Unlocking the potential within you ―― 学び続ける人のそばに

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Vol.122 2026.08.04

編集者
森永 恵理子さん

<前編>

必要な人に、必要な言葉を届ける
読書で培った想像力を膨らませて
よりよい社会を作る役に立ちたい

編集者

森永 恵理子 (もりなが えりこ)

神奈川県出身。横浜市内の中学に在学中の2006年に「よこはま子ども国際平和スピーチコンテスト」に参加し、市長賞を受賞。ピースメッセンジャーとしてニューヨークの国連本部へ派遣され、国際問題に関心をもつと同時に、異文化を知り、伝えることへの意識が高まる。早稲田大学教育学部国語国文学科を卒業後、株式会社新潮社へ入社。営業、編集記者を経て、クリエイター支援を行うITベンチャー企業の株式会社クリーマへ転職し、ウェブメディアの編集長を務める。2024年1月からは、株式会社プレジデント社のカスタム出版を手掛ける部署にて、企業・自治体等の広報誌や書籍等の企画・編集を担当。二児の母でもある。

老舗の文芸出版社でキャリアを開始し、ITベンチャー企業を経て、現在はビジネス系出版社で編集者として活躍されている森永恵理子さん。「発信者の伝えたいことをどのような言葉で表現し、どうエッセンスを凝縮して読者に届けるか」が、編集の難しさであり面白さでもあるといいます。森永さんが編集の仕事につながる力を身につけた背景にあるのが、幼少期から本を読むことが大好きだったことと、KUMONで学習を続けてきたこと。
KUMONの学習を通して得たものや、編集という仕事を目指した理由、自分だけのキャリアの築き方などについて、伺いました。

目次

    編集は「価値ある言葉」を届ける仕事
    記者として事件を追う中で感じた重み

    現在は雑誌『PRESIDENT』やビジネス書籍などを発行するプレジデント社で編集者として働いています。新卒時には新潮社に就職し、文庫本の営業を経て、『週刊新潮』編集部へ。連載コラムの編集をするほか、記者として事件を追うこともありました。

    文芸編集の仕事は、世の中にしっかりアンテナを張って、時流にマッチしたトピックを語れる作家さんを発掘したり、この人にこういうことを書かせたら面白いんじゃないかと考えたりと、宝探しのような楽しさがあります。作家さんと二人三脚で創作する喜びを、会社員でいながら味わいやすい仕事です。

    週刊誌時代の資料の一例。大量の資料を準備して取材に臨みます
    週刊誌時代の資料の一例。大量の資料を準備して取材に臨みます

    記者の仕事は、世の中の誰も知らない情報を最初に知ることができる醍醐味がありますが、分刻みで行動することも多く、「今から大阪に行ってきて」と言われて新幹線に飛び乗り、翌日はそのまま沖縄へ……などといった長距離移動も当たり前でした。つらさもありましたが、仕事でこんなにアドレナリンが出ることはこの先ないのではと思うくらい、感情が揺さぶられる仕事でもありました。

    その中でもとくに忘れられない経験があります。ある事件の被害者のご友人に話を聞く機会がありました。親しい方を亡くしたばかりの方に取材をすることに対し、当時は迷いを感じており、おそるおそるお話を伺っていたのですが、その方がこのように言われたんです。「事件の前にトラブルがあって(被害者が)落ち込んでいたのを知っていて、心配していた。でも余計な口出しはしない方がいいかもと考え、放置してしまった。そうこうしているうちに事件が起きて、悲しい結果になってしまった。つらいけれど、メディアに話すことに決めたのは、“これからは堂々とおせっかいおばさんになろう”という自分への誓いです」と。

    他人の事情に踏み込まないことをよしとする世の中のムードがある中で、この方の言葉にはとても重みがあり、世間に届ける価値があると感じました。私自身もそれまで「面倒なことには首を突っ込みたくない」と思っていたのですが、それを聞いて「安全圏にこもるのではなく、思うことがあったらきちんと相手に伝えよう」と考えが改まりました。

    そのような仕事を通して、自分が思っている以上に世の中には様々な人がいて、多様な人の営みがある、と感じるようになりました。新潮社での仕事は好きでしたが、他業界から言葉やメディアを見るとまた世界が広がるのではと考え、クリーマというITベンチャー企業に転職。クリーマはクリエイターが作品を直接販売できる通販サイトを運営する会社で、私はウェブメディアの編集長として入社しました。

    取材中の様子。手書きでメモを残すことを習慣にしている
    取材中の様子。手書きでメモを残すことを習慣にしている

    出版社への就職活動をしている頃から、専業作家は生計を立てるのが大変だという話をよく聞いていました。これは小説家に限らず、すべてのジャンルの作り手にいえることだと思います。作家が専業で生活できる持続可能な仕組みを整えないと、当たり前に本を読んだり、文化を享受したりということをこの先の世代ができなくなるのでは?という危機感を抱いていたことも、転職理由のひとつです。クリエイター、広い意味での作家が、価値を認められ、対価を得られるようにするにはどうしたらいいか。そのヒントになるかもしれないと考えたんです。

    その後、産育休を取得した機会にキャリアを見つめ直し、より世の中との接点を増やしたいと考えて現在の会社に転職しました。今は自治体や企業の広報誌、書籍を作成する部署で編集者として働いています。具体的には、メディアに合った企画を立案して、誰に取材するかを決め、カメラマンやライターの手配をし、写真選びや原稿整理など一連のディレクションをするのが主な仕事です。素材を選んで形にしていく料理人のような面白さがあります。

    「やれば必ずできる」
    KUMONで得た確信が、今も自分を支えている

    森永 恵理子さん

    私は小さい頃から本が大好きで、それが今の仕事に就いたことにも影響しています。本好きになったのは母のおかげです。韓国出身の母は、留学中の日本で父と出会って結婚し、日本語がまだ不自由なうちに私を生みました。私が日本語で苦労しないようにと、母も一緒に勉強する感覚で絵本をたくさん読んでくれたんです。わが家のコミュニケーションの中心に、いつも絵本がありました。わからない言葉をまわりの人にたずねたり、意味を予想したりすることにワクワクしたのを覚えています。当時から未知のものや新しいもの、理解できないものに惹かれる子どもでした。

    やがて、私のほうが母よりもスラスラと日本語を読めるようになりました。「この子は本が好きらしい」と感じた母が知人に相談すると、公文式教室を薦められ、近所の教室に体験学習に行くことに。その教室の先生が、子どもの学びたいという気持ちを大切にされる方で、母は「ここならまわりと比較するのではなく、自分のペースで学びを追求できるのでは」と思ったそうです。私が体験学習を楽しんでいたことも入会の決め手だったとか。国語と算数を同時に始め、小4からは英語も加えて、中2まで学習を続けました。

    今は言葉を扱う仕事に就いていますが、KUMONでは算数・数学の教材が大好きでした。対話をするように、教材と1対1で静かに向き合う時間は、貴重な経験だったと思います。学校の集団授業では、「誰が一番早く解くか」「誰が一番点数をとれるか」と、競い合うように問題を解くことも多かったですが、KUMONでは誰かに急かされることもなく、好きなだけ思考をめぐらせながら問題と向き合うことができます。

    問題の難易度が上がってくると「やめたいな」と思うこともありましたが、そのたびに先生は、「つらかったら、少し枚数を減らしてみる?」など、私が続けられることを第一に考えてアドバイスをくれたので、投げ出すことなく乗り越えることができました。そして最後には必ず100点をもらえるので、大きな達成感と「最後には絶対できる!」という確信が自分の中に生まれました。その経験を通じて、継続の大切さを学び、粘り強さを身につけることができた気がします。

    このように、どんなに時間がかかっても、「諦めずに取り組んでいれば、どこかで突破口が見えてくる」と実感させてくれるのが算数・数学の教材でした。今は仕事で数学を使ってはいませんが、この感覚は、大人になった今でも自分を支えてくれる軸になっています。

    国語教材で多くの作品に出合う
    今の仕事につながる「縮約」の力

    森永 恵理子さん

    国語教材では、自分の学習進度に合わせて手応えのある文章に挑むことができました。作品中に知らない言葉やよくわからない出来事が出てきたときに、調べながら読み進めていくことに夢中になりました。自分では手に取らないジャンルの作品に触れる機会にもなっていて、ありがたかったです。

    国語教材の中では、小学校入学前に学習した『ロッタちゃんのひっこし』がとくに印象に残っています。5歳のロッタちゃんがお母さんと大げんかをして、納屋に“引っ越し”して…というお話で、この本で初めて「主人公に共感する」という体験をしました。親とケンカしたときのささくれだった気持ち、秘密基地を持つワクワク感、でも夜になると怖くなって帰りたくなる…自分も感じたことがある心の動きを物語にすると、こんな楽しい話になるんだ! と感動したのを覚えています。KUMONの国語教材で新しい作品に出合えるのがいつも楽しみで、教室での学習が終わった後も教材の続きが読みたくて、いつも遅くまで教室の本棚の前で読書に耽っていました。

    社会人になってからはノンフィクションをよく読んでいます。最近読んだのは、『イランの地下世界』という、イランの人々の実際の暮らしに触れた本です。イランはペルシャ時代からのすばらしい文化をもった国ですが、このところ見聞きするのは政治問題の話が多いので、もう少し広い視点でイランのことを理解できるものを求めて手に取りました。本は、「読んで共感する」楽しみだけでなく、このように知らない世界の扉を開く手段にもなります。読書は自分の新しい引き出しを増やしてくれる、とてもすてきな営みです。

    KUMONの国語学習が今の仕事に直接つながっているなと感じるのが「縮約」の力です。文章を簡潔にまとめる「要約」とは違って、元の文章のキーワードやニュアンスを生かしたまま短くまとめ直す作業が「縮約」です。仕事で取材する相手が、話すことに慣れている方や得意な方ばかりとは限りません。話があちこち飛んだり、着地点がすぐに見えてこなかったりする場合もあります。私は、相手の発するたくさんの言葉の中から「この人の中ではこういう文脈があるんだな」「くり返し言っているのはこの部分だな」と核心をつかむことを大切にしています。KUMONの「縮約」の課題を解くなかで、手を動かして文章をまとめ直していた経験が、話者や著者の頭の中の動きを追体験し、言葉を俯瞰して捉えるトレーニングにもなっていたのだなと、ふり返って思います。

    最近、長女をKUMONの教室に通わせようと教室を見学した際に、久しぶりに国語教材を見る機会があったのですが、今見てもいい問題だなと感心しています。

     


     

     

    後編のインタビューから

    -皆が知るべきことを、正しく伝える
    -どんな場でも、自分が尽くせるベストを
    -生涯をかけて「学び」を探求していく

    後編へ続く(近日公開)

     

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