公文式では学習を始めるにあたって必ず「学力診断テスト」をします。
そして、一定時間内にどれだけ正解できたか、解きかたは適切か、ミスがあればその原因はどこにあるかなど、さまざまな視点からその子どものその時点の学力状態を分析したうえで、学習の「出発点」を決定します。ですから年齢や学年にとらわれません。5、6年生であっても、あるいは中学生であっても小学校1、2年生の段階から学習を始めることもあります。
たとえば算数の場合、たし算やひき算からということになるわけですが、それはその子がたし算やひき算が全然できないからというわけではありません。そうではなくて、その子どもが負担を感じることなく、楽にできるということが、まず大事だからです。
今の学年よりかなり低いところからスタートすることによって、たとえ学校では悪い点ばかり取っている子どもでも、公文式の学習を始めてしばらくは百点ばかりとれます。「やれば、できる」という感覚が実感でき、今まで嫌いだった勉強もおもしろくなり、意欲と自信が湧いてきます。
意欲や自信と同時に、このすらすらできるやさしい段階で、集中力と作業能力を養うという目的があります。
入会時に同じ学力でも、たとえばむずかしい出発点とやさしい出発点の子どもをくらべると、最初のうちはむずかしい出発点の子どものほうが高い教材を学習していても、進み方はやさしい子どものほうが早いため、どんどんその差が縮まります。やがては並んでしまい、さらに追いついたほうが追い抜くというケースが圧倒的に多いのです。これは、学力そのものより、集中力と作業能力をつけた効果です。
出発点決定にあたってもう一つ重要なことは、半年後、1年後、さらには2年後には学習がどこまで進むか、あるいは進ませるべきかという「見通し」を立てるということです。その見通しに基づいて、学習者である子ども、そして保護者の方と十分に相談して学習の計画を立てます。このことを「見通しの共有」と呼んでいます。見通しを共有することによって、子どもは、今はまだこの段階を学習しているが、半年先、1年先、2年先にはこんな内容まで学習することになるという明確な目標と、そのときはこうなっているといった向上した自分のイメージを持つことができるようになります。
目標に向かって真剣に取り組んだとき、子どもの瞳は輝きます。その意欲が、先へ先へと進んでいく牽引力になるのです。
ですから公文式では、「見通しのない出発点は出発点に非ず」という創始者公文公の言葉を決して忘れないようにしながら出発点を決定するようにしています。
*このコラムは、1999年の広報誌『文』に掲載した記事の引用です。
関連リンク 誕生ストーリー 公文 公(くもん とおる)物語