公文式は家庭教育の立場から生まれた、個人別・能力別の学習法です。
ですから、学習指導に当たって最も留意するのは、その子の現時点の能力であって、年齢や学年にはほとんどとらわれません。
教材はスモールステップで自習で進んでいけるように緻密に構成されていますから、いちいち他人に教えてもらわなくても自力で学習を進めていくことが可能です。そして、その教材は高校で学習するためにどうしても欠くことのできない内容に絞り込んで非常にスリムに構成されています。たとえば、算数・数学教材は高校数学に必要な計算力の養成に的を絞って、学校で習う内容の三分の一程度に絞り込んであるというように。
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したがって多くの場合、子どもたちは自分の今の学年相当より下のらくにできるところから学習を始めます。しばらくすると学年相当のところに追いつき、その後は学年を越えて、学校ではまだ習っていない未知の内容を自分の力で進んでいくようになります。
このような体験を積み重ねて、いちいち教わらなくても自力で進んでいけるのだと知ったとき、子どもの瞳は輝きます。もっと先のことが知りたい、できるようになりたいという意欲が湧いてきます。
ただし、やっと一学年分先へ進んだぐらいですと、学校の勉強がらくになり、成績や態度がよくなったという成果が認められるのがせいぜいかもしれません。それでは、いつまでたっても学校の授業から逃れることができず、授業以上の感覚や世界を知ることはできません。
本当に学校の成績を心配することなく、子どもが自分のやりたいことに興味をもち、思い切りそれに挑戦していけるように育てるには能力にかなりの余裕が必要です。二学年、三学年分先へ進んでくると、子どもは学力ばかりでなく自主性、積極性、判断力、創造性などにおいても、めざましい進歩を見せるようになります。
公文式が「自学自習で高校教材」を目標に掲げて、学年を越えたところを自習させることによって育成したいのは、そのような自信と挑戦力――未知なる自らの生きる道を、自ら切り拓いていこうとする、自立の精神なのです。
*このコラムは、1999年の広報誌『文』に掲載した記事の引用です。
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