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Vol.077 2024.03.01

朝日大学 経営学部経営学科・英語教育センター教授
亀谷 みゆきさん

<後編>

英語を使って
何ができるようになるかという
目標設定

朝日大学 経営学部経営学科・英語教育センター教授

亀谷 みゆき (かめがい みゆき)

岐阜県生まれ。朝日大学経営学部経営学科・英語教育センター教授。英語教育センター副センター長。専門は応用言語学(英語教育)。1989年より英語科教員として岐阜県立高等学校に勤務。2016年に朝日大学准教授に着任して以来、学内の英語教育改革を担当。文部科学省における高等学校学習指導要領解説など多くの委員を務める。また自治体の英語指導力向上アドバイザーを歴任するとともに、全国各地で行われる英語教員研修の講師としても活躍している。

「英語の授業は英語で行う」英語教員の第一人者として、30年以上にわたり英語教育に携わってこられた亀谷みゆきさん。大学における英語教育改革に尽力する一方で、国の英語教育施策検討のための委員や自治体の英語指導力向上アドバイザーとして、全国を飛び回る多忙な日々を過ごしています。
「英語は使いながら学ぶことが大切」だと言う亀谷さん。劣等感を覚えることもあったというご自身の学生時代の英語習得の経験から、英語教員として大切にしてきたこと、そして英語教育研究者として考える日本の英語教育の課題などについてお話しいただきました。

目次

「英語で何ができるのか」を
TOEFL ®で可視化しよう

高度なAI技術を用いた実用的な翻訳ツールを誰もが手軽に使うことができる現代において、果たして外国語教育は必要なのだろうかという議論を目にすることが増えています。しかし、人が外国語を学ぶことの大切さは、これからも決して変わらないと思います。

外国語を学ぶということは、自分とは違う窓、新しい扉を持つことだと言われています。違う窓からは違う景色が見え、新しい扉を開けば新しい場所に行くことができます。

私たちが生きている現代社会は、さまざまな文化、価値観、言語などが異なる世界中の人々が、お互いを理解し、協働することで成り立っています。お互いの言語が違うということは、育ってきたバックグラウンドが異なるということですから、言葉の理解と同時に、相手への共感力や想像力も必要です。

ですから、AIなどの最新技術に助けてもらいながらも、自身で外国語を学ぶことで、自分とは異なる人や文化に対する想像力や共感力、そして相手を尊敬する気持ちを高めていただきたいですね。多様性や異文化への理解といったことが英語学習の目的としてもクリアに見えてくると、日本人の英語の学び方も変わっていくのではないでしょうか。

近隣諸国に目を向けてみますと、アジアはとても大きな英語使用圏を形成しており、中国や韓国、台湾などでは、英語が国際共通語としての役割を大きく果たしています。一方日本では、国内で生活している限りは日本語だけで済んでしまうと考えられがちで、英語を使えるようになることの大切さが、強く認識されづらいところがありました。しかし、ここまでグローバル化が進み、多様性が尊重されるようになった今日の世界において、「国際共通語としての英語」を学ぶことの大切さは、日本においても変わらないと思うのです。

私もお手伝いさせていただいているTOEFL Primary®/ TOEFL Junior®は、英語使用者としての英語運用能力を世界基準で測定し、可視化することができる優れたテストです。設問では、英語を使用する具体的な場面や状況が設定されていることが多く、リスニングにおいても、リーディングにおいても、提示される情報やコミュニケーションの内容を、与えられた場面や状況や目的を踏まえて適切に読み取り、判断する力が問われます。

これはまさに、学習指導要領が目標設定の観点として挙げている「『外国語を使って何ができるようになるか』を明確にする」ということですから、TOEFL Primary®/ TOEFL Junior®は学校の英語の授業で身につけた英語力を可視化するのにも適しているテストであるとも言えるでしょう。英語を学ぶ子どもたちはもちろん、ぜひ英語を教える先生方にも受験をしてみていただきたいですね。

公文式英語のよいところは
「好き・楽しい」と「動機付け」

ラジオのパーソナリティとして、
スタジオでお話される亀谷さん

英語学習を続けることは、決してたやすいことではありません。英語に限らず、外国語の習得には非常に長い時間がかかりますから、ひたすら訓練を繰り返すだけの学習ですと、よほど強い目的意識がなければ挫折してしまいます。ですから英語の学習自体が「好き・楽しい」と思えることが大切なのです。その点、公文式の教材や指導は、子どもが「好き・楽しい」と思える工夫がたくさんなされているのが良いですね。

そして学び続けるためには「動機付け」も大切です。大人であれば、仕事における英語の必要性や、通訳になりたい、海外旅行で使いたい、趣味に役立てたい、あるいは自分が作った商品を海外に売りたいといった目的が、英語学習の動機付けになり得ます。一方で、まだ英語を学習する目的を自分で見出すことができていない子どもの場合には、そばにいる先生や保護者が適切なフィードバックを行うことが、英語学習の動機付けとして必要となります。しかし現実には、いつでも先生や保護者がそばにいてくれるわけではありません。

公文式は、自分が今できること・できないことを確認しながら、達成感や小さな成功体験を積み重ねながら学びを進めることができますから、学習の過程で自己肯定感や自己有用感が培われていきます。例えるなら、「常に自分を動機付けてくれる人が側にいてくれるような学習」だと言えるでしょうか。「動機付け」という点においても公文式学習は優れていると思います。

最近では「学びの個別最適化」ということがよく言われますが、目的を達成するために、今、自分ができていること・できていないことを把握して、できていないことをできるようにするにはどうしたらよいかを考えて、学びを進めていくことが大切となります。公文式で学んだ経験は、自分自身で「個別最適な学び」を見つけることや目的達成のために必要なことを考える一助となってくれるはずです。

大切にしているのは
「可能性を決めつけない」こと

教育現場の先生方同士、そして先生方と我々のような立場の者とが互いに手を取り合い、より最適な教授法を研究し、研鑽し合うということにおいては、数ある教科の中でも、英語科の取り組みが一番だと思っています。日本全体が一つのチームとなって、英語教育の質をよりよくしていきたい。これが私の一番の願いです。

そのためにも、各地の教育委員会や学校、あるいは国の仕事、そしてメディア活動を通じて行ってきた研究者としての発信は、これからも続けていきたいと思っています。そして私は、自身が教員だからこそ、理論と実践を伴った形で研究し、その成果をお伝えできるのだと思っていますので、教育・研究・発信のいずれも大切にしていきたいと考えています。

私が大切にしていることは、「可能性を決めつけない」ということです。人の可能性は無限大ですからね。また私は、「どうせ」という言葉があまり好きではありません。この言葉を言ったとたんに、自分の未来も、関わる人々の可能性の広がりも、その先の取り組みへの意欲や期待も潰えてしまうような気がしてしまうのです。

そんな思いで授業に臨んでいるからでしょうか、学生たちが提出する授業評価アンケートでは、「大学に来て初めて英語が楽しいと思った」とか「私は英語でこんなことができるようになった」と書かれていることもあります。このようなコメントからは、学生たちが達成感を持ちながら学び、英語を使ってできることが増えていることが見えてきます。学生たちが授業の中で、情報を理解し、考えを深め、自分の考えなどを英語で伝え合うことができた瞬間に生まれる、言葉にし難い、あの教室の雰囲気が好きです。一度経験すると、もうこの仕事から離れられなくなります。

私は長く教員をやっていますので、年賀状や手紙、そしてメールやSNSなどを通じて、教え子たちからたくさんの便りが届きます。その中には、国際NGOで働いていますという教え子もいれば、会社で海外部門を任されたとか、工場勤務で海外からのお客様に英語で説明ができたとか、患者さんと英語でコミュニケーションを取っている、など、「今、仕事や日常生活でこうやって英語を使っています」という便りが多くあります。

これまでの英語教育は、大学入試や資格試験に代表されるような、「果たしてしまえばそこで終わってしまうこと」が目的となっていたことが多かったような気がします。しかしそれでは、その目的を果たした途端に学びが終わってしまいます。ですから、今まさに英語を学んでいる子どもたちには、より広い視野で何のために英語を学ぶのかを考えながら、英語を使ってできるようになることを増やしていってほしいと思います。

そしてお子さんが英語を学ぶ目的を見出すためにサポートが必要なうちは、保護者のみなさんなど身近な方が楽しみながら、お子さんと一緒になって目標を見つけていただければと思います。いずれはお子さん自身が試行錯誤しながら、英語学習の目的や達成するための方法を見出し、自ずから学び続けることができるようになるはずですから。

前編を読む

 


 

 

前編のインタビューから

-より良い英語の授業の実践と普及に尽力
-英語に夢中だった学生時代 子どもたちの笑顔のため教員に
-日本の英語教育に必要なのは「使いながら学ぶ」こと

前編を読む

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