き段階のものですが、高校2年生が作成したものとは思えませんでした。また、メールの最後にはこうも記されていました。「この論文にとって教材制作者の方のお話やご意見がとても重要なので、どうしてもお会いしたいのです」。思いのたけが綴られた“熱いメール”でした。
通常はこういったご希望をいただいても、諸々の事情からお受けできることのほうが少ないのですが、なんとかできないものかと、英語教材チームに論文の下書き原稿を見せ打診してみました。すると、「こんな熱心な生徒さんからの依頼なら、時間を作ってでもお会いしたい」(英語教材チーム・玉田)という回答。日程と時刻の調整にはけっこうな時間がかかりましたが、こうして杉本さんの英語教材制作者へのインタビュー取材が実現することになったのです。
回答する側がたじたじになる場面も
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8月下旬のある日、公文の大阪本社の一室に杉本さんはいました。電車と新幹線を乗り継ぎ、遠路はるばる千葉から大阪まで来たのです。英語教材チームの玉田といっしょに昼食をとり、ちょっとだけ緊張がほぐれたところで、約2時間におよぶ杉本さんのロングインタビュー取材がスタート。そのやりとりを一部分だけですがご紹介しましょう。
杉本さん「教材を制作するとき、いちばん大切にしているのはどんなことでしょうか?」
玉田「スラスラ解いてほしいというのは基本的なことですが、いつもいつも“この問題でほんとうによいのか?力がつくのか? もっと良い教材にしたい”と自問自答しながら教材制作に取り組んでいますし、どんなところでつまずくのかなど、常に生徒から学ぶようにもしています」
杉本さん「教材を改訂するのは、どんなときなのでしょうか?」
玉田「教室の先生方から生徒さんたちの学習の様子をよく聞いたり、指導データを細かく調べたりして、教材のどの部分でつまずきやすいのか、どの教材でやめる(退会)子が多いのかなどを分析し、その分析データやさまざまな情報をもとに改訂しています。改訂時期は随時ですね」
杉本さん「私は、公文式英語ではJⅠ教材(読み物教材)からが本当に重要なのだと思っています。その手前のIⅡ教材あたりで学習を終えてしまうのは、もったいないと思うのです。この考えは正しいですか?」
玉田「その通り、とてももったいないと思います。公文の英語は、高度な英文を自在に読みこなす読解力の養成を目指しています。その意味では、JⅠ以降の読み物教材に入ってこそ、それまでの学習の真価が発揮されると言えます。ただ、JⅠから先を学習するには、英文を読みこなすだけの基礎的な力を身に付けておく必要があるので、どうしてもGⅠ~IⅡまでは文法の学習要素が多くなります。そして、JⅠからはいよいよ読む楽しさ、物語の面白さを味わってもらいたい教材です。学習者のみなさんには、ぜひJⅠ以降まで頑張って続けてほしいですね」
杉本さん「教材の完成度を自己採点すると、何点くらいですか?」
玉田「100点満点で90点くらいかな。いつもその時点でのベストの教材を出しているので、本当は100点と言いたいところ。でも、リリースしてすぐにさらによいものを目指すために、改良すべき点が出てきます。マイナス10点はその分。公文には公(とおる)会長が遺した“『もっといいもの』はいつもある”という言葉があります。大切なのは、常に教室現場に学び、子どもたちに学びながら、より良い教材を追究し、教材を改訂していくことだと思っています。その意味では、完成度が100点になることはないでしょうね」
本質をついた質問や突っ込んだ質問もあり、答える側の玉田がたじたじとなる場面もありました。その内容や学習法も含め、教材をいろいろな角度から捉えていないと出てこない質問が多かったです。
「すべての子どもたちが高い英語力を育てられるような仕事に就きたい」
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インタビュー取材を終え、表情が少し和らいだ杉本さんに、こんどはこちらから感想をうかがってみました。
「すごく緊張してドキドキでしたが、直接お話が聞けてほんとうによかったです。公文の英語教材には英語力養成スピードを高める工夫があると思っていましたが、それが再確認できました。日本人全体の英語力向上の学習法としても活用できるのでは、とも感じました。今回のことを活かして、大学の4年間で高い英語力をつけて、将来はすべての子どもたちが高い英語力を育てられるような仕事に就きたいと思っています。本当にいい経験でした。ありがとうございました」と輝く笑顔で答えてくれました。そして、最後にこう話してくれました。
「きょうのインタビューにたどりつけたのは、学校の先生方や公文教室の先生からたくさんのアドバイスをいただき、何度も何度も支えてくださったからこそです。私ひとりでは、とてもここまで来れなかったと思います。心から感謝したいです。ありがとうございました」。
1年間をかけて書き上げる「個人課題研究」論文は、B5版で50ページにもなる長編とのこと。杉本さん、良い論文になるようがんばってくださいね。
【KUMON now!編集部からのお知らせ】
今回の杉本さんから教材制作者へのインタビュー取材は、「その様子をこのトピックスで記事として紹介させていただきたい」という編集部からの依頼を杉本さんと保護者の方にご承諾いただき実現した特別な対応です。
関連リンク 公文式の英語学習| 日本公文教育研究会