人々の暮らしをうつし出す水無月の「行水」
そろそろジメジメとした梅雨の季節に入りますね。
旧暦の6月(水無月)は現代のカレンダー上では7月で、今年は7月10日から始まります。当時は今のような温暖化はありませんでしたが、この時期は雨も多く蒸し暑い日が続き、疫病や毒虫が増えるため、多くの人々を悩ませていました。そこで、何とかこの時期を無事に過ごし、稔りの秋を迎えられることを祈願するために、各地の神社で夏祭りが行われていました。とりわけ、6月晦日には神道儀式である大祓(おおはらえ)の儀式が行われていたため、今でも神社の恒例式として6月30日には夏越の祓である大祓や夏越祭が催されています。
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さて、今回紹介するのは歌川国貞(三代歌川豊国)の風流十二月のシリーズから「風流十二月ノ内 水無月」です。
蒸し暑い日が続く中、夏祭りに出かけるために汗を流しているのでしょうか。母の手を借りながら娘が庭先のたらいで行水をしています。たらいの脇には、手桶と柄杓(ひしゃく)も見えます。
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娘の洗顔に手を貸している母の銀のかんざしには、瓢箪(ひょうたん)と馬が飾られているようです。
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左上のこま絵には、回り灯篭や提灯、ほたる籠が配されていて、回り灯篭には正面上部にお祓いをする神主とちょうちんが描かれ、下部の御輿(みこし)の行列が次々と現われる仕掛けのようです。そして、ほたる籠には二匹の蛍がほんのり輝いています。
この浮世絵は当時の夏の一コマ「行水」を伝える一枚ですが、行水とは縁が薄い物を描き添えるだけで、単なる行水にストーリーを感じさせる浮世絵師の巧みな技もお楽しみください。
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