第62期決算のご報告2023年4月1日~2024年3月31日2023年4月1日~2024年3月31日

1. ごあいさつ

事業の経過および成果

当連結会計年度における社会・経済環境は、国内外で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の直接的影響は沈静化する一方、消費性向や価値観の変化は、顧客の行動に不可逆的な影響を及ぼしています。また、前期から続く高いインフレ傾向の中、長期化するウクライナ紛争の影響もあり、物価・人件費の上昇が経済活動に影を落としています。国内においては、前期からの円安傾向がさらに進み、経済・企業動向に大きく影響しています。

そのような環境変化の中、KUMONグループは、タブレット学習 “KUMON CONNECT”(以降KC)を、まず海外教室事業において2023年1月に正式事業として開始いたしました。KCでは、解答結果だけでなく解き方のプロセスをインターネット経由で即時かつ逐次に把握できるため、教室外での学習に対しても、距離と時間を越えて、きめ細かい学習の個別最適化が可能になります。KCの展開の先に目指すのは、KCの活用により磨かれた“人”の指導力、観察眼や対応力を、紙教材での学習者にも活かすことで、全ての学習者の学習成果の向上、学習の実感価値の向上を実現することです。


海外教室事業では、計画を超えてKCの普及が進んでおり、12月度時点で、KCの学習者は107,182名(計画比112.3%)、同導入教室数は3,906教室(計画比116.0%)、同展開国・地域は54にまで広がっています。
このKCの日本国内への展開に向け、2023年4月から、国内教室事業でのモニター検証活動も開始しています(2024年3月度 モニター教室466教室、KC学習者数6,862名)。

KCを起点として、学習成果の向上、学習の実感価値の向上への取り組みを強化していることは、海外教室事業全体に好影響を及ぼしています。海外教室事業の成果としては、生徒数が5地域(北米、南米、アジア・オセアニア、中国、ヨーロッパ・アフリカ)全てで前年比100%を超え、5地域と中東・パキスタンの12月度合計で、生徒数1,150,190名(前年比104.0%)、教室数8,177教室(前年比100.3%)となりました。

国内教室事業の成果としては、積年の顧客実感価値向上の取り組みが、前期においてJCSI日本版顧客満足度指数第3回調査の教育サービスの項にて顧客満足スコア上位企業の2位という評価に表れました。さらに当期は数値面にも成果が表れ始めています。新規入会・教科追加は単月で1・2・3月度3か月連続で全教科前年超えとなりました(英語は4か月連続、3月度数学116.9%、英語107.8%、国語111.3%)。それにより年度累計も3教科計・数学・国語で前年を超えています。加えて退会者は前年より少なく、生徒数は3月度で1,199,039名(前年比98.7%)となりました。

SDGs達成への貢献、社会課題解決への貢献が企業活動に問われる昨今に先駆けて、KUMONは、創業者の「教育を通じて世界平和に貢献する」という夢に向けて活動してまいりました。そして今日、SDGs・社会課題の中でも、とりわけ重要となる教育・人の成長支援を事業分野とするKUMONは、グループの全事業において、より貢献範囲を広げ、貢献の質を高める取り組みを進めています。

ネパールにおいては、私立学校へのKC学習パイロット導入を経て、2024年4月より正式展開がスタートしました。これによりKUMONが展開する国と地域は63となりました。
2022年から国内の遺児の学習支援で協働してきたあしなが育英会とは、ウガンダ共和国の遺児支援施設へのKC学習導入を開始しました。

国内でも、デロイトトーマツウェルビーイング財団が実施する「第2回子どもを未来につなげる奨学助成プログラム」への協力を通じ、こども食堂等を運営する団体に対し、公文式学習指導の研修、学習コンテンツの提供、および学習指導のフォローなどを行ってまいります。

これらは、SDGsの目標4に掲げられる「質の高い教育をみんなに」、目標17の「パートナーシップで目標を達成」を目指すものです。

これからの時代・社会の変化に対応するため、国内外で新たな学びの潮流が広がっています。その中でも「学習の個別最適化」「非認知能力の育成」といった潮流に対しては、公文式学習自体がはるか以前から実現していたものであるのに加え、前述のKCを起点にした学習成果向上の取り組みにより、さらに実践を進化させようとしています。

加えて、「英語の4技能の育成」の潮流に対しては、英語運用能力測定テスト「TOEFL Primary®」「TOEFL Junior®」に、ライティングテストを加え、すべてのTOEFL® Young Student Seriesが4技能テストとなります。受験者数も2020年度以降拡大の途をたどっています。

「STEAM教育」の潮流に対しては、株式会社くもん出版が、これからの時代を生きる子どもたちに学んでほしいテーマとしてSTEAM・プログラミング・マネジメントなどに関する書籍を刊行するとともに、全国の書店で展開しているくもん出版商品のコーナー「KUMONすくえあ」内に「KUMON Link」というコーナーを設け、このテーマでの学びの訴求を行っています。

最後に、あらゆる年齢層の学びへと貢献範囲を広げることは、単に少子化対策にとどまらず、「人生100年時代」の学びのニーズへの貢献、学びを通じた生きがい創造への貢献の意味を持ちます。とりわけ高齢者層の学びの支援は、生きがい創造とともに、脳機能の維持・改善にも寄与します。
学習療法センターは、50代以上の中高年・シニア世代に向けて、「KUMONの脳トレ」事業を開始しました。認知症を取り巻く個人の不安、社会課題に対し「認知症予防」の具体的方法を提供することで、貢献範囲を広げようとしています。
株式会社公文エルアイエルは、65歳からの公文の書写「シニア書写教室」を2024年4月に開始します。「きれいな文字を書く楽しさ」「教室内でのコミュニケーション」など書写を通じた新たなコミュニティを創り、地域社会に貢献したいと考えるものです。

以上のように、これからの時代・社会における対処すべき課題と、KUMONとして進むべき教育実践・社会貢献の道を見据えながら、様々な挑戦を具体的に進めています。その上で、社員の健康維持・増進の取り組みを戦略的に実践していることで、前年に続き日本健康会議より健康経営優良法人2024(大規模法人部門)に認定されましたことを、付記いたします。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は、875億88百万円と、前連結会計年度に比べ55億29百万円増加しました(前期比6.7%増)。営業利益は138億40百万円(前期比14.5%増)、経常利益は183億29百万円(前期比34.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は133億2百万円(前期比30.1%増)と増収増益となりました。営業利益の増加は、主として海外連結子会社の学習者数の増加によります。また、親会社株主に帰属する当期純利益の増加は、利率上昇による受取利息の増加や円安による外貨建債権の評価益が増加したこと等によります。

なお、2024年3月末現在の全世界での学習者数は、355万名となりました。

株式会社 公文教育研究会
代表取締役社長 田中三教

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