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Vol.051 2018.01.26

ONO BRAND DESIGN代表・デザイナー
小野圭介さん

<後編>

自分が直感した
好きなことへの熱量
信じて大切に育もう

ONO BRAND DESIGN代表・デザイナー

小野 圭介 (おの けいすけ)

1982年、北海道札幌市生まれ。埼玉県北本市、長野県長野市育ち。早稲田大学理工学部建築学科に在学中に、米国系ブランドコンサルティング会社ランドーアソシエイツ東京オフィスでアルバイトを始める。同大卒業後、ランドーアソシエイツでしばらくアルバイトを続けた後、デザイナーとして採用され、正社員に。シニアデザイナーを経て、2012年同社を退社、独立してONO BRAND DESIGNを設立。共著に『ロゴデザインの現場 事例で学ぶデザイン技法としてのブランディング』(MdNコーポレーション)。受賞歴はPentawards(国際パッケージデザインコンペティション )ブロンズ賞(2017)、日本タイポグラフィ年鑑 ベストワーク賞 (2015)など。4歳から中学までの間、埼玉と長野の公文式教室に通う。算数・数学、英語、国語を学習。

会社やブランドの「しるし」ともいえるロゴマーク。言葉で説明するよりも、見ただけで、その会社の想いが伝わるものとして、多くの企業で使われています。2018年に60周年を迎える公文教育研究会でも、記念のロゴマークを作成し、KUMONに関わる方々への感謝の気持ちを発信しています。そのデザインを担当してくださったのが小野圭介さん。建築学科出身という、デザイナーとしては異色の経歴の持ち主の小野さんが、デザインの道に進まれたのには、どんな背景があったのでしょうか。仕事の魅力やKUMONの60周年ロゴが生まれるまでの道のりについてもうかがいました。

目次

多様な意見を聞くことで
思いもよらぬデザインが生まれる

小野圭介さん

ランドーアソシエイツで学生アルバイトとして働けるようになったものの、新卒採用の枠はなく、バイトのまま大学を卒業し、しばらくバイトを続けました。就職活動もしませんでした。

「建築系に進めば?」との周囲からの助言にも、この会社でどうしても働きたいという自分の気持ちは揺るぎませんでした。また、ほかのデザイン事務所で働こうにも、美大などで専門的に学んでいないとなかなか採用してもらえないことがわかっていました。それまで何も言わなかった両親からは、さすがに「大丈夫?」と心配されましたが。

やりたかったのはクリエイティブ部門でロゴをつくることでしたが、そもそもバイトとして働き始めたのはマーケティング部門。最初は買い出しや資料収集など、アシスタント的な仕事でしたが、上司に交渉して徐々にクリエイティブのミーティングに同席させてもらったり、自分のアイデアを提案したりして、少しずつやりたい方向に近づいていきました。

やがて、自分のデザイン案が社内コンペを経て、クライアントプレゼンテーションの場にあがるようになりました。そして、ある企業のロゴが正式に採用されるなど実績が出てきて、ようやく正社員に。大学を卒業して半年が経っていました。

そうしてデザイナーとしてさまざまな案件を手がけることになりますが、30歳で独立を決意し会社をやめました。世界的な大企業が顧客の仕事は、やりがいはありましたが、もっと自分でプロジェクトをマネジメントしたいという想いが募ったのです。仕事の保障は何もありませんでしたが、さまざまな人の応援もあり、顧客に恵まれて現在に至っています。

デザインの仕事は、企業の想いを汲み取ることが一番大事とお伝えしましたが、時には、意見や感覚がすれ違うこともあります。そんなときでも、「いろんな考えや感じ方があるんだな」と捉え、「感じ方は人それぞれ」ということを前提にデザインしています。

以前は、感じ方の違いに「なぜ伝わらないのだろう」と悩むこともありましたが、自分の案が「正解」と思い込まずに、いろいろな意見を聞くことで、それが混じり合い、自分一人の発想ではできないデザインに到達することもある、と気づきました。

ロゴが完成し社会に解き放たれたとき、いろんな人の目に触れるので、やはりいろんな感じ方で受け止められます。そこにさまざまな人の考えが折り重なっていると強度が上がり、より長く愛されるのではないかと思っています。

KUMONの60周年ロゴに込めた想いとは?

3つのキーワードをのせた
KUMONの60周年ロゴデザイン

小野圭介さん
60周年ロゴをデザインした際のたくさんのスケッチ

今回、公文教育研究会の60周年ロゴのお話をいただいたとき、「ぜひやらせてください!」と、即答しました。自分が公文式で学んでいたこともあり、教室の前を通ると「ロゴが変わったな」「フランス語も始めたんだ」など、チェックするくらいファンでしたから(笑)。

デザインにあたっては、自分が通っていたころを思い出しながら、「くもんといえば、正解した時にもらう大きな◯(マル)だ」と、まず最初に◯をモチーフにしたものがひらめきました。先生と子どもが◯でつながっているイメージなど、◯だけでもたくさんのアイデアが浮かびました。ほかにも、「ちいさい子が最初に始める勉強」というイメージから、小さな手と鉛筆をモチーフにしたりと、アイデアのスケッチはノート1冊分以上になりました。

私はまず、浮かんだアイデアを手書きでどんどんスケッチし、そこから拾い上げてデザイン化していきます。いくつものスケッチを見ながら、「このデザインで想いを表現できるだろうか」と検証を重ね、良いと思える複数の案を、今度はパソコンで形にしていきます。もちろん、クライアントに提示したあとも、さらにブラッシュアップを重ねます。

KUMONの場合、「世界への広がり」「学びの進化・深化」「グローバルな知恵の還流」という3つの想いをうかがっていたので、それが直感的に伝わるようにデザインを練りました。絞り込んで提案したのは約20案。最終的に選んでいただいたロゴデザインは、地球のモチーフを真ん中にして、地球上のさまざまな場所で学び続ける公文の広がりを表現したものです。

小野圭介さん

KUMONブルーから暖色系へと変化していく色彩は、学びをさらに進化・深化させていくことをイメージしたと同時に、指導者の情熱を表現しました。また、60の「6」の先が伸びていることで勢いを表し、地球の回りをKUMONの知恵がぐるぐる回っているイメージも表しています。

私が学んでいた当時の公文式のイメージから、さらに発展したものになったと思っています。

小野さんの今後の夢とは?

コミュニケーションが円滑になるような
デザインをつくり続けたい

小野圭介さん

3年前に娘が誕生しました。子どもが生まれたことで、「ベビーカーだとこんな道は不便だな」「子ども用品にはこんなのがあるんだ」など、違った視点を持てるようになったのは、発想の広がりに役立っていると感じます。

子どもを育てるうえでは、私自身、興味があったことを「やってみたら」と親が背中を押してくれ、自由に育てられてきたので、娘も型にはめることなく、娘なりの良さを見つけ、そこを伸ばすようにしたいと思っています。

子どもが好きなこと、興味のあることを見つけるには、親がいろいろなものを見せたり経験させたりすることが、ある程度は必要かもしれません。私のデザインへの興味も父が発端でしたから。ただ、最初のきっかけは親でも、最終的にそれをずっと好きになるか、その道に進むかは本人次第。本人がどれだけ熱中できるかだと思います。

その意味でも、沢山の可能性を持つ子どもたちには、もし好きでい続けられるようなものが見つかったら、自分で大切に育んでほしいと願っています。熱意や興味を持ち続けていれば、それが仕事でも趣味でも、いきいきとした人生を送れるのではないかと思います。

保護者や指導者の方は、身近な大人として、それぞれの子どもの持つ良さを見守り、うまくできたら沢山ほめてあげ、良さを伸ばすように寄り添ってあげてほしいと思います。誰でも好きなことを伸ばせたら、生きる自信につながっていくはずですから。

私自身は、生涯、デザインに関われれば幸せだなと思っています。そのロゴがついた名刺を手にすることで会話がはずんだり、営業しやすくなったり、勇気を持てたり……そんなコミュニケーションが円滑になるようなデザインをつくり続けたいですね。海外での仕事にも積極的に挑戦したいと思います。

じつはもう1つ、夢があります。それは、物語や絵本を書くこと。仕事で培ってきたデザイン力と、幼少期からの本好きで得た文章力と、2つの「好き」を組み合わせ、実現できるよう、機会があればそこにもチャレンジしてみたいと考えています。

前編を読む

関連リンクONO BRAND DESIGNウェブサイトKUMON創立60周年ページ


小野圭介さん  

前編のインタビューから

-ブランディングデザインという仕事
-小野さんが公文式学習で得て今の仕事にも活きている力とは?
-小野さんが今の道に進む転機となった出来事とは?

前編を読む

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