第61期決算のご報告2022年4月1日~2023年3月31日2022年4月1日~2023年3月31日

1. ごあいさつ

事業の経過および成果

当連結会計年度における社会・経済環境への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は、感染症対策自体は多くの国で緩和されつつも、海外においては2022年2月に新規感染者数が過去最大、国内においては2022年8月に新規感染者数が過去最大となり、その影響はなお大きなものがありました。加えて、世界情勢の影響により加速する物価上昇は、国内外の経済状況に大きな影を落としています。また、急激に進んだ円安も、国内の経済・企業動向に影響を及ぼしました。

そのような事業環境の変動に対応しつつ、国内教室事業は、国内中期経営方針「未来創造2025」の重点活動である「顧客の実感価値向上」への取り組みを、着実に推し進めてまいりました。その一つの結実として、2022年11月8日にサービス産業生産性協議会が発表したJCSI日本版顧客満足度指数第3回調査では、教育サービスの項にて顧客満足スコア上位企業の2位と公表され、「公文式は、2020年度以降、スコアを上昇させています」とコメントされました。

この「顧客の実感価値向上」への取り組みに加えて、教室ウェブ広告の本格稼働、Instagram・LINEなどのSNS活用をはじめ、新たな外部メディア戦略にも取り組みました。

その結果、第4四半期の新規入会・教科追加は前年同期を超え、2月無料体験学習後の入会者は前年比111.3%となり、生徒数全体の回復が見えてきています。その先行指標として、国語教材改訂の先行モニター教室では12月生徒数が前年比101.8%となりました。

海外教室事業においては、入会問合せ者への対応向上など、活動の進化・高度化に努めました。その結果、2021年度に生徒増に転じていた北米、南米、ヨーロッパ・アフリカでは、当年度にさらなる生徒増を達成しました。アジア・オセアニアでは、それにやや遅れましたが、当年度に生徒数を急速に回復、その生徒増の勢いではKUMONグループをリードしています。中国のみ、双減政策とゼロコロナ政策の影響を強く受け、生徒数は停滞しています。
海外5地域トータルでは、会計年度末となる12月度の生徒数対前年比は、2021年の106.3%に対し、2022年は107.8%と、前年度以上の回復度を達成しました。

海外においてもう一つ特筆すべきものとして、タブレット学習の事業展開に向けた取り組みがあります。これは中期経営方針「イノベーション2025」に示した「KUMONらしいICT活用」の具現化として実験を開始し、規模を広げモニター検証を重ねていたものです。大規模モニターの最後にあたる2022年12月時点で、海外5地域でのタブレット学習者は23,705名でした。2023年1月にはこのタブレット学習を“KUMON CONNECT”という名称で海外において事業展開を開始し、2023年3月には早くも学習者48,174名と、3か月で倍増以上の勢いにあります。

海外新規国展開としては、パキスタンへの展開を果たしました。同国の子どもたちを公文式で育てたいというパイオニア指導者の志に端を発し、その志に共鳴した事業展開の協力者を得て、入念に準備してきた取り組みです。2023年に入って当社子会社である現地法人設立もかない、自らの可能性を切り拓く子どもたちを一人でも多く育んでいく所存です。

また、パートナー事業者に公文式学習実施のライセンスを供与して行うライセンス事業においても、当年度は大きな進展がありました。国内では、あしなが育英会との遺児小中学生への学習支援、デロイトトーマツウェルビーイング財団とのこども食堂内での学習支援などがスタート、海外ではネパール等での学校導入パイロットが決定しています。また、バングラデシュにおけるNPO団体BRACとの協働の成果を背景に、同国政府の意向を受け、ICT省が推進する「未来の学校」6校へのパイロット導入を実施します。さらに、文部科学省が主導して日本型教育の海外展開を推進する「EDU-Portニッポン」の「令和4年度With/Postコロナにおける日本型教育の海外展開に関する調査研究」に、KUMONと名古屋大学が協働して南アフリカ企業導入を通じて行う「習慣的数学学習による産業労働者の非認知能力向上とその効果測定」が採択されました。これまでのKUMONグループ事業の柱であるフランチャイズによる教室事業に加え、ライセンス事業をもう一つの柱に育てる取り組みが、着々と進んでいます。

このように、“KUMON CONNECT”への開発投資・運用への資源投下をはじめ、未来に向けた戦略の実行に十分な投資を行えるよう、この3年をかけてKUMONグループ全体で損益構造の改革に取り組んでまいりました。国内では、「顧客の実感価値向上」を軸に、優先すべき活動・支出への選択・集中を推進しました。海外では、海外教室事業中期計画の重点項目に「高収益体質への構造転換」を位置づけ、KUMONグループをあげて取り組んでまいりました。その結果、未来への取り組みに資源投下してなお利益が出せる体質へと、損益構造を大きく変えることができました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は、820億59百万円と、前連結会計年度に比べ57億15百万円増加しました(前期比7.5%増)。営業利益は120億85百万円(前期比25.1%増)、経常利益は136億34百万円(前期比14.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は102億27百万円(前期比22.5%増)と増収増益となりました。営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益の増加は、売上の増加と、損益構造の改革が進行していることによります。

なお、2023年3月末現在の全世界での学習者数は、362万名となりました。

株式会社 公文教育研究会
代表取締役社長 田中三教

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