父を失い「世の中の不条理をなんとかしたい」という思いに
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幼い頃から私は好奇心旺盛でやんちゃ。父親にはよく押入れに閉じ込められていましたね。兄と姉がいて末っ子だったからか、自由に育てられました。
両親が教会で聖歌隊とオルガン奏者をしていたこともあり、家でも車の中でも常に音楽が流れ、父がピアノを弾くような家庭でした。その影響で私も小さい頃から音楽が大好き。クラシックにオペラ、ビートルズのほか、Mr.Childrenのライブビデオをテープがすり切れんばかりに観ていたりして、将来は、作曲などクリエイティブなことをしたいなと思っていました。
私の人間形成に影響していることは、突然の飛行機事故で父が亡くなったことです。私はまだ4歳でしたが、「人生ははかない」「いつ死ぬかわからない」ということをリアルに感じました。「世の中を変えたい」「不条理なことをなくしたい」という私の思いはここからきています。「自分でやるしかない」という独立心も芽生えました。
もうひとつ、影響を与えたのは、中学3年のころに祖母が亡くなったことです。私はおばあちゃん子でした。たくさんのことを教えてもらったのに、お返しができないままになってしまった。そのことに罪悪感を覚えたことも、「世の中を変えたい。誰かの役に立ちたい」という思いを加速させました。
私は算数が大好きで、3、4歳のころ、かけ算やわり算をしていた記憶があります。もともとパズルなどパターン認識が好きだったこと、姉と兄が公文式のプリントをしていた姿を見ていたことも影響しているのかもしれません。
奈良県の私立中高一貫校の西大和学園に進学後は、生物学でノーベル賞を取りたいと夢見て京都大学へ入学しました。京大が独創性を尊重する校風で、自然科学系では日本で一番ノーベル賞受賞者が多かったのです。とはいえ世界での一般的なランキングでは50番目。自由な学風、文化は存分に満喫することができ、それはそれで良かったです。ランキングにとらわれる必要はありませんが、他の国のトップレベルの大学のキャンパスをほとんど訪問したことがなかったというのは視野が狭かったかもしれません。
生物学に興味をもったのは、高校時代に『精神と物質 分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか』という本を読んだことがきっかけのひとつです。ノーベル賞受賞直後の利根川進先生に、ジャーナリストの立花隆さんがインタビューされた本で、分子生物学についてわかりやすく書かれていました。中高時代はいろいろな本を読みましたね。内村鑑三の『後世への最大遺物』もすばらしかった。後世に何を遺せるかというときに、やはり「人が大事」という話が心に響きました。人生のどこかのタイミングで読むといいと思います。