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Vol.545 2025.02.26

バングラデシュBSEZ×BRAC Kumonの教育CSRプロジェクト開始から1周年

公文式学習を通じて、
バングラデシュの公立小学校に起きた
大変化とは?

住友商事などが出資しバングラデシュで経済特区を開発・運営するBangladesh Special Economic Zone(BSEZ社)と、公文教育研究会とライセンス契約を締結しバングラデシュで公文式の展開を担うBRAC Kumon Limitedが協力し、2024年2月からBSEZ近くにある公立のソンパラ小学校にて、公文式学習が導入されました。公文式の導入から1年、バングラデシュの農村の小さな小学校に起きた大きな変化をご紹介します。

目次

    ソンパラ小学校への公文式導入のきっかけ~BSEZ河内社長の想い

    BSEZ河内社長

    このプロジェクトは、BSEZ河内社長の地域への強い想いから始まりました。BSEZ開発のため2021年10月に現地に赴任した河内社長は、毎日現場に通い、BSEZ近辺の地域の様子を見て回りました。

    お昼ご飯を食べに近くのマーケットの食堂に行くと、小学生くらいの子どもが家族を養うために学校に通わず働いていたり、近隣の小学校を訪問すると、国から支給される制服代を生活費に充てなければ生活が回らないため制服を買ってもらえない子どもが複数いたりと、「地域の子どもたちを取り巻く現実を目の当たりにした」と言います。

    ソンパラ小学校

    「工業団地は国を豊かにする事業だと思っているが、BSEZの周りに住む子どもたちは恵まれない環境で生活をしている。BSEZはこの地域の子どもたちを幸せにすることができるだろうか」という問いを突きつけられた河内社長は、CSRプロジェクトとして地域の子どもたちに教育の機会を提供することを決めました。

    これまで他国での工業団地事業では、地域へのCSR活動としてお金やモノを提供することが通例だったそうですが、「地域に残る価値を提供したい」との想いから、子どもたちへの教育機会の提供として、公文式学習の近隣小学校への導入をサポートすることにしました。

    ソンパラ小学校の普段のクラスの様子
    本プロジェクトによって各クラスに電気が付けられた

    河内社長は言います。
    「私にも子どもがいて、3人とも小学校の低学年から公文で学んでいました。彼らはもう大きくなりましたが、ねばり強さやあきらめない力は公文で身につけたと思っていますし、自ら考え、日々成長する姿を頼もしく感じています。バングラデシュの子どもたちにも公文での学習を通じて継続することの大切さや成長する喜びを学び、自ら未来を拓いていってほしいと思っています」

    公文式の公立小学校への導入に際しては、地域の教育委員会から「公立小学校は国が定めたカリキュラム以外は認めない」という声が上がるなど、さまざまなハードルがありましたが、最終的には教育委員会や学校の同意を得て、2024年2月からソンパラ小学校での公文式学習がスタートしました。

    1年間で小学校に起きた変化

    ソンパラ小学校では、タブレット端末で公文式を学習するKUMON CONNECTを使います。そのため、タブレット端末や電気の配備、WiFiやタブレットの保管設備等、BSEZが支援して学習環境を整えました。学校の先生に対する研修は、現地で公文式の普及展開を担うBRAC Kumon Limitedが行い、学習の開始後も継続的にサポートをしています。

    公文式学習の導入から1年間。学校に起きた変化について、学校の先生や生徒、BSEZの本プロジェクト担当者の声を通じて紹介します。

    ■子どもたちが毎日学校に来るようになり、学習に対する意欲が上がった

    公文式を担当している学校の先生にお話を聞きました。

    タムジット先生(左)とハニー先生(右)

    タムジット先生:この地域は貧しく、経済的に厳しい家庭の子どもたちがこの学校に通っています。集中力がない子も多く、様々な理由で1回学校に来たら数日来なくなることもよくありました。それが、公文式を導入してから子どもたちが毎日学校に来るようになりました。
    子どもたちにとってタブレットで学習することは魅力的で、登校の頻度が上がり、学習時間が増えたことで、以前より集中力も高まったと思います。

    ハニー先生:子どもたちの学習に対する意欲も上がりました。学習後に「ミスは何個?」と聞いてくるなど、自分の学習のでき具合に向き合う様子を見ていると、以前に比べて学習への意欲が高まっていると感じます。

    タムジット先生:学校へのいい影響はほかにもあります。とくに規律を守ることができるようになったと思います。タブレットを返却する時に列を崩さずに並ぶ、学習中は静かに学習する、自分が間違った問題は自分で直すなど、ルールをしっかりと守れるようになりました。

    ハニー先生:公文の導入によって、騒がしかった教室が静かになりました。決められた時間で学習をしないといけないし、ミスをしないように注意深く学習するようになったからだと思います。

    学校でのタブレットによる公文式学習の様子

    タムジット先生:バングラデシュの子どもたちは算数と英語が苦手な子が多いです。算数や英語の力があれば、未来が拓かれる可能性が高くなるのですが、これまで特に環境的に恵まれない子どもたちに対して、希望にあふれる未来を描くことは難しかった。この1年間の子どもたちの変化を見ていて、彼らには公文式で力をつけ、小学校を卒業したあとの次のステージで輝いてほしいと思うようになりました。
    BSEZのCSRプロジェクトによって貧しい子どもたちが高いレベルの教育を受けられたことはありがたいことだと感じています。BSEZはこの地域全体の経済を大きく変えているし、これからますます地域の人々の生活がよくなっていくと思います。

    ■一番うれしいことは、できなかったことができるようになったこと!

    現在5年生で、1年間学習を続けた2人に公文式学習の感想を聞きました。

    「以前は1から10まで読むのも難しかったけれど、今では100まで読めるようになったことで勉強ができるようになったと思えました」
    「これまで、家では勉強を重要視されることはなかったのですが、家族や親戚にタブレットで学習できていることを伝えるとすごいねと言われてうれしいし誇らしいです」
    「KUMONをしていて一番うれしいことは、できなかったことができるようになったこと!」

    ■公文式は「静かな熱中」

    2023年10月にBSEZに赴任し、この教育CSRプロジェクトを担当された早田さんにもお話を聞きました。

    Q.この活動の意義をどのように考えていますか?

    左から3番目が早田さん

    この学校に通っている子の家族には、BSEZの開発前は工業団地の敷地内で農業をしていた方がいるのですが、BSEZができたことでほかの仕事に移った方がいることを知りました。そういう人がいるからこの事業ができている。だからこそ、周りの地域への貢献活動が大事だと思っています。工業団地をより良くするだけでなく、BSEZが運営できているのは周りの地域の方々のおかげであるという意識をもって恩を返していくことが、この活動の意義だと思っています。

    Q.ソンパラ小学校での公文の学習を見て、どのように感じていますか?

    公文を学習している間、子どもたちが集中していることにビックリしています。学校はいつ来ても教室がガヤガヤしていて、授業なのか遊んでいるのかわからないのですが、公文の学習の時間は皆が静かに学習をしているのです。公文のすごさを感じました。公文は教材がすばらしいと思うし、その教材に子どもたちが静かに集中して取り組んでいる様子を見ると、「公文は静かな熱中」を引き出すものだと感じます。

    Q.印象に残っている生徒さんはいますか?

    ある子がたし算を学習している時に、間違った解き方をしていました。本人としては自信をもって解いているようでしたが、間違えたら×がつきます。彼女なりの論理があって答えを出しているのですが、採点後になんでだろう?と考え直すことになりますよね。それで自分がなぜ間違えたのか、どう解いたらいいのかが理解できる。あの過程が積み重なって、自分でできるようになるのだと思いました。

    Q. ソンパラ小学校の子どもたちに、これからどうなっていってほしいですか?

    勉強は自分の可能性を広げるものだと思います。私は勉強をしたいだけさせてもらいました。どこかで諦めることもなかったですし、女の子だからダメということもなく、やりたいだけ勉強ができ、とても恵まれていたと思います。ソンパラ小学校の子どもたちにも、がんばればできるようになる、ということを実感してほしいと思っています。昨日できなかった問題が今日はできるようになる、公文でその経験を積み重ねて、自分の可能性を広げていってほしいと願っています。

    BSEZを「つなぐ場所」に

    最後に、BSEZ河内社長に今後の展望をお聞きしました。

    河内社長:教育CSRプロジェクトはこれからBSEZ内で操業をされるご入居企業と共に取り組んでいきます。そうすることで規模を拡大し、例えばソンパラ小学校で公文を学ぶ子どもの数を増やしたり、他の小学校にも展開したりするなど、まずは現在の取り組みを広げていくイメージを持っています。

    その次のステップとして、「小・中学校を卒業した後に仕事がない」という地域の課題を解決するために、職業訓練校をBSEZ内に設けて、ご入居企業と支援をしていきたいと考えています。職業訓練校を卒業した方がご入居企業で働く環境をつくることで、支援に留まらず地域社会と共に発展していく形にしていきたいと考えています。

    私がバングラデシュに赴任したときは、辺り一面は田んぼでした。そこに工業団地をつくり、企業が入居し、雇用が生まれ、街ができました。この経験を通じて工業団地が地域社会に与える影響の大きさや責任の重さについて深く考えるようになりましたし、BSEZが周りの方々に愛される場所にしたいという想いが強くなりました。

    私はBSEZを「つなぐ場所」にしたいと思っています。バングラデシュと日本、ローカルとグローバル、貧しい過去と豊かな未来。ソンパラ小学校の教育CSRプロジェクトを起点として、子どもたちやこの地域の希望あふれる未来につなげていくことに取り組んでいきたいと考えています。

    関連リンク Bangladesh Special Economic Zone Limited (BSEZ) – Home Page

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