2018年度からスタートした「公文集会」
表彰式がモチベーションアップに
![]() 村上 太 校長 |
まず初めに、公文式を導入したきっかけについて、村上太校長先生にうかがいました。
―― 公文式を導入した経緯について、教えてください。
本校に入学する生徒の中には、中学校時代にさまざまな事情で不登校や学力不振だった生徒も少なくありません。そうした生徒たちに、まずは基礎学力を身につけてもらいたいということから、開校2年目の2013年11月に当時の校長が提案したのが公文式学習の導入でした。どこまでが理解できて、どこからが理解できていないのか、その境界線は個々によってさまざま。それを担当の先生が各生徒に合わせた独自の教材を用意するというのは非常に負担が大きい。そこで各自の学習レベルに合わせてスタートし、進めていくことができる公文式学習が適しているのではないか、ということが最大の理由でした。
―― 村上校長先生は、公文式学習にはどのようなイメージを持っていたのでしょうか?
公文式学習は自分が理解しているところまで戻って学習することができること、また反復することによってきちんと学力が身につくというところに良さがある、というふうに考えていました。
―― 導入して5年が経ちますが、実際の学習効果についてはどのように感じていらっしゃいますか?
個々の生徒に合わせて、「少しずつ」レベルが上がっていくという公文式学習は、生徒たちの基礎学力向上には非常に適している教材だと実感しています。ただ、生徒たちの学習意欲をもっと掻き立てるような工夫が必要だな、ということも感じています。公文式学習の効果を生徒自身が感じられると、意欲を持ってやってくれることが多いのですが、やはりなかにはまだ「自学自習」が身についていなくて、学習時間の間、だらだらとただ時間だけが過ぎていくという生徒もいます。そうした生徒への働きかけをどうしていくかが課題となっています。
![]() 「公文集会」の様子 |
―― 実際に、何か工夫されていることはありますか?
2018年度から始めたのが「公文集会」です。毎学期の終わりに行っているのですが、教材終了テストに合格した生徒を生徒全員の前で表彰することによって、目的意識を高めていこうと考えました。また、本校の先生からではなく、公文教育研究会本部の担当の方から表彰してもらっています。そのほうが生徒にもいい緊張感が生まれると考えたからです。もちろん、「公文集会」で全員が変わったわけではありませんが、学習態度が変わってきた生徒もいました。それまでは時間を気にすることなくだらだら教材を学習していたのが、時間内に問題を解き終わろうと努めるようになったりして、一定の効果が出ていると思っています。
―― 卒業生の中には、3年間で大きな変化・成長のあった生徒もたくさんいるとうかがっています。
そうですね。公文式学習によって基礎学力を身につけ、それをバネに大学受験をして見事に合格したという生徒もたくさんいます。大学受験だけがすべてではありませんが、そういう先輩たちに、ぜひ続いていってほしいと思います。
「できる」が増え、芽生えた学習意欲
将来に灯された“明るい光”
次に、新2年生の藤原怜也さんと大谷立人さんに、1年間、公文式学習をやってみての感想をうかがいました。
―― 1年間、公文式学習をやってみて、いかがですか?
藤原: 特に計算問題が、最初に取り組み始めた時よりも速く、正しく解けるようになってきたと感じています。小学校の時から計算問題は間違いが多くて、「もっとゆっくりやればできるよ」と言われていました。でもそれがなかなかできなかったのですが、公文式は他人を意識することなく自分のスピードでやることができるので、だんだんと間違いが少なくなってきて、どんどん速く解けるようになってきました。
大谷: 僕も計算問題に苦手意識を持っていたのですが、1年生の4月から頑張って集中して取り組んだおかげで、2学期あたりからしっかりと計算ができるようになりました。難しい問題もありますが、楽しく公文式学習に取り組んでいます。
![]() 左:大谷 立人さん、右:藤原 怜也さん |
―― 公文式によって、学習に対する意識は変わりましたか?
藤原: 公文式学習を始めてから、「もっと速く計算を解きたい」という思いが強くなってきました。中学校の時にはこうした気持ちになったことはなくて、「勉強はやりたくないな」と思っていました。でも、公文式でできることの楽しさを覚えてからは、「自分にとってプラスになることだから、しっかりとやっていこう」という前向きな気持ちになりました。僕は結構飽き性な性格で、一つのことに集中することが苦手だったのですが、今では自宅でも自分が決めた時間はしっかりと学習できるようになりましたし、そのほかのことについても集中力が身についたと感じています。
大谷: 中学校の時は、勉強に対してまったく興味を持てなかったのですが、この学校に入学してからガラリと気持ちが変わりました。今は「勉強することは、絶対将来につながる」と思っているので、頑張りたいという気持ちです。なので、ほかの授業でも静かに集中して勉強することができるようになりました。
―― これからの目標を教えてください。
藤原: まだ将来何になりたいかは具体的には決まっていませんが、公文式学習を通して自分の未来が明るいと感じるようになったので、これからも頑張りたいと思います。
大谷: 公文式学習をするようになって「できる」ことが増え、「将来はこういうことをやってみたいな」という興味の幅も広がってきました。これからもいろいろなことを学んで、将来は社会の役に立つ人になりたいです。
学習意欲の向上が 日常生活の態度にもプラスの影響
最後に、2013年、新任で村上学園に赴任して、2年目から公文式学習の担当をしている渡辺真士先生に、公文式学習の効果についてうかがいました。
―― 公文式学習について、担当の先生としてどのように感じておられますか?
2019年3月の卒業生は、私が公文式学習の担当を務めるようになって初めて3年間の成長を見た生徒たちでした。大学受験に合格した生徒もいて、入学当初には想像もつかないくらいのレベルまで進みました。最初はそれこそ、国語では設問の内容とかけ離れた突拍子もない解答を書いていたり、数学では計算ミスが多かったりした生徒が、最後にはしっかりと正しい解答を書けるようになっていたり、ほとんど計算ミスがなくなっていたりと、公文式学習によって3年間で身につけた基礎学力の大きさを痛感しました。
―― 公文式学習の良さは、どういうところに感じていますか?
![]() 渡辺 真士 先生 |
実は本校に赴任当初、私は「え?高校生が公文式学習をやるの?」と半信半疑でした。でも、実際に自分が担当して、基礎学力を身につけられれば、生徒たちの学習能力はどんどん伸びていくということを実感しました。また、きちんとした学習習慣を身につけられることも、毎日、少しずつコツコツと継続していくことを大切にしている公文式の良さだと思います。
―― 生徒たちが変化・成長していく姿をどのように見てこられたのでしょうか?
これまで多くの生徒が公文式学習で大きく変化し、成長を見せてくれたのですが、学習意欲が高まると、普段の生活態度にも良い影響が出てきます。例えば、先ほどの大谷さんは、入学当初はやんちゃでしたが、公文式学習を始めて夏休みが明けた頃からは、より学習に対して強い意欲を持ち始めたと感じます。すっかり礼儀正しくなり、今ではクラスのリーダー的存在として、クラスメイトや先生方からも信頼されています。
―― 今後、新しく取り組んでいきたいと思っていることはありますか?
新3年生の中には、マンネリ化といいますか、少しモチベーションが下がりつつある生徒も見受けられますので、新2年生に対して取り組んできたことを新3年生にも生かしたいと考えています。例えば、集中力が欠けている生徒の中には、これまで公文式学習の最大の特徴である「ちょうどの学習」がうまくできていないことが理由ということも考えられます。これまではそのまま進めてしまっていたのですが、取り組みとして、新2年生が1年生の時に、一人ひとりの進み具合を細かく見るようにしたり、標準完成時間と比べてみたりして、その都度、レベルの上げ下げを個人別に実施しました。そうしたところ、1年間を通じて、モチベーションが下がった生徒というのはほとんどいなかったので、2019年度は新3年生にも同じように一人ひとりの「ちょうど」を見つけられるような個人別の働きかけをしていきたいと思っています。
関連リンク 学校での公文式 高等学校・高等専修学校等 KUMON now! トピックスVol.062 「高校でのKUMON―村上学園高等学校」 村上学園高等学校ホームページ