平野 美優(ひらの みゆ)
三菱商事株式会社/三菱商事ファッション株式会社出向中。1993年生まれ、小学校低学年~中学3年生まで岡山県の公文式教室で算数・数学、英語を学習。大阪大学外国語学部在学中に、「トビタテ!留学JAPAN」1期生としてロシアへ留学、その後ウズベキスタンでのボランティア活動を経験。2017年から三菱商事に入社。繊維業界にて、企画・素材開発~生産~販売に至るまでの全バリューチェーンを担当し、現在はNAGIEのMD、マーケティング・ブランディングディレクションを担う。
活躍するKUMONのOG・OBが「私にもできるかもしれない」という想いに
徳永:平野さんが、今関わっていることや課題に思うことについて、自分も何かできる可能性があると感じられたのはいつ頃ですか?
平野:岡山の田舎で育ったので、地域の図書館や学校の図書館も小さくて。ある時、読みたい本をすべて読み切ってしまったんです。そこで、それまで手をつけていなかったジャーナル誌を手に取ると、幼いけど、勉強したり遊んだりはできず、戦争に行かなくてはいけない子どもたちのコメントが載っていました。私はその頃にはKUMONで英語も学んでいたのですが、世の中の色々なことを知る、考える機会をせっかく与えてもらっているのに、毎日泣きながらプリントをやっていて、何をしているんだろうって思ったことがきっかけかもしれません。
私が通っていたKUMONの教室では、定期的に、世の中で活躍されているKUMONの先輩が、教室でお話をしてくれる会があったんです。その方々の話を聞いていると、目の前のことをしっかりやっていたら、「こんな風に世界は広がっていくんだ」、「私にもできるかもかもしれない」と自信がついていきました。もっと広く世の中を知りたい、深く社会を知りたいという想いが強くなり、こういう機会が小学校低学年のうちにあったのは大きかったと思います。
徳永:今では刺激を受けたその先輩方と同じ立場になられて、活躍されていてとても素敵ですね。入社3年目の社員に新規事業を任せることも、もちろんプロジェクト自体も会社としてチャレンジだったのではないかと思います。今後のチャレンジも夢のある話ですね。
やりたい事があれば、とりあえず言ってみる。「ちょっとした図々しさ」が大事
平野:そうですね、環境にも時世にも恵まれていたと同時に、ちょっとした図々しさが大事かなと思いました。
徳永:ちょっとした図々しさというのは?
平野:人にやりなさいと言われたからとか、どうせやっても意味がないと半ば諦めてしまうこともあると思いますが、私は確信を持つことがあるなら、仕事中だけじゃなくてランチなどの場でも「こうしたい」ということをさりげなく伝えています。常に発信していれば、誰かが覚えていてくれて、「あの子はまだ若いし、口だけかもしれないけど、やりたい気持ちが強いからやらせてみよう」とどこかで繋がる機会があると思っています。また、わからない事や得意分野ではない事こそ、様々な方に質問するとか、ディスカッションをしておくのがすごく大事だと感じます。
徳永:これから大きくなる子どもたちが、新しいことや課題に挑戦する上でも自分がやりたいことをしっかり伝えることは重要ですね。
平野:「何を言っているんだろう?」と思われても良いとか、根拠のない自信みたいなものはKUMONの教育から得たものかもしれません。
最初はプリントが間違いだらけで返ってくると、家に帰れない、取り敢えず早く100点にしたいとばかり思っていましたが、どうして間違ったのかとか、間違いと正解との違いは何かとじっくり考えることが次のステップに繋がることをKUMONの先生が教えてくれたんです。
それは留学や大学時代、そして社会人になった今の行動力や、先ほどのいい意味でのちょっとした図々しさに繋がっていると実感しています。いまKUMONで学んでいる皆さんにも感じてもらえたらと思います。
徳永:KUMONのプリントを毎日学習するのはとても大変なことだと思うのですが、自力で解けたという達成感の積み重ねが今に繋がっているのでしょうか。
平野:そうですね。KUMONの英語だったら毎回文法や物語を自分で学んでいくので、何十回も何百回も積み重ねることで少しずつ考え抜く力ができていったと思います。しかも、先生は間違えてもいきなり答えを教えてくれないじゃないですか。その時に、私の間違いを一旦「確かにそうだね」って受け入れて、「どうしてこう考えたの? じゃあこうやって考えてみたらこうなるんじゃない?」と答えにたどり着くプロセスを一緒にたどり、付き添ってくれたことが良かったと思っています。
バラエティに富んだ環境が、チャレンジできる自分を後押ししてくれた
徳永:トビタテ留学JAPANのYouTube動画で、「成功の反対は失敗じゃない。何もしない事だ」って仰っていましたよね。私も似たような「ノープレイ、ノーエラー」という言葉を心に刻んでいます。何もしなければエラーはないけど、何も起こらない人生は嫌だなと思っているのですが、平野さんも公文式でその気持ちを培われたとしたら、とても嬉しく思います。ところで平野さんはお父様が京都のご出身で、外国人との接点も多かったとか。
平野:そうなんです。祖母が京都で酒屋を営んでいて、パっと入ってきた外国人と父が英語で話しているのが楽しそうで。英語が話せない祖母も身振り手振りでコミュニケーションを取って楽しそうでしたが、もっと喋れたらこのお酒が勧められたのに……とよく零していて、自分が伝えたいことを伝えるためにもグローバル言語である英語を学びたいと思いました。また、父はたびたび転職していたのですが、化学系とか食品とか業種もさまざまでしたし、出張などで海外に行けば、市場などローカルなところにも入っていく人で、その父について行ってみて、得意じゃなくても、失敗しても、人それぞれいろんな生き方・考え方があって良いんだって、隣りで見ていて学んだ気がします。
徳永:自分を投影できる存在がバラエティに富んでいたのですね。
平野:留学先のロシアでも、受講予定だった学部留学生コースが急遽中止になり、現地学生のクラスに入って全部ロシア語で勉強するように言われたんです。どうしようと焦っていたら、ちょうどドイツの大学と共同で特設された大学院生向けのグローバルコースを見つけたので、ここもまたいい意味での図々しさで「このクラスに入れてください!」とお願いしたんです。世界中から学生や社会人が集まっていて、年の近い人から、年配の方もいて、バックグラウンドもさまざま。自分が将来この人たちと何ができるだろうと考えるきっかけにもなったので、逆に幸運な経験となりました。
徳永:日本では考えられない環境ですが、誰も助けてくれないから自分で交渉するほかないですし、その経験が今の平野さんを作るパーツになっているのでしょうね。
私たち公文式学習は、失敗を恐れない自学自習での課題解決を目指していますので、SDGsの4.7「社会課題を解決する人の育成」を語る上でも、KUMONで学習した人が社会課題の解決に事業として取り組まれていることに感激しています。
KUMONでは、”English Immersion Activities”という英語漬けで学ぶ交流プログラムを実施していますが、今後は、英語だけでなく、社会課題にチャレンジできる人材をどう育成するかも模索していきたいと考えていますので、そこで平野さんの経験談をぜひお話しいただきたいですね。
平野:トビタテ留学JAPANでも、「修羅場を自分で作りなさい」と言われていて、自分自身で目標を立てて、ちょっと難しい挑戦をするとか、厳しい環境に飛び込むのは大事なことだと思っています。絶対苦しむけど、あえて大学院生のコースに入ったことも、KUMONであのお兄さんがやっている難しい教材をやってみたいと思ったことも、課題を与えられるだけでなく創造していくことも、今に繋がっていると感じます。修羅場を乗り越えることは大事ですね。
また教育の現場に対して、産業界やビジネスの見地から提案したり、逆に産業界も教育の現場から学ぶことが多々あるはずですから、これらが積み上がっていくような新しい教育の場ができるといいなと思っています。
「そういうものだから」と言われても好奇心や純粋さを大事に持っていてほしい
徳永:好奇心旺盛な平野さんから、子どもたちへのメッセージはありますか?
平野:子どもって「何で?何で?」って質問しますよね。だけど成長して、とくに学校や会社に入ると、「そういうものだから」で済まされることがすごく増えるじゃないですか。そういうものだからって親や大人に言われることで、世の中ってこういう決まりなんだって自分をあてはめて、レールを敷いていくことが正しいことだと思いこんでしまう子どもが意外と多いかもしれないと思うんです。私もそうだったので。
だけど、「そういうものだから」と言われても、「何で?」と納得いくまで自分で考えてみること、面白いと思ったら飛び込むことは絶対間違っていないので、物事に対する純粋な好奇心を大事に持っていてほしいと思います。
徳永:理由もわからず答えだけ出されても納得できないですよね。
平野:同時に、自分なりに解釈する主体性も持ってほしいと思います。アクティブに興味を持つとか、とりあえずやってみるだけじゃなくて、主体的に考えるとか次に活かす意識をすることが大事だと、トビタテ留学JAPANでもよく話していますね。
勉強も仕事も、あれもこれもと目標を設定せずにやっていると、「そもそもこれを何のためにやっていたんだろう?」と次につながり難かったり、失敗したときに学びの数が少なくなったりてしまう。見通しを立てることと、リフレクションする(振り返って見つめ直す)ことで、学びの多さと深さが全然違うと思うんです。知識をインプットしてそれで終わりだと引き出しの中に入れているだけかもしれませんが、目的を持って勉強して、考えるようにするとアイデアが生まれるので、私自身も主体的に動き続けていきたいです。
徳永:創始者の長男だった故・公文毅社長はかつて、教育は「釣った魚を与えるのではなく魚の釣り方を教える」ことが大切だと言っていました。かつては、答えを出せば簡単にわかる時代もあったと思うんですよね。今の時代だからこそフィットする言葉というか、多様性やその人なりのやり方を目指していくべきなのかなと考えています。
平野さんが今取り組まれている事業とKUMONの事業は遠い分野と思いがちですが、きっとどこかでつながっていると思うので、またご一緒できる機会が作れたら光栄です。
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