夏の定番「妖怪」
夏と言えば「お化け」「妖怪」は定番。子どもたちは、今も昔も「妖怪」が大好きですね。
今回は江戸時代に描かれた妖怪を題材にした双六を見てみましょう。
百種怪談妖物双六(むかしばなしばけものすごろく) 歌川 芳員
安政5年(1858)9月
「百種怪談」と書いて「むかしばなし」、「妖物双六」を「ばけものすごろく」と読ませていて、幕末に流行した怪談話の「百物語」や絵本「百鬼夜行」にヒントを得て作られていた妖怪双六のようです。
まずはこの双六のルールです。
妖怪双六は「妖怪」の飛び双六で、さいころの目によって指定の場所へ進みます。「ふりだし」のあと、右下から25種の妖怪が現れます。
「ふり出し」は子どもたちが一つの怪談話をするごとに火を一つ消し、最後は暗闇になって妖怪が出現する「百物語」を楽しむ場面から始まります。
さて、妖怪の世界へご案内しましょう・・・
- 河内の雪女郎 大阪河内の雪女で、白衣に長い下げ髪姿だが、足はない。
- 朝比奈切通の三目大僧 鎌倉の朝比奈切通しに出る三つ目の老僧。
- 江州の狗神白児(いぬがみしらちご) 幣を手に持つ近江の犬神と、家来として使役される稚児
- 妙高山のやまおとこ山童 新潟県妙高山の山男。大男で裸身を木の葉につつみ、一つ目。手に鳥。
- やまびこ幽谷響 各地の山中で見られるこだまの妖怪。人の声に応じて響き返す。
- 砂村の怨霊 恨みを残して死んだ江戸砂村の人の怨霊が、月夜に生り物に出現。
- 坂東太郎の河童 利根川のかっぱが、皿の水が乾き、子どもの尻から内臓を引き出す。
- 腥寺(なまぐさでら)の猫俣(ねこまた) 血なまぐさい寺に住む老猫の猫または、尾が二つに裂け、人をあざむく。
- 鯨波の船幽霊 荒波の波頭に火が見え、底ぬけのひしゃくを持った亡霊が潮をくむ。
- 嫉妬の怨念 娘道成寺のように、女性が嫉妬に狂うと蛇体となって怨念を晴らす。
- 底闇谷の垢嘗(あかなめ) 垢ねぶりともいい、古い風呂屋や屋敷に住んで、古材をなめる。
- 玄海灘の海坊主 夜の玄海灘に現われる黒い巨大な怪物で、人を引き込もうとする。
- 丁鳴原の腹鼓 月夜の原野から怪異な音がする。狸が腹をふくらませてたたくのだ。
- 挑灯お岩 提灯にうつる怖ろしい顔は「東海道四谷怪談」のお岩で、「提灯お岩」と呼ぶ。
- 嘘ヶ原の独目(ひとつめ) 笠をかぶった一つ目の娘が、豆腐を運んでいる。豆腐小僧の仲間。
- 古葛籠の飛頭獏(ろくろくび) 古いつづらからろくろ首が伸びている。轆驢首とも飛首蛮とも書いた。
- 鷺淵の一本足 鷺の住む水辺に出る傘のお化け。一つ目に、鷺の一本足で、赤い舌。
- 茂林寺の釜 上州茂林寺の汲めども尽きない文福茶釜、実は狸だった。
- 天窓(ひきまど)の笑輾(しょうけら) 庚申侍の夜、早く寝ると身に災いがおこるのは、天窓から見るこの鬼のせい。
- 摺鉢山の雷木棒(れんぎぼう) 古い摺小木(すりこぎ)が妖怪となって摺鉢山で雷を鳴らす
- 土佐海の蛸入道 土佐沖に出る巨大なタコで漁船や漁師を海に引き込む。
- 金毛(きんもう)九尾(きゅうび)の狐 印度、中国、日本で美女に化けて王の心を奪うが、那須原で退治される。
- 見越入道 妖怪の親分とされる大入道で、見上げる大きさに伸び、命をとられる。
- 廃寺野伏魔(のぶすま) 野衾とも書き、ムササビのこと。人や猫の生き血を吸うとされた。
- 「上り」 は古御所の妖猫(ばけねこ)御所で鉄漿(おはぐろ)をつける息女、実の姿は古猫であったという。
「妖怪」や「お化け」たちは浮世絵や漫画、アニメという語り部を通じて、身近なものとして自然に子どもたちの心のなかに入り込んでくるのかもしれませんね。
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