施設での導入事例:
発達支援トレーニングジム しゃ~れ一人ひとりを大切にした発達支援が多様な未来を拓く

一人ひとりを大切にした発達支援が多様な未来を拓く

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「自立」というより「自律した」子ども達

JR仙台駅からまっすぐ西へ歩いて15分ほど、長いアーケード街を抜けた先のビルの4階に「放課後等デイサービス事業所 『発達支援トレーニングジム しゃ~れ』」はあります。「放課後等デイサービス」は、2012年の障害者自立支援法・児童福祉法等の一部改正により、どの障害の人も共通のサービスを利用できるよう制度を一元化、施設・事業が再編されたことに伴い創設されました。その目的は「障害のある(療育が必要と認められる)子ども達の学齢期における支援充実のため」です。「障害のある子ども達の学童保育」ととらえてもよいかもしれません。ちなみに、「しゃ~れ」は科学実験などでおなじみの「シャーレ(ペトリ皿)」からネーミングされています。

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午後4時をすぎる頃から、一人、また一人と子ども達がやってきます。しゃ~れに通ってくる子達(中学生・高校生あわせ22名)は自閉症や発達障害の子がほとんど。「こんにちは」と元気にあいさつができる子もいれば、無言のまま入ってくる子もいます。部屋に入ってきて、彼ら彼女達がまず行うのは、その日の活動項目(支援プログラム)が一目でわかる個別に用意されたボードを見ること。このボードには、「手洗い」「うがい」「べんきょうをする」「おやつ」などの小さなカードがタテ一列に貼られています(写真参照)。終わったものから、小さなカードをとなりの列に移していきます。「きょうすること」「したこと」が視覚的にすぐにわかるボードです。アメリカのTEACCHプログラム(※)を応用しているとのこと。
※ノースカロライナ大学で開発された自閉児向けの援助プログラム

公文式学習を就労支援プログラムの中心に据え就労実績が大きく向上

その日の活動項目(支援プログラム)が視覚的にわかるボード。終わったもの(小さなカード)は、そのつど右の列へ移動する

しゃ~れの支援プログラムのメインは「べんきょうをする」ですが、それぞれの子の能力や特性にあわせた内容になっていて、公文式学習(算数)・PCで発達支援ソフトの学習・手先の巧緻性を高める各種作業などをはじめ、5~7種類の内容で構成されています。もちろん、公文式学習も一人ひとり、その子にあわせての教材と学習枚数です。どの子も在室時間は1時間ほどですが、静かに黙々と取り組み、大声を出したり、歩き回ったりする子はいません。「自立した」というより、「自律した」光景で、「障害ってなんだろう…」とあらためて考えさせられてしまいました。

「障害があっても、社会の一員として自立して生きていってほしい」

しゃ~れへの公文式導入の経緯を簡単にご説明しておきましょう。しゃ~れと同じビル内に「就労移行支援事業所 Schaleおおまち」があります。しゃ~れと同じく、一般社団法人のぶれいん・ゆに~くす(BRAIN UNIQUES)が運営しています。2013年10月、このSchaleおおまちが就労移行支援のプログラムのひとつとして公文式を導入し、集中力・持続性・取り組み姿勢など幅広い面で良好な変化があったため、2014年4月、しゃ~れでも導入がスタートしました。

ぶれいん・ゆに~くすの代表理事であり、臨床発達心理士でもある伊藤さんにお話をうかがいました。「私は30年ほど前、公文式教室の指導者を5年ほどさせていただいたことがあります。ご縁があって大学に戻ることになり、公文とは離れてしまったのですが、個人別・能力別指導はずっといいなと思っていました。今、就労移行支援と放課後等デイサービスの事業所を運営していますが、ここまでくるには試行錯誤と紆余曲折の連続でした。授かったわが子が自閉症ということもあり、これまで様々な活動をしてきましたが、このまま待っていても何も変わらないので、仲間を募って活動しようと思いたち、現在の私がいます」

ぶれいん・ゆに~くす代表理事 伊藤さん

ぶれいん・ゆに~くす代表理事 伊藤さん

伊藤さんによれば、障害者就労の実情は厳しく、例えば18歳で特別支援学校を卒業しても、自立のためのライフスキルが身についていない、働くためのスキルが身についていない場合もあり、それが「厳しさ」の要因のひとつとのこと。ここ数年、アスペルガーなど、知的な遅れのないタイプの障害ある子達が大学に進学することが増えていますが、そういう子が大学を卒業しても同じ状況だと言います。さらによくないのは、そうして就労できないまま、在宅が1年2年と長引いてしまうと、外に出られなくなってしまうそうです。ここまでになると、けっこう深刻な問題です。

伊藤さんはこう続けます。「そうならないためにも、卒業後を見越した学齢期から成人期への移行支援が必要です。もっと言えば、中高生の時代から将来の自立を見据えて、どんな発達支援をしていくかを考えていかなければいけないと思っています。2つの事業所を切り盛りしているのも、たとえ障害をもって生まれたとしても、どの子も何とか自立してほしい、社会の一員として生きていってほしいからです」

強みを活かして、弱みをカバーする

さて、前述のようにしゃ~れの支援プログラムは子ども達一人ひとり、さらには同じ子でも日によって支援プログラムの内容が違います。それは、こんな理由から。

しゃ~れの指導スタッフ、福原さんのお話です。「ここに通ってくる子達は自閉症や発達障害があるので、集団での一斉指導ではなかなか身につかないことが多いと思います。でも、その子の能力や特性をよく見て、それにあった支援プログラムとトレーニングのレベルを設定すると、ムリなくできるようになっていきます。できることが増えて、表情が変わってきますね。笑顔も増えます。公文式の学習は、支援プログラムのなかでも大きな存在だと感じています。算数というか、数字そのものに苦手意識や拒否反応に近いものがあった子でも、教材の学習によって、そういう気持ちがなくなっていきますから」

しゃ~れ指導スタッフ 福原さん

しゃ~れ指導スタッフ 福原さん

そして伊藤さんです。「子どもって、一人ひとり顔も性格も、得意なことも不得意なことも違いますよね。不得意なことを練習して克服するという考え方もあるでしょうが、それは周りも、なにより本人が大変なのかなと思います。それよりは得意なことを見つけて、そこをどんどん伸ばすほうが気持ち的にもいいし、その子の強みにもなるはずです。強みができれば、弱みもカバーできますし、弱み自体が目立たなくなると思います。その意味では、公文式学習での大きなマルと100点は学力がつくという以前に、子ども達の自己肯定感を大きく育んでくれています。こうした一人ひとりにあわせた発達支援を親御さん達と協働でしていくことで、自分にあった進路を見つけたり、一生の仕事を見つけられたりするのだと思います」

最後に、保護者の方と生徒さんの声をご紹介しましょう。まず、高校1年の男子生徒さんのお母さんです。「ここには今年の7月から通っています。まだ2か月とちょっとですが、すごく変化がありました。家でお手伝いをするようになりましたし、姪っ子の面倒を見るようにもなりました。この子の障害の特性として、人と関ることが難しいので、例年、夏休みは家にずっといるのですが、今年はしゃ~れに通っていました。そのせいか、いつもの年のように夏休み明けに学校に行きたがらないということがありませんでした。ここに来ることは、この子にとってはストレス解消だったり、自分を取り戻したりできるようで、学校でもとても穏やかになったと聞いています」

次は、高校2年(特別支援学校)の男子生徒さん。「しゃ~れには2013年の11月から来ています。楽しいです。仲間が増えました。ここではいろいろやるけど、公文が一番楽しいです。学校でも、ここでも答えがパッと出てくるのが、とてもうれしい。たくさんやるほど、パッと答えがわかるのがおもしろい」とにこやかに話してくれました。彼は公文の教材学習枚数がかなり多く、1日30枚をひたすら解くことも珍しくないそうです。彼の話を聞いて、「発達支援トレーニングジム」という呼称の意味がわかった気がしました。

(2014年10月現在)

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参照サイト
ぶれいん・ゆに~くす(BRAIN UNIQUES)

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