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公文式教育を貫くもの

公文式の創始者である故・公文 公が残した言葉を紹介しながら、
公文式が目指す教育について、あらためて考えていきたいと思います。

第8回 低い出発点

公文式教育を貫くもの

公文式教室に新しく入会する生徒には、まず「学力診断テスト」をして、何教材の何番から勉強を始めるかを決めます。その決め方は、生徒がこのあたりから習いたいと思っている内容のところから始めるのではありません。学校で前に習っているところ、本人もわかっているはずのところから始めることになります。この学習の最初の目標は「平凡なこと、わかりきっていると思っていることを確実にできるようにしてやる」ということです。この訓練が行き届いてくると「難しいように見えたことが、案外すらすらわかるようになった」と言えるように、ほとんどの生徒が変わっていきます。

公文 公

公文式では学習を始めるにあたって必ず「学力診断テスト」をします。そして、一定時間内にどれだけ正解できたか、解きかたは適切か、ミスがあればその原因はどこにあるかなど、様々な視点からその子どものその時点の学力状態を分析したうえで、学習の「出発点」を決定します。ですから年齢や学年にとらわれません。5、6年生であっても、あるいは中学生であっても小学校1、2年生の段階から学習を始めることもあります。例えば算数の場合、たし算やひき算からということになるわけですが、それはその子がたし算やひき算が全然できないからというわけではありません。そうではなくて、その子どもが負担を感じることなく、らくにできるということが、まず大事だからです。

今の学年よりかなり低いところからスタートすることによって、たとえ学校では悪い点ばかり取っている子どもでも、公文式の学習を始めてしばらくは100点ばかりとれます。「やれば、できる」という感覚が実感でき、今まで嫌いだった勉強も面白くなり、意欲と自信が湧いてきます。
意欲や自信と同時に、このすらすらできるやさしい段階で、集中力と作業能力を養うという目的があります。入会時に同じ学力でも、例えば難しい出発点とやさしい出発点の子どもをくらべると、最初のうちは難しい出発点の子どものほうが高い教材を学習していても、進み方はやさしい子どものほうが早いため、どんどんその差が縮まります。やがては並んでしまい、更に追いついたほうが追い抜くというケースが圧倒的に多いのです。これは、学力そのものより、集中力と作業能力をつけた効果です。

出発点決定にあたってもう1つ重要なことは、半年後、1年後、更には2年後には学習がどこまで進むか、あるいは進ませるべきかという「見通し」を立てるということです。その見通しに基づいて、学習者である子ども、そして保護者の方と十分に相談して学習の計画を立てます。このことを「見通しの共有」と呼んでいます。見通しを共有することによって、子どもは、今はまだこの段階を学習しているが、半年先、1年先、2年先にはこんな内容まで学習することになるという明確な目標と、そのときはこうなっているといった向上した自分のイメージをもつことができるようになります。目標に向かって真剣に取り組んだとき、子どもの瞳は輝きます。その意欲が、先へ先へと進んでいく牽引力になるのです。

ですから公文式では、「見通しのない出発点は出発点に非ず」という創始者・公文 公の言葉を決して忘れないようにしながら出発点を決定するようにしています。