「夢」「学び」を支えるKUMONの「いま」を伝えます

記事検索
Vol.040 2014.06.10

学習療法シンポジウム

学習療法・脳の健康教室
最大限に活かす
学習療法シンポジウムin福岡(第10回全国学習療法研究大会)

音読と簡単な計算、そしてコミュニケーションで、認知症高齢者の脳機能の維持・改善をはかる「学習療法」。年に1回、その実践者が集まって「学習療法シンポジウム」が開催されます。今年は2014年5月11日(日)、福岡国際会議場(福岡市)で行われ、高齢者介護施設・地方自治体・NPO法人などの関係者と医師や研究者など、全国から1000名を超える方々が参加されました。

目次

学習療法とは
「音読」「簡単な計算」を中心とする教材を用い学習者と支援者がコミュニケーションを取りながら行うことにより、学習者の認知機能やコミュニケーション機能、身辺自立機能など前頭前野機能の維持改善をはかるもの」という「学習療法」の理論に基づき、教材や指導ノウハウといった認知症の改善・進行の抑制のためのプログラムを開発。現在、国内約1500の高齢者介護施設とアメリカの7施設(2014年3月現在)に導入されている。

くもん脳の健康教室とは
「学習療法」理論を健康な高齢者の認知症予防に活用したもので、専用(高齢者施設使用のものとは別)の教材を開発、主に自治体の介護予防事業として採用されており、全国約237の自治体、約400会場(2013年度)で実施されている。

 

学習療法の実践開始から10年、導入施設で生まれる“好循環”とは?

学習療法・脳の健康教室
10の分科会で、合計70を超える施設・法人・自治体が、それぞれの取り組みや実践を発表 学習療法・脳の健康教室
分科会と全体会での発表施設などによる「自施設の取り組み」紹介、九州と沖縄の施設紹介、全国に広がる「地域ネットワーク」紹介などのコーナーがあり、休憩時間には多数の方が来られました

学習療法は2001年から研究に着手、2004年からは本格的に事業としてスタートし、全国の高齢者介護施設での導入や自治体主催の「脳の健康教室」として実践されてきました。今年はその実践開始からちょうど10年という節目にあたるシンポジウムとなったため、テーマも「学習療法・脳の健康教室を最大限に活かす」として、原点をもう一度見直し、学習療法による認知症の改善事例をはじめ、それによる家族や施設スタッフの変化の事例など数多くの実践報告がありました。

今回のシンポジウムでは、午前中は10の分科会に分かれ、合計70を超える施設・法人・自治体からのご発表があり、下記のような事例報告が次々とされました。また、午後の全体会では参加者1000名超が一堂に会し、学習療法研究会の会長である東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太教授がファシリテーターとなって、代表的な施設などから5つのご発表とパネルディスカッションがありました。

≪午前中の事例報告から、ポイントを絞ってご紹介≫
*学習療法による認知症の維持(症状の現状維持)や改善はもちろんだが、
その波及効果も大きい
*波及効果
① 家族の心のケアにつながり、介護スタッフへの感謝の言葉が多くなる
② 家族からの感謝の言葉により、介護スタッフのモチベーションが高まる
③ モチベーションが高まることで、一人ひとりへのケアの質がより高まる
*結果、施設や法人全体が「人」を中心に、メンタル面でもケアの質の面でも好循環が生まれる

海を渡った「学習療法」

僕がジョンと呼ばれるまで
ドキュメンタリー映画『僕がジョンと呼ばれるまで』

学習療法は2011年5月に国境を越え、アメリカ合衆国オハイオ州クリーブランドの高齢者介護施設エライザ・ジェニングス(Eliza Jennings Senior Care Network、以下「EJ」)でのトライアル(実証実験)がスタート。23人の認知症高齢者が参加し、半年間におよぶ挑戦が始まりました。その様子を収録したドキュメンタリー映画が『僕がジョンとよばれるまで』で、この3月から全国主要都市で公開され、たいへんご好評をいただいています。

今回のシンポジウムでは、映画の舞台となったEJのCEOであるデボラ・ヒラーさんも参加され、映画が撮影された年からちょうど3年が経ち、その後のEJでの学習療法の進化や今後の展開などについてお話しいただきました。国内で見られる学習療法の効果や前述の「好循環」が、EJでもまったく同様に起こっているというお話も、もちろんありました。

そして、新たな展開の報告が。デボラさんは「EJだけではなく、今後は全米へこの学習療法を広めていくための活動を始めたい」とコメントされました。そのスタートとして、EJ内に、学習療法を中心に利用者へのサービス内容を個別にプログラムして提供するデイサービスセンターを設立。そこを拠点に、全米の施設に学習療法を紹介し、現時点で10以上の施設・法人で導入を検討中とのことでした。アメリカでは日本以上に多くの認知症高齢者(推定500万人以上)が存在するといわれています。学習療法が、その方自身はもちろん、介護をする家族、施設の介護スタッフのための福音となればうれしい限りです。

可能性の追求

前述のように、学習療法は「単に認知症高齢者の症状が維持・改善されるだけではなく、ご家族のケアとなり、ケアされたご家族が介護スタッフに感謝し…」という好循環が生まれています。このことは、学習療法を実践し始めた2004年には誰も気づかなかったことでした。しかし、10年という年月を経て、多くの施設や法人が、同様の体験を積み、学習療法への確信をより強くしています。このような施設や法人がもっと増えていくことで、より多くの認知症高齢者とそのご家族の笑顔がたくさんになることを願って、学習療法センターはさらなる活動を続けてまいります。

関連リンク 「心の復興」を遂げた他団体との協働 東日本大震災での支援活動|KUMON now!「学習療法」誕生秘話|KUMON now!ドキュメンタリー映画『僕がジョンと呼ばれるまで』メイキングストーリー|KUMON now!学習療法センター

    この記事を知人に薦める可能性は、
    どれくらいありますか?

    12345678910

    点数

    【任意】

    その点数の理由を教えていただけませんか?


    このアンケートは匿名で行われます。このアンケートにより個人情報を取得することはありません。

    関連記事

    バックナンバー

    © 2001 Kumon Institute of Education Co., Ltd. All Rights Reserved.