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Vol.411 2021.08.03

浮世絵に描かれた江戸時代の学び「鳥つくし」

手軽に入手できた「物尽し絵」で
物の名前と一緒に読み方の習得
学びに使われた浮世絵~

KUMONでは1986年から子ども文化研究のために浮世絵を中心とした文化史料を収集・研究してきました。今回は「物尽し絵」と言われる浮世絵を紹介します。1項目ごとに1枚の絵になっているもので、書籍としてまとめられた図鑑よりは安価で手に入れることができ、子どもたちが物の名前を覚えるとともに文字を覚えるのにも一役買っていたようです。1枚の浮世絵をじっくりと見ながら、江戸時代の学びを一緒に味わってみましょう。

目次

動植物や事物を紹介する浮世絵「物尽し絵」とは

日本で初の博物図鑑は寛永6(1666)年に京都で出版された中村惕斎(なかむらてきさい)の「訓蒙図彙」(きんもうずい)です。「訓蒙図彙」は巻一の「天文」から巻二十の「草花」まであり、全128項目の図像が、その正名、異名、和名、俗称とともに配されています。また、漢字にはふりがなもついているため、寺子屋での文字習得に大変有効なものだったようです。
寺子屋での学びに大きく影響を与えた貝原益軒も、体系的教育書の『和俗童子訓(わぞくどうじくん)』の中で「訓蒙図彙」の使用を推奨しています。
「訓蒙図彙」の人気の高まりにより、その後も時代を通して改訂版や類似の本が出回ったといい、動植物や事物を紹介する浮世絵である「物尽し絵」にも影響を与えたと思われます。

『新板鳥つくし』「新板鳥つくし」歌川重宣
(弘化4年~嘉永5年/1847~52年)

今回はこの「物尽し絵」の中から公文所蔵の一枚をご紹介したいと思います。「物尽し絵」にはそれぞれ「魚」「鳥」「虫」「道具」「おもちゃ」などのテーマが設けられており、一枚の紙面いっぱいに同じ種類の図像が数多く描かれています。そして全てに平仮名で名前が付されているので、絵と結び付けることで多く語彙を覚えられるように工夫されています。先に紹介した「訓蒙図彙」と比べると、はるかに手軽に入手できるため、当時の寺子屋で学ぶ子どもたちにとっては語彙習得の強い味方であったことが想像できます。
それでは歌川重宣の「新板鳥つくし」を見てみましょう。この絵の中には何と40種もの鳥がリアルに描かれており、当時では珍しいカナリヤやオウムなどの外来種も描かれています。江戸時代の中期になると一部の富裕層の間では珍しい外来種の鳥の飼育が流行っていたこともあり、彼らの間で博物学的知識が高まる一方で、庶民やその子どもたちにも「物尽し絵」を通して幅広い知識が広がりをみせていたと思われます。

「新板鳥つくし」に描かれている鳥たちを紹介します。※原文表記(現代表記)
ほうわう(ほうおう)・つる・なべつる・ほととぎす・うそ・とんび・つばめ・しぎ・るり・すずめ・がん・たか・四十から(シジュウカラ)・かなりや(カナリヤ)・きじ・かわせみ・さんじゃく・山から(山がら)・うぐいす・みみずく・はと・あふむ(オウム)・きんけい鳥・めじろ・からす・ふくろ(フクロウ)・ぶん鳥・にはとり(ニワトリ)・ひよとり(ひよどり)・しまひよ・かしとり(かしどり)・くじや(く)(クジャク)・おしどり・かも・う・みやこ鳥・せきれい・くいな・もず・さぎ全40種類

公文の浮世絵めじろ、からす、ふくろ、ぶん鳥、くじや(く)、
もず などの文字が見えます
公文の浮世絵にはとり、はと、ひよとり、しまひよ、おしどり、
かも などの文字が見えます

知っている鳥、初めて見る鳥様々だと思いますが、このような絵があると、楽しく名前や読み方を覚えられますね。

関連リンク くもん子ども浮世絵ミュージアム

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