DISCUSSION02

公文式教育の追求

公文式教育の
追求

今後も提供し続けていくべき、
公文式教育の普遍的価値とは何か?

公文の理念を実現するための「公文式教育」とは、どういうものなのでしょうか。学校教育や他の学習塾と、いったい何が違うのでしょうか。今後も守り伝えていくべき価値とは——。それぞれの持ち場で指導的役割を担う3人が、本音で「60年以上続いている理由」と「これからのKUMON」を語り合いました。

公文式妙典駅前教室
増田 絹子
指導者
学生時代に数学の教員免許を取得。もともと公文の指導者に興味を持っていたこともあり、1989年に最初の教室を神奈川・横浜に開設すると、続いて千葉・市川に第二教室を開設。途中、第二子の出産などもあったが、「丈夫な体と仲間に恵まれ、気づけば30年」と笑う。現在は指導者たちの指導的役割も担い、海外からの視察などにも対応している。
教務指導本部 数学教材部
田村 宗治
2003年入社/理学部卒
6年ほど千葉や福島でコンサルティング職に従事した後、2009年にユニバーサル数学教材チーム(当時)に配属。以来、数学の教材開発に携わる。現在は、チームリーダーとしてデジタルコンテンツに関する企画・開発を主導。時代の変化に応じたこれからの公文式教材のあり方について模索している。
教務指導本部 グローバル指導部
モリス・ムリンズ
2003年入社/経営学部卒
2003年にアルバイト社員として公文教育研究会に採用され、イギリス公文(現・ヨーロッパ・&アフリカ公文)に正社員として入社。以後、イギリスでコンサルティング職に従事し、事務局長や、オペレーションマネージャーを経て、2019年より公文教育研究会に出向し、日本に駐在。現在はグローバル指導部部長として、世界に展開する公文式教室の指導力向上に向けて、海外の指導責任者との話し合いを通じて指導におけるグローバルな指導施策を推進している。

CHAPTER個人別指導に不可欠な
指導法と教材

田村私は、KUMONが60年以上続いている理由として、指導法、教材、そして指導者の存在という、大きく3つの要素があると思っています。

増田まずは指導法ですね。公文式教育は個人別です。学校教育はカリキュラムに基づいて授業を進めていきますが、授業についていけない子どもがいても、学校の授業形式では学年を遡った内容を教えることは難しく、補習授業にも限界があるのではないかと思っています。

ムリンズKUMONであれば、「ちょうどの学習」という考え方がありますから、どの子でも無理なく学習ができますよね。学校の授業が難しいと感じている子であれば、学校よりも簡単な内容を学習することがあります。逆に、学校の授業よりも格段に難しい内容をスラスラと学習している子どもたちもいます。

田村KUMONでは、中学生であってもたし算から学んでもらうこともあります。これは、KUMONの強みですよね。

増田私の場合、教室を始めたときから、その強みを理解していたわけではありませんでした。まだ開設間もない頃に、保護者の「早く学校でできるように」という気持ちに引っ張られてしまい、その子にとって少しレベルの高い教材から学習を始めさせてしまったことがあります。すると、その子はすぐに息切れしたかのように、勉強がつらくなってしまったんです。大切なのは、最初はらくらくできる教材から始めること。助走をつけて遠くに飛ぶようなイメージです。これは長年の経験から強く実感していますが、助走に必要な距離を人それぞれに設定できるのも、KUMONならではですね。

ムリンズ増田先生の教室でも、学年を越えて学習している生徒もたくさんいますよね。

増田そうなんです。うれしいことに、多くの生徒が学校で習っていない内容であっても、楽しみながら、ときには難しそうに学習してくれています。KUMONは、幼児から小学生ぐらいが学習するものと思われることもあるのですが、高校受験や大学受験にもつながると考えています。学習を続けて最終教材(*目安は高校卒業直前に学習する内容)まで修了した生徒は、口々に「修了した科目は、大学受験で苦労しなかった。その分、他の科目に時間を割くことができた」と言ってくれます。単純に数学が得意だから理系などということではなく、本人が本当にやりたいことができる状態になっているのではないかと思います。それに加えて、何と言っても教材が素晴らしい。

田村ありがとうございます!でも、教材は我々社員が机に向かって考え込んで作っているだけではありません。例えば、たし算を難しがる子どもがいれば、これは子どもからの「シグナル」です。このシグナルは重要なんです。「悪いのは子どもではない」という考え方がKUMONには根付いています。ですので、そのシグナルを指導者がキャッチしてくれます。その情報を我々が収集し、原因を探り、解決策を講じた試作品を作ります。そして、その試作品を子どもたちに学習してもらい、その反応を指導者に聞く。つまり、教材は、子どもたち・指導者・我々社員が紡ぎ合って生み出す「結晶」のようなものなんです。KUMONの教材はこのようなアップデートを60年以上続けてきており、教材改訂の歴史がそのままKUMONの歴史であるとも言えます。

ムリンズ同じく指導法についてもKUMONの歴史を振り返ると、1979年に指導の考え方を整理した、日本全国統一版『指導についての留意事項』という冊子が発刊されました。それまでに得た知見、ノウハウが集約されたものですが、これは現在もKUMONの社員、指導者にとってのマインドセットになっており、今日では歴史や文化、言語も異なる50を超える国と地域で共有されています。

CHAPTER指導者の存在

ムリンズ田村さんが、冒頭に「指導者の存在」についても触れられていましたが、本当にそう思います。そう遠くない将来、すべての仕事がAIに代替されると言われていますが、私はAIにKUMONの指導者が務まるとは思いません。なぜなら、指導者は単に採点をするだけでなく、学習態度といった数値化できない変化を見逃さないからです。子どもの様子をつぶさに観察し、わずかな心の変化も見逃さずに指導を行う。これは、まさに指導者にしかできないのではないでしょうか。

増田そうですね。学校の先生が一人ひとりの生徒に接することができるのは、長くても数年だと思います。ところが、私たちは、その子が教室に通い続けてくれる限り、長い生徒であれば10年以上にもわたり、向き合うことができます。ですので、日々の子どもたちの変化だけでなく、長い目で成長を見守ることもできるんです。

ムリンズ子を持つ親の心情として、これほどありがたいことはありませんし、それは世界共通です。増田先生は、保護者の方々とのコミュニケーションは、どのようにされているのでしょうか。

増田保護者の方々との面談は大切にしています。自学自習などの公文式の特長や、その学習効果を伝え、KUMONの良さを実感していただきたいと思っています。ただし、一方的に伝えるのではなく、聞く・対話することをいつも心がけています。保護者にも寄り添うことが大切ですね。

田村保護者の方々にとっても、増田先生のような指導者の存在は大きいものですね。生徒とのコミュニケーションで印象に残っているエピソードを、ぜひ教えてください!

増田生徒とのコミュニケーションはたしかに重要です。以前、中学3年生の生徒に対し、小学1年生の教材から学習することを提案したことがありました。たし算、引き算のケアレスミスが多く、中学の数学を学習させられないと思ったからです。

ムリンズどう対応されたのですか?

増田本人が納得するまで話しました。その後学習をスタートし、中学3年相当までの9年分の教材を半年間かけて最後までやり切りました。その結果、ケアレスミスもなくなり、第一志望の高校に合格しました。小学校高学年、中高生の場合は、本人の意識が大切なので、必ず入会時に三者面談をして、小学校1年生の教材から学習することもあると本人に納得してもらってから受け入れています。時には、「納得していただけなければ、お預かりできません」とお伝えすることもあります。

田村やはり指導法・教材だけではなく、生徒の伸びる力を信じて真摯に向き合い、「可能性の追求」を実践する指導者の存在があってこそ、学習効果が最大化されますね。今日、増田先生とお話しして、より確信が深まりました。

増田指導者は社員の皆さんとの繋がりだけでなく、指導者同士の繋がりも強いです。私も月に1回程度、お互いの取り組みやうまくいった事例などを学び合っています。また、勉強会などでお話させていただく機会もあるのですが、生徒への指導、保護者対応、スタッフ育成など、これまでの自分の経験から学んできたことをお伝えするようにしています。

田村一人ひとりの生徒のやる気を引き出し、保護者の方々と一緒に伴走していく。また、お仲間の先生方とともに学び合い、自分の学びを惜しげもなく、オープンにする。そうした指導者の姿勢に私たちも日々触れているから、社員も本気で頑張れるのです。

ムリンズそうですね。何を隠そうKUMONの海外展開は、公文式教育の可能性を実感した指導者が、転居先のアメリカで自発的に教室を開いてくれたことが発端です。今日のKUMONの海外展開ははじめにビジネスありきではなく、理念や方針に共感し、そこに重要性や可能性を見いだしてくれたたくさんの方が指導者となって、海外での教室開設が進められてきたという事実に、私は勇気づけられるのです。

CHAPTERの真価が
発揮される時代が
やって来た

ムリンズさて、2020年に起きた新型コロナウイルスの感染拡大は、図らずも公文の理念、公文式教育の価値が見直され、私たちにとっても自信を深める契機となったのではないでしょうか。増田先生は、どのようにお感じでしょうか。

増田他の教室の先生たちも口を揃えておっしゃっていたのは、「緊急事態宣言下の自粛期間中に教室の子どもたちが成長した」ということです。学校が一斉休校となり、否応なしに家庭教育の比重が高まりましたが、ここで威力を発揮したのが公文式教材であり、自学自習の習慣でした。KUMONは、学習を続けることで、社会に出てからも学んでいける力がつくと考えています。また日本国内だけでなく、海外における教育にも十分適用できると感じます。大げさな言い方になりますが、国や社会、未来を変えるのは「教育」です。私は、今ほどKUMONの価値、真価が求められている時代はなかったと思いますし、KUMONに対する期待の高まりを、強く感じています。

田村同感です。高度化、複雑化している現代社会には、正解のない問題が山積みです。こうしたなかで今を生きる私たちには、自ら課題を掲げて解決のためのルートを探り、自分の力で正解へと近づく努力をしていくことが求められています。知識だけでなく、「自学自習」「最後までやり遂げる」という姿勢や態度にも重きを置いている点にKUMONらしさがあるので、まさにこれからの時代にピッタリな学習法ではないか、と感じています。

ムリンズ公文式教育には、時代や社会が変わっても通用する普遍的価値を提供できる力があることを、改めて確認できました。これからも、ともに頑張りましょう。

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