江戸時代の子育て
日本は江戸時代のころ疫病や麻疹などの小児病に対する医学も遅れていたため、幼くして亡くなる子どもが多く、現在のように子どもを健康に育てるという点においては厳しい環境にありました。そのため、江戸後期の天保期ころまでは一世帯に子どもが一人いるかどうかという少子社会であったといわれています。そして、女性が妊娠したことがわかると、なんとか無事に出産を終え赤子が健康に育つように、実の親だけでなく多くの大人たちが地域ぐるみで育児や子育てに関わりました。取り分け家の後継者となる子どもの子育てともなるとその責任は重く、家長である父親がその重責を担いました。そのようなこともあり、当時は父親を対象とした育児や子育て本が多数普及していました。
読み聞かせは学びへの誘い
草双紙 渓斎英泉 天保頃 (1830-1844)幼児が「これも読んで~」と母親にせがんでいるようだ。髪置きを終え髪の毛も伸び始めており、年は4歳頃だろうか。絵のなかには「童部の友としなせる草双紙これもをとめの手にそなれける」と幼い頃から本に親しませる大切さが説かれている。この母はこの教えを上手に実践しているのであろう。 |
18世紀の後半、漢学者であった江村北海は著書の『授業編』のなかで子どもに文字を教えるには絵草子(絵本)がよいことを次のように説いています。
“旅に出た時にはたまには絵草子を土産として買い求めて、子どもに与えなさい。子どもは本の中の絵を見ていると、その内に読んで欲しいとか、書きだして欲しいとせがみ始めるから、それを逃さずに読み聞かせをしたり、書きだしてあげなさい”と。
つまり、子どもには環境を作ってあげれば、子ども自らが主体的にいろいろな好奇心を持って気づきや発見をして学びに向かっていこうとするので、それに寄り添って教えてあげることが大切であるという教えです。このように、本に親しませる環境や読み聞かせの大切さは、この時代にはすでに伝えられていたのです。
読み聞かせから子どもが学んでいること
いつの時代も絵本を読み聞かせをしている時、子どもの表情は実に豊かになります。登場する人物や動物に共感したり、応援したり、同情したり、相手の気持ちを理解する姿を見せてくれることがよくあります。おそらく子どもはご両親や身近な人による読み聞かせを通して自然と言葉(語彙)を増やし、想像力を働かせたり、友だち関係づくりに欠かせない相手のことを理解したり、思いやる気持ちを絵本を通して楽しみながら身に付けているのではないでしょうか。
読み聞かせを通して子どもが教えてくれること
読み聞かせは親子で楽しめるコニュニケーションです。そのなかで子どもは自我の芽生えや成長の様子を沢山教えてくれます。同じ本でも何回も読んでとせがんだり、途中でよそ見をしたりと、色々な反応や感情をみせてくれます。また、子どもから出す様々なサインは兄弟姉妹でも一人ひとり全く異なりますので、貴重な子育て経験をすることができます。この貴重な経験を子育て日記にして〇月〇日、晴れ、今日は○○ちゃんとAの本を3回(冊)とBの本を1回(冊)読みましたという記録とともに、どこで笑い、何に興味を持ち、どんな質問をしてきたかなど一言コメントを書き残してみてはいかがでしょうか。きっと思い出がいっぱい詰まった、素晴らしい成長記録になるのではないでしょうか。
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