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Vol.568 2025.10.07

スイス公文学園高等部-開校35周年記念式典

世界への扉は、スイスアルプスのレザンにあった
スイス公文学園高等部 35周年、グローバルな学びの原点を振り返る

スイス公文学園高等部(Kumon Leysin Academy of Switzerland:略称KLAS)は、スイス・レザンにある全寮制の共学校で、「日本の高等学校と同等の卒業資格を取得できる」文部科学省認定の私立在外教育施設です。
同窓会の呼びかけにより、2025年9月5日(金)に開校35周年記念式典がKLASで開催されました。卒業生とそのご家族、元教職員、在校生、現教職員など約190名がスイス・レザンに集まり、先生との再会、在校生および卒業生同士の交流など、世代を超えて笑顔と絆が広がる一日となりました。記念式典の様子とともに、教職員や参加された卒業生が感じているKLASの魅力についてお伝えします。

目次

    開校にかけた願い

    開校にかけた願い

    「どうしてスイスに学校があるのですか?」と聞かれることがあります。日本が果たすべき役割を考える時、語学力・異文化理解・国際的な時事感覚などの面で、真の意味で国際性を養うためにはどのような教育が必要になるのか。また、人は異文化に触れた際に、どのようなプロセスでそのことを理解し、そして成長していくのかを、生徒たちとともに実践しながら学んでいきたいと考えた公文公は、1990年にスイス・レザンの地にスイス公文学園高等部を開校しました。
    こうした願いを実現するため、永世中立国として地理的・歴史的にも多様性と安全性を兼ね備えた立地にあるスイスに学校を開校した経緯があります。スイス国内ではドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つの言語が使用されており、また他国との行き来を通じて様々な体験をすることにより、グローバルな感覚を育みやすい環境にあります。

    35周年記念式典:Respect others(他者を理解する)のKLAS精神は、卒業生から在校生に引き継がれて

    レザンの景色
    レザンの景色

    オープニングはドローンで撮影されたスイス・レザンの山並みから始まり、KLASが豊かな自然とスイスアルプスが広がる山岳リゾート地に存在していることがダイナミックに伝わる映像から始まりました。

    卒業生のスピーチ

    在校生からは、12年生(高3)の生徒会2名の生徒よりKLASの伝統的行事であるオープンハウス(文化祭)、生徒たちが創りあげる英語ミュージカル、スキーやスノーボード等のスノーアクティビティ、エーグル城での卒業式などの様子が紹介され、卒業生の懐かしむ声が聞こえました。

    卒業生のスピーチでは、2020年に卒業した池上さんより、学校生活におけるモット―である「Respect Others(他者を理解する)」は今も大切な姿勢として語り継がれていることが語られました。また1,000名を超える卒業生が世界の様々な場所にいても交流できる同窓会サイト「KLAS nexus」の紹介もあり、KLASコミュニティーのつながりと深まりを感じられる温かい式典となりました。

    教職員メッセージ:寮生活や多彩な経験によって、だれもがリーダーとなって磨かれ、人間的に成長できる場所

    西塚校長、教職員にKLASで大切にしている学びや魅力を聞きました。

    西塚校長

    ■西塚校長

    35周年記念式典は、多くの卒業生がレザンの街を訪れ、まさに「Homecoming」という言葉がぴったりな再会となりました。このような学校は、現代においてますますその存在意義を増していると感じます。

    この学校で学ぶことによって、生徒たちは3年間で目覚ましい成長を遂げます。その成長の仕方は一人ひとり異なりますが、共通して身につくことは、「他者と深く関わるコミュニケーション能力」、「相手を深く思いやる心」、そして「共に目標を達成するために協働する力」です。さらに、どのようなバックグラウンドをもつ人でも温かく迎え入れ、支え合うコミュニティーを創造する力は、社会に出てから大きな財産となります。

    また、本校は生徒たちが様々な場所を訪れ、経験を積むことに重きを置いており、それはほかに類を見ません。特に、高校3年生の1学期を使って取り組む、カナダや日本、その他の国から多彩な生徒が参加するSummer in Leysin(SIL)は、世界中どこを探しても見当たらない唯一無二のプログラムだと自負しています。誰もが自分らしく輝き、何かに心から打ち込める場所を見つけられる。それがKLASの大きな魅力です。

    Southworth先生

    ■Southworth先生

    生徒はKLASでの学びを通じて多様なスキルと強みを身につけます。チームや委員会の一員として役割を果たしたり、集団を率いたりする中で、自分の意見を、その主張の裏付けを含めて伝える方法を習得します。また、責任と時間管理とともに、他者と共生し、たとえ「常識」だと思っても自分の考えが唯一ではないことを学びます。

    さらに、本校のカリキュラムは日本で学ぶ内容と同等の科目を履修できると同時に、外国語や異文化に関する知識を広げるために日本では受講できない多様な科目も数多く選択可能です。加えて、KLASでは、スイス国内や近隣諸国への旅行、さらには他の大陸への旅行など、スイスの国内外を問わず、数多くの土地を訪れる機会があります。

    こうした様々なプログラムの中で、生徒たちがそれぞれの場所で輝く瞬間を見られること、それが私たちにとって一番の喜びです。KLASは「Family」、私たちは一つの大きな家族のような存在です。

    Hansen先生

    ■Hansen先生(国際教育部長)

    KLASの最大の強みは「協働」です。生徒たちはコミュニティー全体を結びつける大規模なイベントを共に創り上げます。代表例を3つ挙げます。

    ①クモリンピック (体育祭)– 数週間にわたる準備を経て、3チームが競技・ダンス・ポスターコンテストで競い合います。
    ②オープンハウス(文化祭) – 生徒が日本文化を地域に紹介する日。教職員の指導のもと、ほぼ全てのプログラムを生徒自身が企画・運営します。
    ③英語ミュージカル – 数か月にわたる最大規模のプロジェクトの一つ。舞台出演、舞台裏作業、セットや衣装制作など、生徒があらゆる面で参加します。

    これらのイベントは、生徒がリーダーシップを発揮し、創造し、輝く機会を与えます。学業面で苦労している生徒でも、教室の外で自分の強みを発見することがよくあります。教室では内気に見えた生徒がリーダーとして立ち上がり、ダンスパフォーマンスで私たちを驚かせたり、こうした共同体験を通じて新たな情熱を見出したりする姿を私は見てきました。KLASでは、大きな経験や学びの場として、素晴らしい旅行の機会を提供しています。生徒たちはヨーロッパ各地を旅し、南アフリカ、ネパール、インドへの奉仕活動に参加し、自らの文化をはるかに超えた世界を探求します。

    KLASでは、生徒たちは互いを尊重し、前向きな姿勢で協力することを学びます。彼らの前向きなエネルギーと協調性には、いつも感銘を受けています。また、KLASを通して自己省察力と自立性も育まれます。寮生活と学びはしなやかな強さと適応力を養い、スイスでの生活はグローバルな視座を授けます。こうした寮生活や学びを通じ、自信に満ちた開かれた若者へと成長しています。

    岩淵先生

    ■岩淵先生(進路部長)

    KLASの特長のひとつは、寮生活を主軸にした人間的成長、内面的成長です。世の中が、少子化、核家族化、またAIの発達も相まって人と接する機会が少なくなってきています。特にコロナ禍以降はそれを顕著に感じます。

    KLASの寮生活では、自分の周囲には他者がいるという事実を目の当たりにすることで、世界は自分一人で回っているのではないことに気づきます。寮生活は良くも悪くも楽しいことばかりではありません。辛いこともあるし、時には苦しい衝突もあります。親元から離れており、先生や寮父母など限られた人しかいませんので、助け合わないといけない部分もあります。日本にも簡単に帰れないこの立地が、ヨーロッパの真ん中で、しかも街中でなく、この自然豊かな場所にあるというのが絶妙なんです。

    学校の設計が、日本の高校の何十倍という密度で人と関わらせるようにつくられています。他者と接する分量で成長も違ってくると思います。現代は視野が狭くなって自分の世界だけで生きていくという人が増えていると感じています。そういう意味でKLASは貴重な存在ですし、生徒たちは、寮生活を通して精神的に度量の広い、吸収力のある、問題解決力・人間力のある人材に育っていくのです。

    Watson先生

    ■Watson先生(生徒部長、模擬国連担当)

    KLASのイベントの一つにMUN(模擬国連)活動があります。これは単なる活動ではなく、数年間かけて成長できる実践的なプログラムです。

    MUNは、実際にやってみないと学べないということ、例えば、会議で他校の生徒と1時間でも交流することが、学校で理論を学ぶよりも多くのことを学べることを生徒たちは体感しています。MUNに参加するために準備をしてきた生徒も、参加後は皆「もっと上手くできたはずだ」「次はリベンジしたい」と感じ、「十分ではなかった」という感覚は決して消えません。この思いが、翌年のMUNの参加の後押しになり、英語力やリサーチ力、また発言力をパワーアップさせ、彼らの能力を劇的に変化させていくのです。

    現生徒会長と副会長はMUNに参加したことで、その後クモリンピックのキャプテンやオープンハウスのリーダーになりたいと望むようになりました。このようにして生徒は、メンバーを率いるリーダーになっていくのです。こうした参加意欲は非常に重要で有用なスキルだと思います。MUNに参加することで、まるで人生が変わるような経験をしたと思う人が少なくないのです。

    卒業生メッセージ:一生の宝物、未来を創る原点が私たちのKLAS!

    KLASの卒業生である堀越花さん(2016年卒業・24期)、井門孝紀さんと池上慶徳さん(2020年卒業・28期)の3名にKLAS入学を決めたきっかけ、現在にも活かせている学び、入学を検討中の方へのメッセージなどを伺いました。

    堀越花さん

    ■堀越さん:KLAS入学のきっかけは、公文式教室で学んでいて、母親の勧めでKLASのサマースクールに中1と中3の時に2回参加したことでした。在校生の先輩が校内を案内してくれて、男女共にとても仲よく話をしている様子などを見て、とても温かい雰囲気を感じました。スイスの地でも、寮生活を通して孤独にならずに高校生活を頑張れそうとワクワクしたのを覚えています。

    在学中に2回ボランティアトリップに参加したのですが、ザンビアへのボランティアでは、現地の診療所で働いている国際看護師さんが子どもの診療をされていました。もともと子どもが好きだったので、その看護師さんからお話を伺うことで、看護師というお仕事も子どもと接していくいい職業になるのかなと気づくことができました。それがずっと心の中にあって、今は大学病院の小児科で看護師をしています。

    KLASの精神であるRespect Othersは、仕事をする上で子どもの患者さんと接する際にもとても大切にしている考え方です。例えば、新人の頃、小さな子どもがケガをして病院に受診に来られた際、ついその子どものご両親に「お子さんの痛いところはどこですか?どんな症状がありますか?」と聞いてしまっていました。でも痛いのはその子どもであって、処置を受けるのも、苦い薬を飲むのも子どもなのです。子どもがいずれ自分で病状やお薬を管理していくことも考えると、やっぱり子どもを尊重してしっかり観察して、見ていく必要があると日々感じています。卒業してから、よりRespect Othersの精神が大事なことを実感しています。

    井門孝紀さん

    ■井門さん:私は小中高一貫の私立進学校に通っていました。小学校2年生からフェンシングをしていて、結構頑張っていたのですが、中3の頃に全国大会で結果を出せなくて挫折しました。勉強もあまり好きになれず、成績も悪くなり、高校に進級できなくなってしまいました。祖父に相談をすると「お前は自立しないといけない」と言われ、親元を離れる選択を考えました。その頃、通っていたくもんの先生からKLASを紹介していただきました。KLASの面接では、「当たり前のことができない人間ですが、寮生活で一人前の人間になれるように頑張りたいんです」と話したところ、先生が立ち上がって「入学式で会おう」と握手してくれて、とても嬉しかったのを覚えています。

    入学後の寮生活では、先輩方のサポート体制が素晴らしく、それぞれの部屋で担当があり、生活のこと、勉強のことをいつでも聞けたので、すぐに馴染めました。また、すごいのは生徒の自主性が強く、自立心がある仲間ばかりで、何かやりたいことがあったら、自分で企画して学校を巻き込んで実施できること。私は友人たちとイングリッシュデーをやろう!という企画を立ち上げて、学校全体で英語しか話さないという日をつくりました。

    生徒たちの自主性を見守るという体制があるからこそ、やりたいと思ったことができました。道を外れそうになったときは先生方が止めて軌道修正してくれるので、安心して挑戦できる環境が整っており、素晴らしいと思います。また、スタディーホールという寮内で勉強する時間が設定されており、この時間が私にとって学習習慣を身につけることができる良い機会となっていました。最終的にはGPA(評定平均)4.6まで上がり、海外の大学に進学することができました。

    現在は就職活動も終わり、2026年4月から情報通信系の日本大手企業に就職予定です。人間的にも学力面でも変化した私の姿には、両親も大変驚いていました。私を成長させてくれたKLASには本当に感謝しかありません。

    池上慶さん

    ■池上さん:KLAS入学のきっかけは、中3の時にサマースクールに参加したことでした。小さい頃から海外旅行に連れて行ってもらっていたこともあり、海外に関心がありました。中学生の多感な時期で、今の環境を抜け出して新しい環境に挑戦したいと思っていた時に、母親が機内誌の広告で見たKLASを勧めてくれて、行こうと決めました。海外の高校進学に不安がなかったわけではありませんが、サマースクールに参加したことで、この学校に入学したいという気持ちが確信に変わりました。

    KLASの魅力の1つ目は何といっても、国際性が育まれることです。12年生(高3)の時にグローブデー(地球を考える日)という隣のアメリカンスクールが主催する行事に参加しました。その1日は先生方の講義もありましたし、生徒たちが環境問題に対して研究した内容を発表するという機会もありました。その生徒発表グループのチームリーダーを担いました。メンバーを率いる経験は試行錯誤の連続でしたが、とても貴重な経験でした。また、研究題材や研究手法などはすべて私たちに委ねられていて、サポートしてくれる先生はここぞ!という時にだけ少しコメントをくれます。まさに生徒の主体性を尊重してくれる先生方がKLASには多いと思います。

    さまざまな行事がある中で生徒が何らかのリーダーになるという機会がすごく多いので、自主的に参加できる経験を誰もが積むことのできるKLASの3年間は大きく成長できます。私自身、この経験から平和研究に興味が出て、卒業後の現在は大学院修士課程で日韓問題の研究をしています。国内・海外さまざまな学会に足を運ぶことも多く、英語での発表などはKLASで培った実践的英語力がベースになっていると感じています。将来は、研究者の道を究めたいと思っています。

    KLASは「私の未来を創る原点」で、未来の種を植えて育ててくれた土壌のようなところでした。KLASで学んだことは、在学中より卒業した後に自分の進路を歩んでいく中で気づくような気がしています。「今こうできるのって、KLASのあの時の経験があったから」と思うことがあります。高校3年間をKLASで過ごすという決断は、人生を変える選択です。KLASに行くという選択をして本当に良かったと思っています。それがなければ、今のような道には進んでいません。ぜひ、KLASに興味のある方はスイスの地へ足を運んですばらしさを実感してください。


    入学を希望されている方へ(西塚校長より)「この学校では、ほかでは決して味わうことのできない、特別な3年間を過ごすことができます。生涯にわたる友情を育みたいと願う人、「Gateway to the World」(世界への入り口)をくぐり、グローバルな舞台で活躍したい人、そしてまだ気づいていない自分自身の可能性と出合い、輝きたい人に、心からおすすめしたい学校です。スイス・レザンの美しい山の上で、皆様とお会いできる日を心待ちにしています」

    35周年を迎えたKLASは、一人ひとりの能力を最大限に伸ばし、夢に向かって自らの力で世界へ羽ばたいていける人材を育み、次の世代へと学びと絆をつないでいきます。

    関連リンク スイス公文学園高等部 公式サイト スイス公文学園高等部(KLAS)Facebookページ スイス公文学園高等部(KLAS)Instagramページ 【公式】スイス公文学園高等部 – YouTube KLAS卒業生交流サイト #スイス公文学園|KUMON now! 

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