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Vol.474 2023.03.07

未来を創る仕事-NEC

NEC
一つひとつの積み重ねが自分の力になる
あらゆる人の「使いやすい」を目指して

日本電気株式会社 
川嶋一広さん

現在、日本国内における公文式学習経験者は1,000万人以上。多くの方々が、さまざまな企業・団体の一員として「未来を創る仕事」に関わっています。今回お話をうかがうのは、大手電機メーカー・日本電気株式会社(以下、NEC)で、視覚障害者の立場から、ユニバーサルデザインやアクセシビリティ(サービスや製品の使いやすさ)に関する評価を行う川嶋一広さん。まだ視力があった子どもの頃に学んだ公文式学習が、その後の仕事に通じる礎にもなっていると振り返ります。

目次

川嶋一広さん

―― 今のお仕事についてきかせていただけますか。

ユニバーサルデザインやアクセシビリティといった観点で、主にWebアクセシビリティと呼ばれる分野を担当しています。Webサイトが視覚障害者をはじめとして、障害者や高齢者にとって使いやすいかどうかということを、パソコンやスマートフォンを使って評価をしています。また、NECで開発しているハードやソフトについても、評価を行うのが私の役割です。

川嶋一広さん

―― 子どもの頃のお話や公文式学習の思い出についておきかせください。

今は全盲と呼ばれる目が見えない状態ですが、私は小学生の頃まで、弱視と呼ばれる状態でした。視力としては0.02とか0.03ぐらい、眼鏡をかければ多少は見えていたんです。そういう状態でしたから当時はいろんな夢があって、実家の目の前に電車の車両基地があったので、将来は電車の運転士になりたいなあ、なんて思っていました。

公文式学習は小学校低学年あたりから、最初は算数・数学から始めて、途中からは国語もやりました。その後、中学3年生になるまで続けました。先取り学習のおかげで算数が得意になり、中学生の時には高校レベルのJ教材まで進めることができました。その後、理系を選んで大学まで進んだのも公文の影響が大きいと思います。おかげで、パソコン関係も強くなり、IT系の仕事に就いています。

そして国語も学んだことで、現在目が見えない状態ではありますが、漢字の書き取りや繰り返し学習が身についており、今でも漢字の形が頭の中に残っています。これも私にとっては非常に大きなことです。

というのも、視覚障害者のための点字というのは、点の組み合わせによって、表現できるのは平仮名・記号・英数字だけなんです。パソコンがない時代は点字だけの読み書きだったのですが、パソコンで文章を書くときは漢字を使う場面も多く、視覚障害者が漢字を当たり前に使えることはやはり有利になるので、子どもの頃に公文でしっかり国語を勉強していたことが今に役立っていると感じています。

―― 現在のお仕事に至るルーツについておきかせいただけますか。

うちは父親が大手電機メーカーに勤めていたこともあって、小学生のころにはパソコンを買ってもらいました。当時はマイコンと呼んでいましたね。その頃はインターネットも無い時代ですから、プログラミングを学ぼうにも情報源が少なくて、書店に行ってマイコンの雑誌を読んで、プログラムコードを一生懸命覚えていました。家に帰ってそれを実際に打ち込んで試してみて、こういうふうにやれば動くんだとか、自分で試行錯誤しながら取り組んでいました。

子どもの頃から当たり前にコンピュータに触れて育ってきましたので、大学も理系でしたし、就職するときもやっぱりそうした企業を選びました。大学を出て、最初はNECのグループ会社にプログラマとして就職します。その頃はまだ視力も少し残っていましたから。

ところが私の目の病はだんだん進行していくものでしたので、就職して4年ほどたったころには全く見えなくなり、残念ながら一度会社を辞めることになります。一旦施設に入り、生活訓練を始めることになりました。

その後、生活訓練を終えて日常生活に復帰する際、改めて就職活動をしたわけですが、その時には自分自身が視覚障害者であることを逆に強みにして仕事ができるのではないかと考えました。その当時はようやく“ユニバーサルデザイン”、つまり障害の有無に関わらず、誰もが使いやすく利用できる製品や情報を設計する、という考え方が世の中に浸透してきたこともあり、NECへの再就職につながりました。パソコンや携帯電話、その後のスマートフォンが普及する時流もあいまって、文字や画面の拡大縮小はもちろん読み上げ機能など、ユニバーサルデザインの重要性は時代とともにより高まっています。

川嶋一広さん開発(ユーザーテスト)している様子

―― 身近なところではセブン銀行のATMの開発にも関わられたとうかがっています。

川嶋一広さん開発(ユーザーテスト)している様子

セブン銀行のATMは、セブン銀行とNECが共同開発しているのですが、その音声ガイダンスの作成に私の部署で関わりました。ATMで受話器をとると音声ガイダンスが流れて、受話器のキーパッドで数字を押すことで操作ができます。視覚障害の有識者たちを集めて製品評価の議論を重ねましたが、その仕切りを私のほうで取りまとめました。

元々この音声ガイダンスの必要性を提唱したのは、元盲学校教諭で、日本点字図書館評議員なども務められ、点字の新体系として六点漢字を整備されるなど、視覚障害者のためのサービス発展に永らく貢献されてきた長谷川貞夫さんでした。

川嶋一広さん
「セブン銀行 第2世代ATM」
 セブン銀行様ご提供

音声ガイダンスサービスとは、ATMのタッチパネルが利用できない視覚障害者などが、受話器を使用して音声案内と数字キーで操作できるサービスのことです。
セブン銀行のATMでは、ただ音声で操作できるだけではなく、視覚障害者が一人でも安心して操作できるように、セキュリティやプライバシーの保護など、様々な面での配慮があります。
https://spot-lite.jp/sevenbank/より)

―― いまのお仕事の醍醐味、そしてこれから取り組んでみたいことについておきかせください。

ICTの発展によって、視覚障害者もいろいろな業務ができるようになってきています。さまざまな障害のある人にとって、より使いやすいサービスや製品を創り出すことに貢献できるのは私の誇りですし、この仕事のモチベーションになっています。

セブン銀行ATMのような代表的な仕事がそんなに頻繁にあるわけではないのですが、そうしたサービスや製品を一つひとついろんな分野で増やしていき、あらゆる人にとって利用しやすい社会を目指していきたいですね。

またNECグループは大きな会社ですから、私と同じように視覚に障害があって働いている人もたくさんいます。私も年齢が上がってきましたから、そうした皆さんと一緒に社内コミュニティを作り、次の世代にユニバーサルデザインやアクセシビリティの考え方をしっかりつないでいくことも大切な役割だと感じています。

川嶋一広さん

―― 今学んでいる子どもたちへのメッセージをお願いします。

基礎的な学習も一つひとつの積み重ねで、やがては自分のためになるので、いま目の前のことに一生懸命に取り組んでほしいです。私も公文式学習で算数・数学を学んだことがプログラミングの役に立ち、子どもの頃からコンピュータに触れてきたことで、その後の進路と現在の仕事につながっています。

今は視覚障害の子たちは、当たり前にパソコンがある時代なので、恵まれているのもありますが、得られる情報をどんどん活用していってほしいですね。かつて電車の運転士になりたかった子どもが、やがて電機メーカーでコンピュータに関わっているなんて想像もしませんでした。ICTの発展と同じタイミングで大きくなって、いまその現場で貢献できていることは本当にいい巡り合わせだと感じています。

関連リンク NEC(Japan)NEC公式Facebookくもん出版『手で見るぼくの世界は』

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