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Vol.236 2017.11.21

貧困層の子どもたちへ持続的な教育支援を目指して

世界最大級の NGO団体
BRAC
との協働により、
バングラデシュに初の公文式教室開設!

2017年10月、バングラデシュの首都ダッカに同国初となる公文式教室が誕生しました。この教室は、KUMONにとって新たなチャレンジのスタートになります。今回は、そのチャレンジに至る経緯についてご紹介します。記事末尾にBRACアベド総裁をはじめ、このプロジェクトに携わったBRACの方々のインタビューを交えた動画を掲載しています。現地の様子とともに、ぜひご覧ください。

目次

はじまりは1本の電話から

2013年3月、KUMONに1本の電話がありました。現アジア・ビズ・フォーラム顧問の田丸周氏からの問い合わせで、「バングラデシュのNGO団体BRAC(※1)のアベド総裁が5月に来日するが、KUMONを訪問してぜひ教育についてのディスカッションをしたい」とのことでした。BRACといえば世界最大級のNGOで、その規模だけではなく、活動資金の多くを寄付に頼らずに自らの事業で収益を上げて貧困撲滅のために活動を広げていることで有名な稀有な組織です。当然私たちも以前から注目していましたが、先方から、しかもアベド総裁直々に訪問のご希望があることに驚きながら、日程を調整して角田前社長との会談が実現することとなりました。

BRACとKUMONとの関係構築にはもう一人の立役者がいます。跡見学園女子大学の笠原清志教授です。BRACのアベド総裁とは、ご自身の研究活動を通じて親交を深め、総裁から絶大な信頼を寄せられておられました。5月の会談にも立ち会っていただき、その後もBRACとKUMONの協働の後押しにご尽力いただきました。

共通する“理念”を持つ組織であることで意気投合

アベド総裁(右)と角田前社長
アベド総裁(右)と角田前社長

2013年5月の会談は、BRACとKUMONそれぞれの組織の紹介から始まりました。BRACアベド総裁ご夫妻からは、アベド総裁夫人の甥御さんの奥様がアメリカで公文式教室を開設された際に公文式を知り、その頃から公文式学習法に興味をもっていたとお聞かせくださいました。

BRACは、貧しい人々のためにさまざまな経済的・社会的プログラムを提供して彼らの生活を向上させ、社会を変えてきました。その根底にある想いは「人々の可能性を発揮できるようにするために」というもの。KUMONには、「われわれは 個々の人間に与えられている可能性を発見し その能力を最大限に伸ばすことにより 健全にして有能な人材の育成をはかり 地球社会に貢献する」という理念があります。

お互いの組織の目指すところを共有していく中で、改めて両者の“理念”が同じ方向を向いていること、またその理念が実践・活動レベルにまで浸透していることが感じられ、将来に向けた協働を目指すことを確認できた会談となりました。

※1・・・BRAC とは
1972年、人道的ニーズに応えるためにバングラデシュで設立。その後活動を広げ、現在は貧困削減を目的として、食糧生産、教育、保健、金融ビジネスなど多岐にわたる事業を行っている。バングラデシュの他、アフリカやアフガニスタンなどでも活動を展開している世界最大級のNGO。

具体的な協働のステップとは?

公文式学習により、バングラデシュの貧困層の子どもたちの能力が伸びた

公文式に取り組む BRAC スクールの子どもたち
公文式に取り組む BRAC スクールの子どもたち

BRACは貧困層向けの教育プログラムの提供を長年行ってきました。無償で運営されるBRACスクール(※2)は、同国内に約3万か所近くあります。ノンフォーマル教育でありながら、質の高い教育を提供し、同国の識字率の向上にも大きく貢献してきました。そんなBRACスクールで、公文式はどのように貢献できるのか?まずはそれを探ることから始まりました。それが2015年に取り組んだパイロットプロジェクトです。

新しい国や地域に公文式を展開をする際、私たちが最も大切にしているのは、現地の子どもたちが学習を続けられるように公文式を継続的に提供できるかどうかです。しかし、開発途上国の貧困層を対象にした持続的な事業展開については経験も浅いため、この取り組みには専門家のサポートが不可欠であると考えました。そこで、JICAの「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」(※2017年からは「途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」となっている)に応募し、採択されたことでJICAの支援を受けてプロジェクトを行うことが決まりました。

このプロジェクトでは、BRACスクールにおける公文式導入の効果検証を2015年8月から8か月間にわたって行いました。事前のバングラデシュの市場調査や現地ネットワークの構築はJETROの協力を受けて実施。効果検証は、東京大学大学院経済学研究科・澤田康幸教授(現アジア開発銀行チーフエコノミスト)の協力を得て行い、BRACスクール17校の3、4年生約500名を対象に公文式学習を実施して、生徒の認知能力と非認知能力の向上に与える効果について無作為化比較対照実験(Randomized Controlled Trial:RCT)で分析を行いました。

その結果、算数の習熟度や計算スピードが高まるとともに、自分に自信が持てるようになり、学習への意欲向上もみられました。また、BRACのアベド総裁をはじめ、プロジェクトメンバーやBRACスクールの教師に、実際に公文式で学んだ子どもたちが「自分で考えるようになった」「意欲的になった」「遅刻や欠席が減った」といった変化を感じていただきました。アベド総裁は後日、「この結果は、バングラデシュの貧困層の子どもたちもアメリカやヨーロッパなどの子どもたちと同じように能力がある、つまり、人々の本質的な能力には違いがないということを確認でき、自国の子どもたちも公文式からの恩恵を受けられることがわかった」と語られています。

貧困層の子どもたちが持続的に公文式学習を続けられることを目指して

まずは2年間の中高所得層向けの教室運営により、バングラデシュに公文式が受け入れられるかどうかを見極めます。将来的にBRACとの提携によってバングラデシュ全体への公文式提供が可能となるモデルを検討し、特に貧困層向けに無償で運営されているBRACスクールで、持続的に公文式を提供していくこと目指します。

このプロジェクトについては、ぜひ下記動画をご覧ください。現地の様子とともに、アベド総裁をはじめ、このプロジェクトに携わったBRACの方々のインタビューを交えた内容となっています。

※2・・・BRAC スクールとは
貧困層の子どもたちを対象としてBRACが無償で運営しているノンフォーマルな小学校(一部未就学児向けのクラスもあり)。バングラデシュ国内に約3万校あり約76万人の子どもたちが通う。


関連リンク BRAC ウェブサイト(英語) 貧困層の子どもたちへ持続的な教育支援を目指して バングラデシュに初の公文式教室開設!|プレスリリース

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