“ほめられたこと””できたこと”はコトバで記録
「ほめ言葉が大切ということは、もう聞き飽きました」。そうつぶやく方もいらっしゃることでしょう。それほど、子どもたちにほめ言葉をかけましょうとたくさんの人が話す、あるいはさまざまな育児書に記されているのはなぜでしょうか。それは、「ほめられるとうれしい。うれしい気持ちが意欲を生む」「自信や自己肯定感が育まれる」「親子のコミュニケーションがよくなる」など、いろいろな良いことがほめ言葉で生まれてくるからです。
今回ご紹介する『ほめことばカレンダー』(以下『ほめカレ』)は、ほめことばをカレンダーに文字で記録しましょう、というおススメです。身体の成長は写真やビデオでわかりますが、“ほめられたこと”“できるようになったこと”はコトバで残さないと消えていってしまいます。そして、『ほめカレ』を半年、1年とつけていくと、それは子どもたちの大切な心の成長の記録にもなっているということに驚かれると思います。
例えば、ご自身がつけた半年前くらいの『ほめカレ』を見返してみたお母さんの感想です。「4歳のお誕生日のころから、頼まなくても玉ねぎの皮をむいてくれるようになってたんだ、えらいな」「シャンプーハットを卒業して、得意気な顔をしていたのも、同じころだったのね」と、思わず笑みがこぼれ、お子さんの成長を楽しくふり返ることができます。
『ほめことばカレンダー』誕生のヒミツ
さて、この『ほめカレ』ですが、お母さん方たちのアイデアから生まれたものです。時間は30年ほど前にさかのぼります。場所は京都市内の公文式教室。当時、その教室は幼児生徒がとても多く、学習が終わったあとの教室の一角は、さながら“幼児とお母さん方のサロン”といった状況。しかし、そこで話し合われている内容はけっこう考えさせられるものだったのです。
「庭でどろんこ遊びをした手でプリンを食べようとしたので、思わず手を叩いて泣かせちゃった。こんなことが続いていて、子育てに自信がもてなくて…」「ほめなきゃとは思っていても、どうしても叱ってしまうことのほうが多くなって、ママ失格なのかな…」。そこで、教室の先生は幼児のお母さん方に集まっていただき、「ほめことばを無理なく増やすために」というテーマでの話し合いをもつことにしました。
何回目かの集まりのとき、あるお母さんから「ほめことばを文字にして残しては?」という提案があり、これをきっかけに話が盛り上がり、結果として『ほめカレ』が生まれたのです。その後、『ほめカレ』はお母さんからお母さんへ、教室から教室へと人づてに広まっていきます。『ほめカレ』は、その成り立ちからもおわかりのように、特に定まった形式やレイアウトがあるわけではないため、現在では“家庭オリジナル”や“教室オリジナル”など、いろいろな『ほめカレ』があります。オリジナルといっても、作るのは意外にカンタン。例えば、100円ショップで大き目の記入用のカレンダーを買ってきて、綺麗なシールを何枚か貼るだけで my『ほめカレ』ができます。
※関連リンクには、原型に近いシンプルな『ほめカレ』をアップしています。シールなどでアレンジしてどうぞ。
毎日楽しく書いていくヒントをお母さん方にうかがいました
全国のお母さん方からお聞きした、楽しく書き続けるための工夫やヒントをまとめみました。
○毎日一言でもよいので、書き続ける
→ “いいとこさがし”ができ、お子さんを見る眼が変わってきます
○よいこと・伸びたことを具体的に
→ お子さんが読んでわかるように。読めない子には読み聞かせて
○ひとりでできたこと、自発的にしたことは、特に注目して
→ シールも貼って、さらに楽しく
○お子さんの目の高さに貼る
→ お子さんの見ている前で記入し、お子さんの目の高さに。
○「書くことがないなぁ」と考え込む前に
→ 子どもの見方を変えてみましょう(次段参照)
きちんと叱ることは不可欠、しかし、ほめことばはその何倍も大切
子どもたちの成長には、叱ることはもちろん必要です。なぜいけないのかを話し、きちんと叱ることは、躾だけを考えてみてもとても大切です。けれども、叱られた子どもはやはり萎縮しがち。だからこそ、叱る何倍もほめる言葉が必要なのです。最後に『ほめカレ』を現在進行形でつけているお母さんと、『ほめカレ』を卒業したお母さんのコメントをご紹介しましょう。
つい2ヵ月前からつけはじめた、3歳8ヵ月の男の子のお母さんです。
初めのうち、毎日書くのはたいへんと思っていましたが、教室の先輩ママからのアドバイスで一転。ミルクをこぼさず飲めるようになってえらいね。洗濯物をいっしょにたたんでくれてありがとう! 日々のいろんなことがほめ言葉につながるとわかり、子育てがとても楽しくなりました。まだ、ひらがなはひろい読みですが、書いたほめことばを読んであげると満面の笑顔です。
つぎは、つけはじめてから1年と2ヵ月、年中の男の子のお母さんです。
半年ほど前から、はげましの言葉も書いてます。先月から自転車の補助輪なしで乗れることにチャレンジしてますが、なかなかできずしょげていたので、“ちゃんとオウエンしてるよ。ガンバレ!”と書いたら、また元気に練習しています。ちょっとあぶなっかしいですけど(笑)。そのはげましの言葉を書きはじめたころからですかね、小2のお姉ちゃんも自分のほめことばカレンダーがほしいと言うので、冷蔵庫の横には2つのカレンダーがかかっています。起きると、真っ先にカレンダーを見るのがふたりの朝の日課。
3人目は、発達障害のある中1の女の子のお母さん。『ほめカレ』は小4で卒業したのですが…。
ほめことばカレンダーをつけはじめたのは小1の6月。小学校に入っていろんなことができないのが表面化し、クラスにもなじめず、学校からの呼び出し電話はほとんど毎日。子どももですが、私も心が折れそうな時期でした。年長の終わりから通いだした公文式教室の先生にすすめられて、半信半疑の気持ちでつけはじめました。すると、1週間で自分が変わったのです。できないことばかりと思っていたのに、計算は速く正確、集中すれば長く続く、…と良い面が見えるようになりました。そうすると子どもの見方や考え方も変わってきました。おっちょこちょいだけど行動力はあるよね。注意散漫に見えるけど、それだけいろんなことに興味関心が向くんだ、と。そういうふうに見たり考えたりできるようになって、ずいぶん気持ちが楽になりました。私の表情が穏やかになったからだと思うのですが、子どもにも笑顔がもどってきました。それから小4の3月まで、けっこう長くつけ続けました。いま46枚のカレンダーは娘と私の宝物です。きのうもふたりで見返していたのですが、娘が唐突に“お母さん、またつけてよ”と言うのです。考えてみれば中1です。“中1ギャップ”という言葉があるくらい、ふつうの子でもたいへんな時期なんですね。それで、きょうから、また心新たにほめことばカレンダーをつけてみようと決めました。
いかがでしょう。『ほめことばカレンダー』は親子の笑顔の源なのかもしれませんね。
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