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Vol.139 2016.02.23

認知症高齢者が自分らしさを取り戻すために~学習療法とは(1)~

「学習療法」
介護現場になれるか

認知症によって家族の名前がわからなくなったり、自力排泄ができなくなったり、昼夜問わず徘徊するようになった……。皆さんは、このような状態になってしまった認知症高齢者が、自分を取り戻されていく姿を想像できますか?「学習療法」が生まれて10年以上が経ちますが、学習療法によってこれらの症状が改善したという事例が、学習療法を導入している全国の介護施設から数多く報告されています。今回は、この学習療法についてご紹介します。

目次

科学的エビデンス(根拠)がある「学習療法」

2025年、日本の認知症患者数は約700万人(2012年時点で約462万人)を超え、65歳以上の5人に1人が認知症になる可能性があるという試算が出ています。現在、薬物で認知症を完治させることや予防することはできません。そこで、認知症に効果があるといわれる「非薬物療法」にも注目が集まっています。

世の中に数多くある非薬物療法ですが、その中できちんとした実証のもと科学的なエビデンスがある療法は実はそう多くありません。「学習療法」は、科学的なエビデンスがある非薬物療法です。科学技術振興機構(JST)の助成を受けて2001年に始まった産・官・学による学習療法の実践研究では、グラフのように学習を実施した群と実施しなかった群に分けて比較したところ、6か月後に明らかな差が見られ、高齢者の脳機能が改善されていくことがわかりました。(下記グラフ参照)

FAB…前頭葉機能検査 MMSE…認知機能の検査

他にもある学習療法の効果とは?

目に見える効果も上げる「学習療法」

多くの場合、認知症には「周辺症状」が伴います。例えば、自力排泄ができなくなりおむつをする状態になる、歩行困難になり杖や車いすが必要になる、昼夜が逆転し夜中の徘徊が続く、など実生活に支障をきたす症状を指します。この「周辺症状」が認知症を恐れさせる一番の理由です。2001年から行われた実証実験では、「周辺症状」を劇的に改善する例が、次々と報告されました。例えば、101歳のIさんには、以下のような症状の改善が見られました。

【学習を始める前の状態】
・常時おむつ。入浴、更衣も介護。
・精神状態が不安定で、幻視、幻聴あり。
・昼夜逆転。夜間、不安な状態になると大声を出す、廊下を走り回る。朝まで壁をたたき続ける。

【学習後の状態(学習開始1か月後~8か月後)】
・排泄の訴え、尿意を感じると車いすでトイレへ。やがておむつも取れた。
・幻覚等の周辺症状がすっかりおさまった。
・夜間の徘徊もなくなり、夜は安眠できるようになった。

学習療法が国内1600以上の介護施設に導入されるようになって、このようなケースは決して珍しいものではないこともわかってきました。

学習療法で自分らしさを取り戻す
認知症高齢者たち

先日、あるテレビ取材で、認知症の症状の変化を追うための長期取材が行われました。取材対象は、当時介護施設に入所したばかりの女性。70代前半で認知症を発症され、入所直後はぬいぐるみを抱きながら、ずっと施設の中を徘徊、いっさい人と目を合わせることなく、止まっている時は無言で一点を見つめている状態でした。

3か月後、取材班が再び施設を訪れると、なんとその方から取材班に近づいてきて、声をかけられたのです。まだ、言葉は不明瞭でしたが、しっかりと目を合わせて笑顔で話しかけられました。取材班が驚いて施設の方にうかがうと、入所直後から学習療法を始め、1か月後には効果が見え始めたそうです。今では徘徊は止まり、夜もぐっすり眠ることができるようになり、人との関わりも積極的に持つようになられたとのことでした。

認知症高齢者が自分らしさを取り戻す力になりたい。学習療法を通じて、高齢化社会に貢献するため、これからも介護施設の方々とともに、学習療法の実践を積み重ねてまいります。


関連リンク 学習療法センター 認知症高齢者が自分らしさを取り戻すために~学習療法とは(2)~|KUMON now!

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