施設・学校向け公文式導入事業
京阪スマイルハート 京阪スマイルハート

就労支援施設等での公文式

京阪スマイルハート

障害のある社員とともに笑顔と真心で
日々の業務に取り組む

京阪スマイルハート株式会社(大阪府大阪市)は、厚生労働大臣の認定を受けた京阪ホールディングス(株)の特例子会社で、 ノーマライゼーションの理念のもと、障害のある方々の雇用を積極的に推進する目的で設立された会社です。 お互いの個性を認め合い、安心して働くことのできる環境づくりと、チームとして協力し合い、最大限の力を発揮できる人材育成を通じて、 知的障害のある社員が会社とともに成長していくことを目指しています。 このたびは、指導を担当している社員の方々に公文式を導入した理由や学習効果などについてお話をうかがいました。
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公文式学習のねらいは
よりよいコミュニケーション

チャイムとともに「よろしくお願いします」とあいさつをして、各自が公文式学習に取り組み始めます。 姿勢よく座り、プリントから目を離すことなく集中して取り組み、問題文を声に出して読みながら解き進みます。 鉛筆で書く、消しゴムで消す、プリントをめくって重ねるといった一つひとつの所作が、ていねいで無駄がありません。 会社でのさまざまな業務にも、このようにスムーズな動きで取り組んでいるのだろうということが想像できます。

「大きな○と大きな100」で学習者のがんばりを認め、ほめる公文式教材の採点。さらにこちらでは、 当日学習したプリントがすべて100点なら採点者オリジナルの図柄が加わります。 笑顔で元気に「ありがとうございます」と採点済みのプリントを受け取って席に戻り、 学習の結果を記録しながら今日の学習を振り返るまでの、一連の流れが確実に行われています。

京阪スマイルハート株式会社は、知的障害のある社員(以下、スタッフ)と親会社からの出向社員(以下、指導員)とで構成されています。

島岡弘賢(しまおか ひろかた)取締役に、公文式学習導入の経緯を聞きました。

「当社は親会社の社員と同じフロアで業務を行っており、健常者と常に交流のある職場環境です。 笑顔で元気にあいさつをすることを心がけ、職場活性化につながっているとの評価を得ています。 一方で、スタッフ同士のコミュニケーションを推奨しているものの、語彙力の不足から他人に自分の気持ちを伝えることができず、 お互いにモヤモヤした気分になったり、相手が気分を害したり、ということが多々あります。 そこで語彙力を補う目的で市販のドリルを使ったこともありましたが、一人ひとりのレベルに対応するのが難しく、 また学習によってどの程度進歩したかも把握できず、試行錯誤していました。 そんな折、公文式学習を導入している特例子会社の事例を書籍で知ったことを機に、2019年4月からの導入に至りました」。 公文式学習の時間は業務の一環として毎日同じ時間帯に組み込まれており、「清掃業務や文書回収業務などの作業の合間の気分転換になっているようです」とのことです。

感情のコントロールと
自分を振り返ることができるように

公文式学習によるスタッフの変化・成長の事例をうかがいました。

入社当初は感情のコントロールが難しく、トイレや更衣室にこもったりすることもあったAさん。 学習を続けるうちに情緒が安定し、現在は名刺作成の業務を任され、他のスタッフに名刺作成の方法を教える役割も担っているそうです。 島岡さんは「国語学習で語彙が豊かになり、自分の気持ちを言語化して相手に伝えることができるようになったのだと思います。 また音読や計算によって、感情のコントロールを司る前頭前野が活性化すると聞いたことがあるので、まさしくその効果があらわれているのだと思います」と公文式学習の成果を話します。

指導員の五田(いつだ)さんからは、このようなエピソードを聞きました。

「Bさんは文章を見ると眠気に襲われる特性があります。昨日、『明日の取材はいい所を見せてな』と伝えたら、今日はまったく居眠りをせずに取り組むことができました。 よほど緊張していたのでしょうか、業務日誌に『眼鏡をかけるのも忘れていた、ぼくは空気になっていた』と書いていました。 居眠りせずに学習に集中しようと努めたことを表現できるようになったのも、公文式学習の成果です」。 さらに「Bさんは学習を続ける中で、物事の段取りや見通しをもつことができるようになり、今では翌日の業務の準備をしてから退社することができています」とのことです。

また取材当日、ミスがいつもより多く、訂正に苦戦していたCさんは、業務日誌に「悔しい気持ちもあったので、明日の学習で挽回します」と書きました。 最後まであきらめずに訂正してすべて100点に仕上げた姿勢は「あきらめない心」「粘り強さ」が身についた証しだと感じます。

指導員の五田さんと西薗さんに、スタッフ全員に共通する変化・成長を聞きました。

「イベントツールの封入作業をするときなどに、一定の時間黙々と作業できるのは、公文式学習で『集中力』『作業力』を培った成果だと思います」(五田さん)。

「手順やルールを守ることができるのは、学習の一連の流れをきちんとすることに共通していると感じます。 また業務日誌や終礼で『今日はこうだった、今後はこうしたい』と振り返りができるのは、修正力や課題遂行能力が身についたのでしょう」(西薗さん)。

「学習を続けてレベルアップすることで、自信をつけていることは明らかです。 例えば前述のAさんは『自分には名刺作成なんて無理です!』と当初は言っていましたが、その後『やらせてください』と自ら手を挙げてくれました。 そして今では、業務をよりよく遂行できるよう『こうしてはどうでしょうか?』と提案してくれるようになりました」(島岡さん)。

お互いの笑顔のために
その場でフィードバック

島岡さんはスタッフへの指導方針をこう話します。

「公文式学習の場面にも当てはまることですが、『問題は当日に解決(翌日に持ち越さない)』、『コミュニケーションの活性化』、『自然と笑顔が出る社風の醸成』を意識しています。 業務を通じて一人ひとりが能力を伸ばし、成長してくれることを願っています」。

「例えば、悪気はなくても相手が不愉快な思いをする伝え方をする場面がよくあります。 そのときはその場で『今の言い方はどうかな?別の言い方はないかな?』とフィードバックをし、どう伝えたらよいのか考えてもらいます。 これによりすぐに課題を解決でき、コミュニケーションも良好になり、お互い笑顔で仕事ができます」と五田さんが事例を話します。

スタッフと関わるときに大切にしていることを聞きました。

五田さんは、車掌・運転士・駅長など、鉄道の安全運行にかかわる業務に長年就いてきたそうです。 「鉄道の現場では安全確認の際、対象を指さし、確認内容を声に出す『指差喚呼(しさかんこ)』という基本動作があります。 京阪スマイルハートでも『○○よし』と確認事項を指さしながら声に出し、ミスや漏れがなくなるよう指差喚呼を徹底している業務もあります。 スタッフたちは、指導員が見ていない場面でも必ず『○○よし』と指差喚呼しています」。

西薗さんも五田さんと同じく鉄道部門の出身です。 7年間「京阪電車お客さまセンター」で顧客からの問い合わせや意見に対応する業務を担当していた経験から「スタッフの話をじっくりと最後まで聞くことを心がけています。 途中でさえぎったり、言葉をはさんだりするのではなく、相手の言いたいことは何かを考えながら最後まで聞くようにしています。加えて『日々楽しく!』が信条です」と話します。

お二人は声を揃えて「私たちはともすれば楽な方に流れがちで、『もっと楽なやり方はないか…』と考えがちですが(笑)、 スタッフたちはいつも真面目で誠実、けっして手を抜くことをしません。彼らからこちらが学ばせてもらっていることが多くあります」と言います。

スタッフの中から
リーダーが育つことを願って

最後に京阪スマイルハートで働くスタッフへの想いと公文式学習で実現したいことを、島岡さんに聞きました。

「わが社が目指す『笑顔と真心で社会に貢献していく』ということを、スタッフみんなが業務を通じて素直に実践してくれていると日々実感しています。 また『京阪スマイルハート 人間関係4つの心得』というのを毎日の終礼で唱和しているのですが、スタッフも指導員も、お互いがこの心得を大切にしながら関わってくれるのがうれしいですね」。

「公文式学習を継続する中で、それぞれが学習する教材のレベルが少しずつ上がってきました。 当初は算数が苦手だったスタッフも、かけ算・わり算とできることが増え、分数計算を苦もなくできるようになり自信をつけました。 長文の読解力が必要な国語に取り組むことで、頭の中を整理して文章を組み立てることができるようになりました。 『公文式学習は、単に学力が身につくだけではなく、働く姿勢に通じる力も育てる』のだということを、公文の学びの場で聞いたことがあります。 学習によって論理的に考えて相手に伝える力をさらに高めるとともに、失敗しても何とか壁を乗り越えようと努力する経験を積み重ねる中で、スタッフの中からリーダー的な人材が育つことを期待しています」。

学習するスタッフ一人ひとりが真心と笑顔で活躍できるよう、これからも私たちは公文式学習の導入を通じて、京阪スマイルハート株式会社の活動に貢献してまいります。

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