第63期決算のご報告2024年4月1日~2025年3月31日2024年4月1日~2025年3月31日
1. ごあいさつ
事業の経過および成果
当連結会計年度における社会・経済環境は、国内外で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が和らぎ経済活動が正常化する中、国内におけるマイナス金利政策の解除や大幅な為替変動等が企業活動に影響を及ぼしています。また、国内では個人消費が回復傾向を示す一方で、インフレの進行により消費者の節約志向が高まり、費用対効果がより重視されるなど、消費者の行動に大きな影響を与えています。
そのような事業環境の変化の中、当社は2024年6月より国内教室事業において、タブレット学習“KUMON CONNECT”(以降KC)の正式な導入を一部の教室から開始いたしました。KCは海外教室事業において2023年1月に正式事業として開始しており、その知見を生かしながら国内においても普及を拡大してまいります。
海外におけるKCの普及は学習者数・導入教室数ともに増加しており、2024年12月度時点で学習者数195,461名(前年比182.4%)、導入教室数6,299教室(前年比161.3%)、展開国・地域は55となりました。KC学習者数が多い教室群ほど、生徒数全体が増えている教室の割合が高いという傾向は初年度から継続しており、KC学習者を含む生徒数全体の増加に寄与しています。
国内においては2024年6月の正式導入より10か月を経て、2025年3月度時点で学習者数36,000名、導入教室数4,368教室となりました。導入が広がる中で、KC学習者100名以上やKC学習者比率80%超といった教室の事例も生まれ、先進事例からの知見の還流が進んでいます。また指導者との対話にKC学習者のデータを活用する社員が増加し、指導へのタイムリーな関わりも増えつつあるなど、KCの活用を通じた指導力や学習成果の向上につなげる取り組みを進めています。
公文式学習において、家庭での宿題は学習効果向上に大きく影響する要素の一つであると同時に、宿題採点は教室運営において大きな業務割合を占めます。この宿題の採点と返却をICT活用により迅速に行うべくKUMON GLOBAL GRADING CENTER(以降KGGC)を立ち上げ3年間の試験運用を行い、2025年1月より海外教室事業の指導者に対する有償のサービスとして開始いたしました。これはKC学習者が家庭で学習しオンラインで提出した宿題を、ベトナム、インド、フィリピン、メキシコおよびインドネシアに設置したKGGCで採点を行い、学習者にオンラインで返却するというものです。これにより公文式教室における採点業務の軽減を図るとともに、家庭学習に対する迅速なフィードバックを可能にすることで学習者の意欲と学習効果の向上に寄与します。
海外教室事業の成果としては、生徒数は5地域(北米、南米、アジア・オセアニア、中国、ヨーロッパ・アフリカ)全ての合計が昨年に引き続き前年比100%を超え、5地域と中東・パキスタンの12月度合計で生徒数1,197,493名(前年比104.1%)、教室数8,384教室(前年比102.5%)となりました。
国内教室事業の成果としては、2024年7月に3教科合計生徒数が2018年11月以来5年8か月ぶりに前年同月を超え、教室の設置については、新設設置が前年比107.1%、開設数合計は、前年比121.0%となり過去10年間において2番目の実績となりました。
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KUMONグループにおける成果としては、株式会社くもん出版が展開するくもん出版商品のコーナー「KUMONすくえあ」が403店舗に設置され、同コーナーの売上が前年比116%となり、売場拡大および売上増に好影響を及ぼしています。その結果、株式会社くもん出版における営業利益は84百万円となり、前年度より2億22百万円改善し黒字化を果たしております。
また、株式会社公文エルアイエルが2024年4月から開始した65歳からの公文の書写「シニア書写教室」は、450教室で開設済または開設予定となっております。新たな取り組みとしては、生涯学習コンテンツの一つとして1985年に開発され2003年に事業を停止していた公文囲碁に関して、世界約150の国・地域でオンライン囲碁対局サービスを展開する株式会社パンダネットとライセンス契約を締結いたしました。
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社会課題への貢献としては、SDGsの目標4に掲げられる「質の高い教育をみんなに」、目標17の「パートナーシップで目標を達成」を目指すものとして、ネパールにおける公立・私立学校へのKC学習のライセンス契約に基づく事業展開や、株式会社三井住友フィナンシャルグループおよび一般財団法人ファーストリテイリング財団との連携による日本における難民子女への教育機会の提供を開始しております。
なお、社員の健康維持・増進の取り組みを継続的に実践しており、日本健康会議より健康経営優良法人として認定された大規模法人のうち上位法人に付与される「健康経営優良法人2025ホワイト500」の認定を受けております。
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以上の結果、当連結会計年度の売上高は、940億39百万円と、前連結会計年度に比べ64億50百万円増加しました(前期比7.4%増)。営業利益は165億83百万円(前期比19.8%増)、経常利益は167億17百万円(前期比8.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は117億63百万円(前期比11.6%減)と増収減益となりました。営業利益の増加は、主として海外連結子会社の学習者数の増加によります。また、親会社株主に帰属する当期純利益の減少は、前連結会計年度は円安による為替差益が生じたところ当連結会計年度は円高による為替差損が生じたこと等によります。
なお、2025年3月末現在の全世界での学習者数は、前年より1万4千名増の357万名となり、海外連結子会社の2025年3月末現在の学習者数は、前年より5万2千名増の123万1千名となりました。
株式会社 公文教育研究会
代表取締役社長 田中三教