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Vol.046 2017.08.10

盆栽芸術家 秋山実さん

<後編>

素材を見極め先を見る
人も盆栽も「続ける」ことで
成長結果がついてくる

盆栽芸術家

秋山 実 (あきやま みのる)

1979年生まれ。山梨県韮崎市の秋山盆栽園2代目。山梨県立韮崎高校を卒業後、東京の春花園BONSAI美術館にて6年間の修業を終え、現在に至る。29歳の時に2008年度第34回日本盆栽作風展において、史上最年少で盆栽界の最高峰の賞である内閣総理大臣賞を受賞。また同年、日本さつき組合主催のプロの競技会である第20回皐樹展においても最高賞の皐樹展大賞を受賞。盆栽芸術家として日本のみならずヨーロッパをはじめ海外にてデモンストレーションやワークショップを通じて盆栽の普及・発展に尽力する。内閣総理大臣賞3回受賞。公文では、年長から小学校5年生まで算数・数学と国語を学習。

若くして盆栽界における数々の名誉ある賞を手にされている盆栽芸術家、秋山実さん。高校卒業後の6年間の修業を経て、現在はみずから顧客を開拓したり、海外で指導したりと精力的に活動されています。実家を離れての住み込みの修業生活では、辛いこともあったかと思いきや、「盆栽をやめたい」と思ったことは一度もなかったそう。秋山さんを引きつける盆栽の魅力とは?修業で得た学びや、盆栽家として技術を磨くために意識してきたことなどについてもうかがいました。

目次

盆栽家にとって大切な「素材を見極める力」
それは日々の積み重ねで身につけていく

秋山実さん

実家の盆栽園では、父のお客さまは父のことを信用して来てくださるわけで、私のことを信用してくれるとは限りません。ですから、イベントで自分が育てた盆栽を販売しながら、そこで出会ったお客さまの盆栽を預かったり、展示会に出展したりして、信用を高めていきました。

展示会で賞をとることによって技術的に自分の腕を認めていただき、それを積み重ねて実績を作っていくことが必要です。審査で入選しないと飾れない展示会もあり、入選率を上げていくよう技術を磨き続けなければなりません。

そのために必要なのは、素材を見極める力です。こんな素材からこういう作品を作ることができた、という経験を重ねれば重ねるほど、素材に対する感覚を高めていくことができます。手入れを続けていくと、元気がなかった木が、急に調子が良くなり風格が出てくることもあります。それは毎日の積み重ねによるもの。時間をかけて世話をすることで木が本来持っていた良さが出てくるのです。タイミングを見計らって適切な手入れをしていくことが大事になります。

突然スイッチが入るというのは、人にも起こりうることではないでしょうか。そこまでに積み重ねがあってこそ、ある時急に成長するように見えるのでしょう。子どもの場合、興味が出てきたそのタイミングで後押しするようなきっかけを作ってあげると、その子の可能性が広がってくると思います。

盆栽は、今の形は良くても何年後かには幹が太って面白みがなくなってしまう場合もあります。5年、10年、それ以上の先を見越して、「ここを切るとこうなるな」「ここは必要ないな」と考えながら作り上げていきます。そのために、常に「先を見る」ことを心がけてきました。

盆栽はとてもスパンの長い趣味。早いことがいいことのように言われる今の時代、盆栽のように時間をかけてやることは、時代に逆行しているのかもしれませんが、大事なことだと思います。公文式もそうですが、続けることによって結果はあとからついてくる。簡単にすぐにできてしまうものよりも、苦労してできたもののほうが、本人のためになるし、見えなかったことが見えてくるものだと思います。

秋山さんのこれからの目標とは?

国内の盆栽人口を増やし、業界を盛り上げていきたい

秋山実さん

師匠もそうでしたが、日本の盆栽家は外国でのイベントに招かれることがあります。私も年に数回、海外でレクチャーをしています。日本と海外とでは気候が異なり、木の種類も違ってきますから、その手入れの方法も勉強しながら教えています。現在もドイツ、イタリア、アメリカでの講習会が控えていますが、特に盛り上がっているのがヨーロッパです。EUは流通が自由化し、盆栽の流通量も多くなってきています。そうなると、人も動くようになるので、文化的な交流も増えてレベルが上がってきます。

日本との違いでおもしろいのは、日本人は1人で盆栽に向き合いますが、外国の方は2~3人で1つの木を手入れしたりする場合があり、大勢で楽しむ趣味であること。また、盆栽に取り組まれている若い方が日本より多いと感じます。日本も、「趣味は盆栽」という若手俳優さんも登場して、だんだんと“高齢者がやる趣味”というイメージではなくなってきましたが、もっとイメージアップできればいいなと思っています。

外国の方に日本の盆栽を知っていただきたいと思い、2年ほど前に秋山盆栽園のウェブサイトを英語併記にしました。海外に行くと、愛好家の方と知り合うこともあり、英語での案内があると喜ばれます。問い合わせもありますし、1~2か月の“盆栽留学”をする方もいて、うちでも受け入れています。日本で学んで帰国して、盆栽家として起業する方も多いのです。その際に大事になってくるのが「日本のどこで学んだか」ということ。「あの盆栽園で修業してきた」とブランドになるんです。ですから私も、自分のブランドを磨いていかねばなりません。

国内の盆栽家の多くは、海外に販路を広げることを考えています。植木の輸出量も増えているので、それに乗じて盆栽も発展してくれればと期待しています。ただ、地盤がしっかりしていなくてはならないと思うので、私自身は日本を中心に、国内で盆栽を盛り上げて盆栽人口を増やしたいと考えています。ユネスコの世界無形文化遺産への登録を目指す動きも出ていますし、その流れの中で私も協力していきたいと思っています。

秋山さんから子どもたちへのメッセージ

基礎をしっかり学び
何にでも興味をもって「知ること」を楽しもう

秋山実さん

盆栽は、雨が当たって日当たりが良くないと育ちません。つまり庭がなくてはならず、今の日本の住宅事情では、盆栽を楽しむのは難しい面もあります。最近はインテリアのような盆栽も登場していて、それはそれで盆栽の入り口となりますし、いろんな形があっていいと思います。しかし私たち盆栽家は、伝統的なスタイルを続けていかねばなりません。続けていないと、今の代で終わってしまいますから。

その意味では、後進を育てていくことも大事な仕事のひとつです。私の修業時代は、すべての木の種類の手入れができるだけでなく、営業も覚えるよう鍛えられましたが、今はその人ができることを伸ばせばいい、万能にする必要はないという考えが主流です。得意な分野を集中的にやることで、その人の個性が出てくるという考え方でしょう。しかし、早くから一分野にだけ特化してしまうと、得意な分野にしか興味がいかなくなってしまいます。ですから私自身は、ひと通り基礎はできたほうがいいと思います。そのうえで、自分がやりたい方向に伸ばしていくのがいいのではないでしょうか。

子どもたちには、何にでも興味をもって取り組み、「知ること」を楽しんでもらいたいと思っています。興味をもたないことには何も始まりませんから。知らないことを知ることによって、さらに別の知らないことが出てきます。それをまた知ることで、どんどん世界が広がっていく。

私の場合、仕事は盆栽ですが、盆栽では鉢という底に穴の空いた器を使い植え込みます。すると焼き物の世界にも興味が湧いてくる。そこからさらに焼き物の土や釉薬などに関心が出てくる。こんなふうに興味は無限に広がります。

私には2人の娘がいますが、盆栽への興味はどうかなあ。見守っていきたいと思います。この盆栽園は親父の代のもの。ですから、いずれ引っ越して自分の盆栽園を作る予定です。そこでは床の間を作って盆栽を飾るなど、盆栽を文化的に展示することを構想中です。実現したらぜひ見に来ていただきたいですね。

前編を読む

関連リンク
秋山盆栽園ウェブサイト


秋山実さん 

後編のインタビューから

-秋山さんが考える盆栽の魅力とは?
-秋山さんの子ども時代
-修業時代に養った大切な力とは?

前編を読む

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