※書写歴・学年・年齢は、取材時におけるものです。
書写歴6年
Iさん(50代)
「筆が自分の体になじんできた」と手応えを感じました。
6年前、娘が通う幼稚園の卒業式に保護者代表として、謝辞を読ませていただくことになりました。それも、式辞用紙に筆ペンでしたためる、非常にかしこまったタイプのものです。昔から筆文字にコンプレックスがあった私は、卒業式の約10か月前の5月から「どうしよう、どうしよう……」と焦るばかり。そこで体験のチラシを見て、公文書写に通い始めました。
当初はまっすぐ線を引こうと思っても筆先がぶれて波打っていましたが、何度も何度もポイントを学んだため、翌年の3月にはなんとか無事に謝辞を書きあげることができました。さらには、「筆が自分の体になじんできたかな」と少し手応えを感じられるようになったのです。
教室に行くと元気をもらえます。
そうなると、誰しも「もっと上達したい」と欲が出てくるもの。謝辞を書き上げた後も続けたいと考えるようになりました。それに、教室に行くと元気をもらえるんです。多分、幅広い世代の方の真剣に文字に向き合う気迫で、教室の空間を熱くしているんでしょうね。目には見えない熱気が立ち込めていて、「自分もここでもっと文字を磨きたい」という気持ちになります。
それに先生のお話も興味深いものが多く、硯の名産地の紹介や鉛筆工場を見学した際のエピソードなど、いままで知り得なかったお話を聞かせてくださいます。心と頭にたくさん刺激をもらうので、いつも教室の帰り道は来るときより元気なくらい。「さぁまた1週間、家でしっかり教材を学習しよう!」という気持ちにさせてくれます。
教室に通わなかったら、
こんな気持ちになることはありませんでした。
当初は謝辞を書くことを目的に1年程度通えばいいかなと思っていましたが、気づけばもう7年目を迎えています。最近は「認定」で優秀をもらい、評価してもらえるようになりました。日々のちょっとした積み重ねで、文字って大きく変わるものですね。頑張れば頑張った分だけ自分が成長できると実感し、娘にも「努力すれば、きっと力がつくよ」と自信を持って伝えられるようになりました。また料理や裁縫など、今まで「忙しいから」とあきらめていたことにも「ちょっと頑張ってみよう」と思えるようになったのです。書写教室に通わなかったら、こんな気持ちが生まれることはありませんでした。文字の上達以上の宝物を手にすることができたと感謝しています。